運転技術が保険料を左右する!安全運転の味方「テレマティクス保険」とは

欧米を中心に普及が進んでいる「テレマティクス保険」が、日本でも急展開を見せています。

テレマティクスとは、(Telecommunication=通信)とインフォマティクス(Informatics=情報工学)を組み合わせた造語で、自動車などの移動体にブラックボックスやドライブレコーダー、カーナビ、スマートフォンといった通信システムを搭載し、運転者情報を取得・分析するというものです。

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安全運転を評価する「運転行動連動型(PHYD)」が本格導入

テレマティクス保険には、「走行距離連動型(PAYD)」と「運転行動連動型(PHYD)」の2タイプがあり、走った分を保険料に反映させる走行距離型(PAYD=Pay As You Drive)は、既に多くの自動車保険に取り入れられています。たとえば、あいおいニッセイ同和損保の「つながる自動車保険」はこのタイプ。トヨタ製のカーナビ「T-Connect」と連動し、1km単位で保険料を算出できます。

注目されているのは、後者の運転行動連動型(PHYD=Pay How You Drive)のほうで、これは、運転者の加速度や急ブレーキ、ハンドル操作など「危険運転度」を保険料の根拠にするというもの。要するに、安全運転をする人は安くなり、乱暴な運転をする人は高くなる保険です。このことから、無駄な運転操作が多い初心者や運転下手な人は割高になる傾向があります。

いち早く商品化したソニー損保の「やさしい運転キャッシュバック型」は、ドライブカウンタと呼ばれる小型計測器で運転特性を点数化し、その得点に応じて保険料をキャッシュバックする仕組みです。

テレマティクス保険のメリット・デメリットは?

保険料を算出するリスク区分に「運転技術」が加わることで、より個々のニーズにマッチした自動車保険の登場が期待できますが、日本ではまだまだトライアル期間。なにごとも「いいことずくめ」にいくとは思えず、国土交通省と保険会社は次のメリット・デメリットを共有しています。

《メリット》安全運転が増え交通事故が減る

保険料の多寡に運転特性が大きく関わるとなれば、当然、安全運転を心がけるもの。「事故を起こしたくない」のはもちろんですが、より目先の利益として「保険料を上げたくない」という一心で自身の運転技術を改めるドライバーが増えるでしょう。結果、事故率は軽減が期待できます。

《メリット》若者や等級が低いドライバーでも保険料を抑えられる

10~20代の若者や、等級が低いままのドライバーなど、保険料が割増な人でも、安全運転を守ることで相応の節約が可能になります。車全体の保有コストの低減につながるわけですから、家計には嬉しい結果です。

《デメリット》運転下手なドライバーが取り残される

努力しているのに運転が上手くならない人、高齢で運転技術が落ちている人、運転行動をチェックされていることでストレスが溜まる人など、テレマティクス保険の導入で、損をする人と得をする人が二極化する恐れがあります。

損をする層の人は、仕方なく従来型の自動車保険に戻るでしょうが、安全運転ができるドライバーがテレマティクス保険に残り、そうでないドライバーが従来型の保険に戻るとすれば、両保険加入者の事故率に偏りが出ることは想像に難くありません。結果、従来型の自動車保険料はいびつに上昇するでしょう。

《デメリット》「任意保険いらない」と開き直られる

テレマティクス保険の加入者に比べて危険運転をする層が従来型の保険に集中し、結果、保険料が許容範囲を超えて値上がりした場合、開き直って任意保険に加入しないドライバーが出てくる恐れがあります。両者の保険料格差が開き過ぎないよう、保険料に一定の上限を設けるなど対策が必要です。

《デメリット》個人情報の取り扱いが難しい

運転行動の通信は、ドライブテクニックだけでなく、位置情報なども含まれます。運転は契約者に限らず、その家族がすることもあることから、そうしたケースでの個人情報の取り扱いについて、現行の保護制度とどう整合性を図るかが問題視されています。

テレマティクス保険を評価するのはこれから

トライアル期間だけに解决すべき問題は残されていますが、今後、保険会社がテレマティクス保険を拡充していくことはほぼ間違いなく、その動向を注目したいところです。

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