幅広くてわかりにくい自動車保険の特約を噛み砕いて解説

自動車保険は、事故によって負った賠償責任(ヒト・モノ)の補償を主とするものです。ここに、他の保険と同様、特約としてさまざまなオプションの補償をつけることができます。

特約には、主契約にはない補償内容を付け加えるという以外に、主契約の補償内容を変更するという形のものもあります。より補償を厚くしたり、逆に、補償を簡単にして保険料を抑えたりということもできます。

非常に多種多様な特約が存在しますので、ここではそれらを一覧で解説しました。ただし、保険会社によっては扱っていないものもありますし、名称も異なる点、ご理解ください。

目次

オプションで補償やサービスを追加する特約

弁護士費用等担保特約

自動車事故の結果、相手方と裁判や調停になった場合、あるいは示談交渉を行う場合に、弁護士に依頼する費用を補償してもらえる特約です。

保険会社によっては、特約に関係なく弁護士の紹介や一般的な法律相談サービスを受けられる場合はありますが、直接、依頼するときの弁護士費用は特約がないと補償されません。

また、事故の責任がすべて相手方にある場合、こちらの保険を使用しないため、そうしたサポートを受けられません。そんなときも、この特約があれば、弁護士費用が補償されるため、弁護士に示談交渉などを依頼しやすくなります。

弁護士費用特約は付帯すべき? 必要性と使い方で詳しく解説しています。

ペット搭乗中担保特約

記名被保険者、またはその家族の所有するペットが乗っているときに事故に遭い、ペットが死傷してしまったとき、その治療費や葬祭費などが補償されます。 法律上、ペットは物として扱われますから、通常の保険の範囲では何の補償もありません。別にペット保険に入っていればいいのですが、そうでない場合も、この特約があれば補償が受けられます。

ただし、搭乗者にケガなどがなく、ペットだけが傷害を被った場合は補償の対象外になります。搭乗者傷害保険と、この特約のみから保険金が支払われた場合(乗っている人とペットがケガをしただけの場合)はノンフリート等級には影響しません。

身の回り品担保特約、車内手荷物等損害特約

ゴルフバッグやデジタルカメラなど、車に積んでいた品物が、事故により破損したとき、その費用が補償されるという特約です。

破損のほか、車上荒らしによる盗難なども対象になります。車両保険に対する特約ですので、車両保険が適用される場合にだけ補償されます。

補償額は修理費用の実費か、盗難等の全損の場合は品物の価格から使用年数による減価を差し引いたものになります。身の回りの品物が対象ですので、現金や有価証券、貴金属などは、車に積んであったものでも補償されません。

個人賠償責任特約

日常生活上で起きた偶然の事故などにより、本人とその家族が、他人に対して法律上の賠償責任を負ってしまったとき、賠償金を補償してもらえる特約です。

自動車事故以外のものも対象になり、本来は別の保険と言ってもいいのですが、現在、単独で個人賠償責任保険は販売されていないので、自動車保険に特約としてセットする人が多いです。

火災保険にもセットすることができ、すでに火災保険にこの特約をつけている場合は不要です。自動車保険は自動車を手放すとなくなってしまうので、解約の可能性が低い火災保険につけておいたほうがいいかもしれません。

ファミリーバイク特約

本人とその家族が所有するバイクで事故を起こしたとき、補償される特約です。対人賠償も含めて補償される場合と、自損事故だけの場合があります。

別にバイク用の保険に入ってもいいのですが、自動車保険の特約としてセットすることでまとめて手続きなどが簡単ですし、別に入るよりトータルで保険料が安くなるメリットがあります。

親が記名保険者のとき、別居している未婚の子も補償できるので、実家を離れて住んでいる子どものバイク保険として利用することができます。なお、バイクは125cc以下のミニバイク、または原付に限られます。

対物臨時費用担保特約

対物臨時費用担保特約は、対物事故の際に、臨時的に発生した費用を一定の限度内で補償してくれる特約です。

損害賠償自体は、対物賠償保険がありますが、こちらは「被害者へのお見舞い代(菓子折りなど)」や、「被害者宅に謝罪に行く際の交通費」などを補償することを想定しています。さほど多額のものでありませんから、1~2万円程度を上限としていることが多いようです。

レンタカー費用特約

代車費用担保特約などと呼ばれることもあります。車両保険につける特約です。その名のとおりレンタカーの費用を補償してくれる特約で、事故や盗難で自分の車が使えなったが、車が必要なためレンタカーを利用しなくてはならなくなった、という場合に役立ちます。

通勤などに車を使用している人向けで、レジャーでしか車を使わない人には特に必要ないでしょう。

ファミリー傷害特約

ファミリー傷害特約は、自分とその家族が、自動車事故以外の理由でケガをしたとき、補償されるという特約です。補償の範囲を夫婦に限定するもの、自宅外でのケガのみに限るものなどがあります。

補償内容は通院1日につき1,000円、入院1日につき5,000円などという形で決まっています。人身傷害保険の対象となるような、車に関係するケガは補償されません。

事故付随費用担保特約

事故付随費用担保特約は、事故の際に、事故によって車が使えなくなったことによって発生してしまった費用を補償してくれる特約です。

具体的には、遠方で事故があり、帰宅に別の交通機関を使用した際の交通費や、帰宅できなくなってやむをえず宿泊した場合の宿泊費、旅行が中止になったことで発生したキャンセル料といったものです。最近、こういった補償は付帯するロードサービスの一部とされていることが多く、特約として用意する保険会社は減っています。

他車運転危険担保特約(他車運転特約)

他人の車を借りて運転し、事故があった場合、自分の自動車保険を使って(借りた車の自動車保険を使わずに)補償されるというものです。

これは特約ですが、基本的にすべての自動車保険に自動で付帯されています。

補償内容を拡張する特約

オールリスク免責ゼロ特約

車両保険を拡張する特約です。

車両保険には、通常、免責額があり、被った被害金額が一定以下であれば補償されません。大した損害じゃなければ自費で修理しても負担にならないでしょうから、小さな事故では保険を使わなくても済むようになっているのですが、この特約をつけることで、免責額はなくなります。

事故のとき、少しでも損害があれば、まったく自己負担なく修理することができるようになります。適応される回数に限りがある場合があります(1回目の事故は免責額なく補償されますが、2回目以降は免責があるなど)。

車対車免責ゼロ特約

車対車免責ゼロ特約は、「オールリスク免責ゼロ特約」と同様、車両保険の免責額をなくす特約ですが、それを「車対車の事故」に限って適用します。

趣旨としてはオールリスク免責ゼロ特約と同じですが、オールリスク免責ゼロ特約は自損事故も対象になります。自己負担はしたくないけど、自分の不注意でちょっと車を傷つけた場合は自費でもいいというようなときは、車対車の事故に限るこちらの特約のほうが適切です。

形成手術費用担保特約

人身傷害補償保険または搭乗者傷害保険の対象となる事故などで、形成手術を受けた場合、その費用を補償してもらえる特約です。

形成手術とは、事故によるケガで傷跡が残ってしまった場合など、形成外科で受けられる傷跡を消す手術などのことです。人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険で補償されるのはあくまで治療費ですから、ケガが治ればよく、その後で傷跡が残ってしまったとしても、これを処置する手術などは補償には含まれません。そんなとき、この特約がついていれば補償があります。限度額や対象となる形成手術については細かく規定があります。

対歩行者等事故傷害補償保険特約

これは人身傷害補償保険から支払われる対人賠償の額を上乗せする特約です。被害者である相手が歩行中・自転車運転中・車対車の事故で相手の車に同乗中であった場合で、賠償額が対人賠償保険の補償額を上回ってしまった場合、この特約によって、人身傷害補償保険の保険金額を上限に補償されます。これは相手に過失割合にかかわらず補償されます。

相手に過失があって、対人賠償保険が減額されると、示談交渉などがうまくいかない場合があります。そんなとき、相手の過失は関係なく補償できることで、解決をスムーズすることが目的です。

臨時運転者特約

通常の運転者範囲に入らない、友人・知人など、本来、自動車保険の補償対象にならない人が運転した場合でも、補償されるというという特約です。

年齢条件なども関係なく補償されます。誰かに車を貸して事故があった場合、貸した相手が自動車保険やドライバー保険に入っていればいいですが、そうではなかった場合、補償がなくなるのを防ぐためのものです。

新車特約

新車買替特約、車両新価保険特約などと呼ばれることもあります。車両保険につける特約で、損害を受けた車が新車(保険会社により規定がありますが、おおむね購入後初回の車検まで)であって、損害が全損もしくは新車価格の50%以上であった場合、新車価格全額が補償されるというものです。

簡単に言えば、新車がひどい損害を受けたときは、修理費用の実費ではなく新しく同じ車を買い直せる額の保険金が受け取れるということです。

車両全損特約、車両超過修理費用特約

車両保険の特約で、車が全損になったか、損害額が一定以上に大きい場合、全額または一定の超過分が補償されます。

新車特約の新車でないバージョンと考えるとわかりやすいかもしれません。要は、非常に損害額が大きかったとき、修理費用を通常の車両保険以上に補償してくれる特約ということです。

等級プロテクト特約

最近はあまり見られない特約です。等級が下がるような事故があって自動車保険を使った場合でも、1年に1回までなら、等級を下げずに済むというものです。ただ、この特約をつけることで保険料自体は上がっていますので、等級が下がったことによる値上がりとどちらが損なのか、検討する必要があります。

自動車保険の基本的なしくみである等級制度に、ある意味反するものですので、扱われなくなる傾向にあるようです。

補償内容を限定して保険料を下げる特約

医療保険金特約

主契約に搭乗者傷害保険をつけているとき、補償される入院日額を下げるという特約です。そのぶん保険料を抑えることができます。搭乗者傷害保険は運転者と同乗者がともに補償されますが、自分しか運転せず、人を乗せることもほとんどない、という場合、搭乗者傷害保険がムダに感じられることもあります。

補償範囲を変えることはできないので、せめて補償額を下げることで保険料を抑えることができます。別に医療保険に入っていて、入院費用はなんとかなりそう、という場合も選択肢に入ってくるでしょう。

家族内記名運転者限定特約

運転者範囲を本人以外の家族にも広げた場合で、家族を特定の誰かに限定することのできる特約です。運転者範囲が「記名被保険者または記名被保険者の配偶者と同居の親族」となっていたとしても、あらかじめ指定したその中の特定誰かだけを補償対象とし、それ以外の人は運転者範囲の条件にあてはまったとしても補償対象としないことができます。

もちろんそれによって保険料は抑えられます。配偶者などであれば通常の運転者範囲で指定できますが、「自分の配偶者は車に乗らないが、同居している自分の兄弟が乗る」という場合、「配偶者を含まず、同居の親族は補償する」ということは普通はできません。そんな場合、この特約で個別の事情に対応しつつ、保険料を最適化できます。

子供運転危険追加担保特約

単に子供特約とも呼ばれる特約で、通常の運転者範囲の条件とは別に、記名被保険者の子供を補償の対象にするというものです。運転者範囲の年齢条件は、運転する人の中でいちばん若い年齢に合わせる必要があります。

このとき、子供が運転するから運転者範囲には含めるけれど、あまり運転頻度は高くない、また、その年齢条件で子供の他に運転する人がいないなどという場合、年齢条件を下げることで保険料が割高になるのがもったいないということもあります。そんなとき、この特約で、年齢条件自体は高くしておき、かつ、子供だけは補償の範囲に含めることができて合理的に保険料を抑えられます。

人身傷害保険の搭乗中のみ補償特約

主契約の人身傷害保険は、契約している車に乗っているとき以外も、補償されます。他の車に乗っているときはもちろん歩行中の事故なども補償されます。補償範囲が広いのはいいのですが、そこまで範囲を広げる必要がないかも?と考える人もいるでしょう。

人身傷害保険の搭乗中のみ補償特約はその名のとおり、人身傷害保険を「被保険自動車に搭乗中のみ」に限定する特約です。補償範囲を狭めて保険料を抑えることができます。特に、複数の車をもっている人は、1つをのぞいて、あとの車にこの特約をつけるといいでしょう。保険料は抑えられますし、どれか1つに人身傷害保険があれば、他のどの車に乗っていても補償されるので問題がありません。

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