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住宅ローンの審査は、思いもよらない理由で通らないことがあります。各銀行の審査基準は、審査通過のための対策をとられることを防ぐため非公開とされていますが、審査に通りにくい人の特徴は共通しています。審査で不利になるのは、どのようなケースでしょうか?
住宅ローンを融資する銀行が最も懸念することは、貸したお金が戻ってこないことです。したがって審査では、「その人がちゃんとお金を返してくれるか?」を、さまざまな角度からチェックします。
住宅ローンを申し込む本人に対する審査のことを「人的審査」といい、主に、年齢、年収、勤務形態、勤続年数などから、住宅ローンを返済できる安定した収入があるかを見ていきます。収入面で問題ないとしても、マイカーローンやカードローンの支払いなど、定期的に出ていくお金が多いと、返済に支障をきたす恐れがあるので、その人の借入状況も確認します。借入状況は、現在だけでなく過去の返済履歴もさかのぼって調べます。延滞履歴や自己破産などの事故情報がないか、個人信用情報を調査して、その人が経済的に信用できる人なのかを判断します。
人的審査の要点について、もう少し具体的に説明していきます。
住宅ローンの審査を申し込む際、「個人情報利用に関する同意書」という書類に署名・捺印をします。これは銀行が審査に必要な範囲内で、個人情報を利用することに同意するものです。この書類を受け取った銀行は、クレジット会社や信販会社との契約内容や利用記録の情報が共有された個人信用情報機関に照会して、住宅ローン申込者が過去にどんなローンを利用していたか、延滞や債務整理の記録はないかなどの個人信用情報を確認します。
個人信用情報機関は次の3つがあり、それぞれがCRIN(クリン)という信用情報ネットワークによって情報共有されています。
そこで何か問題が見つかると、審査通過が厳しくなります。審査に影響を及ぼす個人信用情報として次のようなものが挙げられます。
自己破産や貸し倒れはもってのほかですが、無意識のうちにやってしまったことが返済遅滞にあたり、個人信用情報として記録されている場合もあります。ケースごとに見ていきましょう。
クレジットカードの支払日に、引落口座に十分なお金が入っていなかったために、引き落としが間に合わなかったという経験はありませんか? クレジットカードの支払いは1日でも遅れると遅滞扱いとなり、個人信用情報に記録が残ります。ポイントや特典を目当てにクレジット払いにしている人も多いですが、残高不足に気づかず支払いが遅れることがないように、引落口座の管理を怠らないようにしてください。
なお、個人信用情報機関の情報保存期間は基本5年間です。身に覚えがある人は、審査を受けるタイミングに気を付けましょう。
公共料金を滞納したからと言って、それが理由で審査に落とされることはありません。ただし、それは公共料金の支払いを銀行口座からの引き落とし、振込、コンビニ支払にしている場合であって、クレジットカード支払いの人は要注意です。クレジットカード支払いで滞納すると、内容を問わずクレジットカードの遅滞実績として記録が残ってしまいます。
クレジットカードには、ショッピング枠とは別にキャッシング枠といって、お金を借りる機能が付いています。申請すればキャッシング機能を外すことができますが、利用者から申し出がない限りは、自動的にキャッシング枠が設定されています。
キャッシング枠が付いていても、利用しなければ問題ないのでは?と思うかもしれませんが、複数のクレジットカードを持っていて、これらすべてにキャッシング枠が付いていると、いつでも簡単に借金ができる状況であると判断されやすく、審査で不利になるケースがあるようです。審査のリスクを減らすためにも、使わないクレジットカードは解約し、不要なキャッシング枠は外す(0円に設定する)ようにしましょう。
最近、増えているのが、携帯電話料金の遅滞や滞納が原因で、住宅ローンの審査に通らないケースです。通話料金やパケット通信料はローンではありませんが、月々の支払いに上乗せするかたちで分割払いしている端末代金は、ローンを組んで電話機を購入しているのと同じ扱いになるため、携帯電話料金を滞納すると遅滞情報が登録されてしまいます。
近年若者を中心に、携帯電話料金を滞納する人が増えていますが、少しくらい支払が遅れても大丈夫だろうと、軽く考えてはいけません。将来、住宅ローンが組めなくなる可能性があります。
過去に消費者金融からお金を借りたことがある場合、遅滞なく完済していれば問題ないケースがほとんどです。ただし、遅滞の事実があったり、借入額が大きい借金だった場合は、審査でマイナス評価になる可能性があります。
現在、消費者金融から借入中の場合は、審査通過は極めて難しくなります。消費者金融への返済があると、住宅ローン返済の妨げになると銀行は考えますし、そもそも消費者金融で借りていること自体、貯金がない証拠だと判断されてしまいます。借金があっても、安定した返済ができる収入があるなどプラス材料があれば、可能性はゼロではありませんが、できれば審査を受ける前に完済しておくほうが良いでしょう。
奨学金の返済中であっても、住宅ローンを組むことはできます。ただし、奨学金を貸し出している日本学生支援機構(旧育英会)も、個人信用情報機関に加盟しているため、過去に3ヶ月以上の返済遅延がある場合は、個人信用情報に記録が残り、審査での評価が厳しくなります。
税金の滞納や国民健康保険の未納は、個人信用情報に履歴が残らないため、銀行が独自で調べることはできませんが、審査申込時に提出する納税証明書などから確認することできます。税金の滞納は、心証が悪いだけと思ったら大間違いで、審査に与える影響「大」です。
税金や保険料を滞納し続けた場合、税務署や役所は、給料や資産(物件)を差し押さえて滞納処分を行います。税金の差し押さえは、ほかの債権者よりも優先されるため、借主が返済不能になったときに銀行が抵当権を実行しても、物件の売却代金から先に税金の支払いがなされてしまい、銀行は思うように資金回収ができません。個人信用情報のほうが、マイナスのイメージが強いですが、銀行が嫌がるのはむしろ税金の滞納です。心当たりのある人は、審査前に支払っておくべきです。
また、年金や雇用保険など、社会保障制度に関係する支払いの滞納は、個人信用情報には残らず、審査には響かないとこれまでは言われていましたが、マイナンバー制度の導入で、今後は影響が出る可能性が出てきました。現在、マイナンバーの民間利用は禁止されていますが、2018年以降は銀行の口座にもマイナンバーが適用されるため、銀行が社会保障にまつわる支払い状況を確認できるようになるかもしれません。
ひと昔前は、正社員でなければ住宅ローンを組むのは難しいと言われていましたが、時代と共に雇用形態や家族構成は多様化しており、銀行の判断基準も変化してきています。どんな人が審査で不利になるのか、個別に見ていきましょう。
派遣社員や契約社員は、正社員に比べていつ職を失うか分からず、継続的な収入という面でリスクありと判断されやすい傾向にあるのは事実です。ですが、今の職を失ってもすぐに職に就けることを示す資格やスキルを証明できれば、審査通過の可能性が高まります。両親の資産や配偶者の収入を提示したり、安定した収入がある親族に連帯保証人になってもらうなど、プラス材料があれば審査に通りやすくなります。
基本的に、転職予定の場合は審査を受け付けてもらえません。また、ほとんどの銀行が融資条件として、最低勤続年数を1~3年以上と定めており、転職直後に住宅ローンを組むのは難しいと思われます。転職歴が多いと収入が不安定とみなされて審査で不利になりやすいですが、キャリアアップによる転職であることが説明できれば、評価がアップします。
自営業者や会社経営者は、一般会社員よりも慎重に審査されます。特に、重点的に見られるのが、会社の借り入れ状況や業績です。直近で3期黒字経営が続いていれば審査で有利になりますが、1期でも赤字があると審査通過が厳しくなります。そのような場合、将来を見越した事業計画、取引先の企業の安定性、会社の実績を示す決算書などを積極的に提示して、一時的な業績低下であることをアピールする材料が必要です。
近年、独身者でもマイホームを持つ人が増えています。独身者に対する銀行の審査判断はまちまちで、既婚者に比べて収入に余裕があるとみなされる場合もあれば、独身者は住宅購入後にライフプランが変わる可能性が高く、投資目的の購入とみなされるなど、不利になる場合もあります。
以前は、独身女性は男性に比べて正社員の割合が少なく、昇進の可能性が低いうえ、出産や育児で働けない時期があることから、長期的な住宅ローンには向かないとされていましたが、最近は一般的な審査項目をクリアしていれば性別は問われない傾向にあります。男女30代の貯蓄状況調査では、女性のほうが平均貯蓄額は高く、お金の管理に誠実であるといった見方が強まっており、結婚しない女性が増えたこと、晩婚化が進んだ影響で、女性への住宅ローン融資を積極的に行う銀行も増えています。
共働き世帯が増え、夫婦共同名義で住宅ローンを借りる家庭も増えました。しかし、産休中・育休中の場合、無職として扱われることが多く、妻名義での住宅ローンの借り入れができないことがあります。復職後3ヶ月~半年過ぎてから受け付ける銀行が多いですが、復職証明書の提出をすることで、産休前の所得で審査してくれる銀行もあります。
通常の審査項目をクリアできれば、シングルマザーであることが審査で問題になることはありませんが、家計を助けあえるパートナーがいないことで収入が不安定であると判断されてしまうことはあります。安定した収入があることや、頭金を多く用意して貯蓄の意識が高いことをアピールするなど、信頼度を高めることが大切です。