損保の示談代行人は、交通事故のプロだけあってスピーディに問題を処理してくれますが、「玄人vs素人」という構図だけに、なかには知識量の差を見せつけて丸め込もうとしてくる者もいます。専門用語や数字を多用して煙に巻いたり、冷たい態度でこちらの主張に一切耳を貸さなかったりと、被害者にしてみれば腸が煮えくり返る思いがします。腹に据えかねて反論すると、
「納得できないなら裁判を起こしてください」
などと言い放つ始末。本当に納得できないなら争うべきだと思いますが、日々の生活もあるなかで、お金も時間もかかる裁判なんて誰もやりたくありません。相手はそれを理解したうえで発言しており、これは脅しであり駆け引きでもあります。
悪質な担当者をやっつける交渉術
1.お客様相談室にクレームをつける
こちらが無茶な要求をしていないにもかかわらず、終始こんな態度を崩さない担当者に当たったら、一旦、交渉するのを止めましょう。というのも、示談代行というのは、被害者が保険会社に「(加害者ではなく)あなたでいいですよ」と同意して初めて成立するものなのです。
したがって一旦は拒絶! ただ、そのまま放っておいてもいたずらに時間が過ぎるだけなので、「悪質な担当者の態度を改めさせる」または「交代させる」ことを目的に、社内の人間から注意してもらえるよう働きかけます。
手っ取り早いのは、保険会社が設けている『お客様相談室』や『お客様サポートセンター』など、顧客からの苦情や要望をヒアリングする部署に電話をかけ、恨みつらみをつらつらと並べ立てることです。あまり感情的にならず、「本当に困っているんです……」という語り口でいくほうが効果的。
「担当の◯◯さんが二言目には“裁判してくれ”と言ってきます……」
「◯◯さんから人間味のない態度ばかりされて非常に困っているんですが……」
「◯◯さんの言動は御社の社内教育にしたがってのことなのでしょうか……?」
担当者の変更や上司の折り返し電話など、具体的な要求を突きつけてもいいですが、例のようなクレームでも相談室はきちんとヒアリングし、担当者または担当部署の上司に報告してくれるのが普通です。いずれにしろ、なんらかの改善は見られるでしょう。
「しょせん同じ会社なので部署同士でもみ消されるのでは?」と思うかもしれませんが、企業コンプライアンスの意味でも他部署からの圧力は無視しにくいものです。
2.『そんぽADRセンター』に相談する
『そんぽADRセンター』という、日本損害保険協会が運営しているADR(裁判外紛争解决)機関に相談するのも一つの手です。顧客からの苦情や相談に中立・公正な立場で対応してくれる機関で、全国10地区(北海道・東北・東京・北陸・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄)に窓口があります。
ここに電話や書面、または直接面談(事前予約制)し、「こんな担当者がいて困っている」と申し立ててみましょう。今回のような、損保の一社員とのトラブルも傾聴してくれるだけでなく、相手方にその内容を通知したうえ、今後の対応を要請してくれます。もちろん代理人としてあれこれ交渉してくれるわけではありませんが、れっきとした業界団体からの取り次ぎということで、保険会社もいい加減な対応はできないことになっています。
ただし当然ですが、常識的に無理がある要求やクレームを一方的にがなり立てていると判断された場合、相談を受け付けてくれないこともあります。
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