都道府県民共済の「入院保障型」を徹底分析

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割安な掛金が魅力の都道府県民共済には「こども型」「総合保障型」「入院保障型」「熟年型」「熟年入院型」の5つの保障タイプがあります。全国には40の都道府県民共済があり、住まいもしくは勤務地がある地域の都道府県共済に加入することができますが、それぞれで保障が少しずつ違います。

ここでは、都民共済を例にして「入院保障型」「熟年入院型」の保障内容やメリット・デメリットを調べました。


《これだけは押さえる》保障内容の特徴

年齢・性別に関係なく掛金は一定

一般的な医療保険は、年齢・性別によってどのくらい病気になりやすいかを検討して保険料を決めているので、若い人ほど保険料が安く、高年齢になるほど保険料が高くなります。一方、共済の掛金には、年齢・性別による差がありません。ですから、20歳女性でも、60歳男性でも掛金は同じです。しかも都道府県民共済の「医療保障2型」は、入院日額1万円で毎月の掛け金は2,000円ですから、高年齢の世代にはかなり割安です。

保障プランは一つだけ

保障プランは一つで、入院・通院・手術・先進医療といった医療保障から、大きくはないものの死亡保障まで揃っています。ただ、いずれかの保障を外したり、重点的に厚くしたりすることはできません。

入院日額1万円は(これだけあれば)安心だという感覚ですが、最近の医療では入院日数が減少する傾向にあります。通院保障の対象となるのはケガの場合のみ、先進医療保障は150万円までなど、共済だけでは少し不安な面もあります。

たとえば、がんになり通院で抗がん剤治療をした場合は保障を受けられません。「新がん特約」などの特約を付けて補うこともできますが、特約も複数の保障がセットとなっていて、どれか一つだけを選んで付けられないのが残念です。

基本情報と主な保障内容

今回調べた保障内容は東京都民共済のものですが、地域によって保障内容が少しずつ異なります。あくまで概要ですので、詳細はパンフレットや公式サイトなどでお確かめください。

契約情報

契約可能年齢 0歳~68歳(85歳まで自動更新)
ただし、0歳~17歳は「こども共済」のみ加入可
保険期間 1年
保険料払込期間 1年
払込回数 年払
払込方法 口座振替

主契約

給付金 主な支払条件・保障内容
入院 ・病気で入院したとき1日目~124日目(1日当たり1万円)
・ケガで入院したとき1日目~184日目(1日当たり1万円)
通院 事故で入院・通院が14日以上となった場合、通院14日目~90日目(1日当たり1,500円)
手術 2.5万円・5万円・10万円
先進医療 1万円~150万円
死亡・重度障害 10万円

※共済金の金額は入院保障2型18歳~60歳の場合です。

特約

給付金 主な支払条件・保障内容
医療特約 ・入院一時金:2万円(1回の入院につき)
・手術:5万円・10万円・20万円
・先進医療:1万円~150万円
・入院を20日以上継続し退院したとき、在宅療養:4万円
・保障期間内に発病した疾病により所定の状態となったとき、疾病障害:100万円
新がん特約
(上皮内がんも対象)
・初めてまたはがん治療終了から5年経過後にがんの診断を受けた場合、がん診断:50万円
・がん通院:1日目から無制限(1日当たり5,000円)
・がん通院:1日目から60日目(1日当たり2,500円)
・がん手術:5万円・10万円・20万円
・がん先進医療:1万円~150万円
新三大疾病特約 ・がん診断:50万円
・入院(心筋梗塞、脳卒中):1日目から124日目(1日当たり5,000円)
・入院(がん):1日目から無制限(1日当たり5,000円)
・三大疾病手術:5万円、10万円、20万円
・三大疾病先進医療:1万円~150万円
介護特約 ・重度障害割増:年金払い、最高10回(1回につき50万円)
・長期入院:
 事故の場合185日目から364日目(1日当たり3,000円)
 病気の場合125日目から244日目(1日当たり3,000円)
・手術:2.5万円、5万円、10万円

(注1)「新がん特約」「新三大疾病特約」を、あわせて加入することはできません。
(注2)共済金の金額は「医療1型特約」「新がん1型特約」「新三大疾病1.2型特約」「介護0.5型特約」のそれぞれ18歳~60歳の場合です。

加入するなら

年齢別保障内容

共済では、掛金は性別・年齢に関係なく一定のまま、保障内容が変わっていきます。そこで、18歳から65歳は東京都民共済の「医療保障2型」+「新がん1型特約」、65歳以降は「熟年入院2型」+「熟年 新がん1型特約」に月3,000円で加入し続けたとき、年齢が上がるにつれて、保障がどのように変化するのか見ていきましょう。 (80歳以上は「熟年新がん1型特約」に加入できないので、「熟年入院2型」のみの加入(月2,000円)となります。

「入院保障2型」+「新がん1型特約」
 保障内容   18歳~60歳 60歳~65歳
入院 事故 1日目から184日目 1万円/日 7,500円/日
病気 1日目から124日目 1万円/日 7,500円/日
通院 事故 14日以上90日まで 1,500円/日 1,500円/日
手術 2.5万円・5万円・10万円 1万円・2万円・4万円
先進医療 1万円~150万円 1万円~75万円
死亡・重度障害 10万円 5万円
がん診断 50万円 25万円
入院 がん 1日目から無制限 5,000円/日 2,500円/日
通院 がん 1日目から60日目 2,500円/日 1,500円/日
がん手術 5万円・10万円・20万円 2.5万円・5万 円・10万円
がん先進医療 1万円~150万円 1万円~100万円
「熟年入院2型」+「熟年新がん1型特約」
保障内容    65歳~70歳 70歳~80歳 80歳~85歳
入院 事故 1日目から184日目 5,000円/日 3,500円/日 2,000円/日
病気 1日目から124日目 5,000円/日 3,500円/日 (1日目から44日目) 2,000円/日 (1日目から44日目)
通院 事故  
手術 1万円・2万円・4万円 1万円・2万円・4万円
先進医療 1万円~75万円 1万円~75万円
死亡・重度障害 5万円 5万円 5万円
がん診断 15万円 10万円  –
入院 がん 1日目から無制限 2,000円/日 1,500円/日  
通院 がん 1日目から60日目 1,000円/日 1,000円/日  
がん手術 2.5万円・5万円・10万円 2.5万円・5万円・10万円  
がん先進医療 1万円~100万円 1万円~50万円  

知っておきたい3つのポイント

1.60歳を過ぎると保障が下がる

「年齢別保障内容」の表の通り、「入院保障2型」は60歳を過ぎると保障が下がってしまいます。65歳になると「熟年入院2型」に移行し、さらに70歳、80歳と徐々に保障が下がり、80歳以降の保障内容は入院日額2,000円で日数も44日に減少、死亡共済金が5万円だけで、特約を付けることもできなくなります。

医療保障は若いときだけでよいと割り切るのなら良いのですが、高齢になってからもある程度の医療保障は必要と考えるなら、前もって他の医療保険と合わせた保障プランを考えておいた方が良いかもしれません。

2.割戻金で掛金がさらにおトクに

共済は、非営利事業ですから、決算で余剰金が出ると割戻金として加入者に還元されます。たとえば、30%の割戻金が返ってくれば、2,000円の掛金も実質1,400円の負担ということですから、さらに割安になるのがうれしいポイントです。

3.共済がない県もある

執筆時(2019年3月)現在、40の都道府県に都道府県民共済がありますが、福井県、鳥取県、徳島県、高知県、愛媛県、佐賀県、沖縄県の7県にはありません。残念ながら、都道府県民共済は、その県に住んでいるか、勤務地がないと加入することはできません。

もっとも、2019年1月に山梨県に県民共済が誕生したように、今は県民共済のない7県にも県民共済ができる可能性はあります。

この保険でよく頂く質問

当サイトによくお問い合わせいただく内容をまとめました。なお、パンフレットなどの資料にも記載のある内容ですので、もっと詳しく知りたい場合はそちらをご覧ください。

Q1.居住地と勤務地で違う都道府県の場合は両方で加入できる?

共済は、一人ひとつの都道府県民共済へ加入することになっているので、どちらか1つの県を選んで加入することになります。重複加入することはできません。転勤などで他県へ引っ越しをしたときも、原則として転入先の都道府県民共済に加入することになっています。

Q2.割戻金はどこの都道府県民共済でも同じ?

割戻金の額は都道府県ごとに異なります。年ごとに変化しますが、だいたい20%から40%程度です。ですから、もし住んでいる県と勤務地のある県が違う場合には、割戻金の割合が高い方を選ぶという考え方もあります。

全体を通して

共済の医療保障は、掛金が割安で、何歳からでも気軽に(?)加入できるのが最大のメリットです。ただ、デメリットも理解しておかなければなりません。特に60歳以降は保障が下がっていってしまうことは必ず押さえておきましょう。

最近、各保険会社が力を入れている健康相談やセカンドオピニオンなどの付帯サービスがほとんどないのも残念ですが、営利事業である民間との差は出て当たり前です。

2019年プロFPが認めたおすすめの医療保険はどれ?

医療保険人気ランキング
プロFP25人が本音で評価 『2019年のおすすめ医療保険人気ランキング』
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