「代車費用は出せません」に対する切り返しと落とし所

事故の衝撃で自走に支障が出たり、道路交通法上、違反になるような破損(ウインカーランプの故障など)を被った場合、修理が完了するまでの間は代車が必要になると思います。

相手の落ち度で車が使えないのだから、代車費用は保険から出て然るべきと思うかもしれませんが、保険会社はこの出費にかなり消極的で、「100:0でないと出せません」「業務で使っていることが条件です」などと言って認めてくれません。

自分の過失も認める場合、たとえば20:80の過失割合で、「20%は自腹を切るから残りは出して欲しい」と頼んでも、「互いに過失がある事故には出せません」などと拒絶されるケースが多いです。

法律的には、業務での利用でない場合はもちろん、自分に過失がある場合も代車費用の請求は可能ですが、保険会社は被害者が代車を必要とする理由に説得力がないかぎり応じてくれないものです。

目次

代車費用請求の交渉術

1.過失割合の常套句に動じない

まず、「100:0でないと出ない」という常套句ですが、実はそんな決まりはどの保険会社にもありません。したがってここに臆することはなく、20:80だろうが50:50だろうが、代車費用が必要ならきちんと請求するべきです。

ただし勘違いしてはいけないのは、請求できるのはあくまで過失分相当額のみということ。先程例に出した「20%は自腹を切るから~」というのはそういう意味です。

しかしこれ、自分の過失が大きければ請求できる費用も減るわけなので、わざわざ保険会社を相手取って立ちまわる労力に見合う金額かどうかは考えたほうがいいと思います。

2.良心に訴えかけ共感を誘う

保険会社が代車を必要とする理由を求めているなら、車がないことで被る苦労や不便さをきちんと説明しましょう。具体的には次のような理由です。

  • 毎日通勤に使っている
  • 幼稚園や保育園の送迎に使っている
  • 病院に通院しなければいけない
  • 上記の理由で代替の交通手段がない
  • 深夜勤務で代替の交通手段がない
  • しばらくなくても困らないものを数百万円も出して買うわけがない(笑)

これらを感情的に伝えてはいけません。反論されても落ち着きを保ち、相手の良心に訴えかけ共感を誘うのがポイントです。損保の事故担当者も鬼ではないので、被害者が本当に困っていると感じれば、代車費用を「適正査定」と認めてくれます。「しばらくなくても困らないものを~」の理由は少し屁理屈かもしれませんが(笑)、これも言い方一つで説得力を持つものです。

逆の手法で、勝手に代車を借り、レンタル費用が発生しているという既成事実を作る人もいるようですが、強引なやり方は相手を構えさせてしまうだけなので、慎重に動いたほうがいいでしょう。

そんなことをしなくても、最近は保険会社と提携している修理工場に持ち込むことですんなり代車費用が出るケースも増えています。もっとも、修理工場は技術差が激しいので、御用達の業者を使いたければ、そこはまた交渉になってきます。

3.あらかじめ妥協点を決めておく

交渉事には妥協も必要です。自分の要求を100%押し通そうとせず、相手の逃げ場を作ってやるのもポイントです。値引き交渉でも、最初はわざと大幅に値切っておいて、値引き幅を確保するやり方がありますよね。

代車のケースでいえば、ベンツに乗っていたからといって、同クラスのベンツを要求することが得策でないこともあります。保険会社のマニュアル基準(100-0の過失割合&業務で必要)を満たしているなら話は別ですが、そうでない場合は、やや下の価格帯の車に譲歩してみたり、いくらかの自己負担を承諾してみたりと、事故担当者が首を縦に振りやすい条件を与えてあげましょう。

話し合いがヒートアップしてくると、本来の目的を見失って相手をとことん追い込む人がいますが、目的は彼等の全面降伏ではなく、「できるだけ有利な条件で代車費用を出させること」です。事故担当者が、「(この条件を飲めば案件が早く片付く)」なんて思ってくれたらシメたものです。

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