きちんと施錠したはずなのに、車がない!! 朝起きたら-用事を済ませて戻ってきたら-どんなシチュエーションでも、大切な車がこつ然と姿を消していたら、大変驚くでしょう。
車の盗難は車両保険で補償されますが、いざ当事者になってみると、本当に保険が出るのか心配になるものです。そこで、車両盗難や車両ねらいで保険が出るケースと出ないケースについて解説します。
そもそも車の盗難ってどのくらいある?
警察庁の統計によれば、平成 28(2016)年に警察に届けられた車の盗難事件は、 1万 1,655件です。ピーク時の平成 15(2015)年( 6万 4,223件)と比べればかなり減ってきていますが、それでも全国どこかで毎日 300台以上の車が盗難に遭っている計算です。
検挙率は49.0%と、約半分は犯人が捕まっていることになりますが、なかには発見されたときに解体されていることもあるそうですから、しっかり保険で備えておきたいものです。
ちなみに、出典元の『 自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム』によれば、都道府県別にみる盗難件数ワースト3は、茨城県、大阪府、千葉県。盗難に遭いやすい車種ワースト3は、ハイエース(トヨタ)、プリウス( トヨタ)、ランドクルーザー( トヨタ)となっています。
2015年(件数・台数) | 2016年 (件数・台数) | |
都道府県 | 愛知件(2,205) | 茨城件(1,590) |
茨城件(2,107) | 大坂府(1,577) | |
大阪府(1,747) | 千葉件(1,538) | |
車種 | ハイエース(1,244) | ハイエース(1,391) |
プリウス(1,271) | プリウス(1,058) | |
ランドクルーザー(518) | ランドクルーザー(510) |
損害保険協会が発表している『2016年度 自動車盗難事故実態調査 結果報告』では、支払件数(車両本体盗難)のトップに大阪府、次いで愛知県、千葉県、そして茨城県と続いており、両資料を合わせて読んでも、これらの府県は盗難多発地域と呼べそう。盗難に遭いやすい車種は同じ結果でした。
車の盗難は車両保険「一般」「エコノミー+A」で対応できる
冒頭でも述べたとおり、車が盗難に遭っても、車両保険に入っていれば保険は出ます。
ただし、車両保険には「一般」「エコノミー+A」「エコノミー」の3つのタイプがあり、このうち、盗難を補償してくれるのは一般とエコノミー+Aの2つで、エコノミーだと補償対象になりません。そういうわけで、車両保険に入っている人も、入っているだけで安心せず、自分がどのタイプの車両保険を付けたのかを確認しておきましょう。
知っておきたいのは、「盗難で保険金を受け取るまでには時間がかかる」ということ。おおよそ 1 か月以上かかるケースが多く、これにはいくつか理由がありますが、一つは、車の盗難を装って保険金を受け取ろうとする偽装事故があるため。保険会社は盗難に対して慎重な操作を行わざるを得ないのです。
これを踏まえて、車を通勤に使っている場合などは「代車費用特約」を付けておいたほうが安心かもしれません。
車が盗まれたのに車両保険が出ないケースも?
車両保険に入っていても保険が出ないケースがあります。といっても、ややこしいケースではありません。基本的に保険が出るのは偶然の事故で被害者に過失がない場合です。
たとえば、「キーを付けたまま自宅から離れた駐車場に駐車していた」「高速のサービスエリアでエンジンをかけっぱなしにしたままトイレに行ってしまった」といったシチュエーションで車が盗まれた場合、本人に過失がないとは主張しにくいです。また、スペアキーを車内に保管している場合も要注意。それを使って運転される可能性もあるわけで、「=本人の過失」とみなされかねません。自宅に置いておく、肌身離さず持っておくなど、スペアキーの保管には注意しましょう。
車上ねらいでも保険は出る?
車本体は盗まれていなくても、鍵穴や窓ガラスが壊され、付属品や置いてあった日用品が盗まれるというような、いわゆる「車上ねらい・車上荒らし」の場合でも車両保険は出ます。壊された車体の修理費用や付属品が補償対象となります。
ただし、カーナビやタイヤなどのように、ボルトやネジでしっかり固定されている、簡単には取り外せない付属品に限られています。人形、ゴルフバッグ、うっかり車内に置き忘れたデジタルカメラなど、車から簡単に持ち運びのできる物は補償してくれません。
「身の回り品担保特約」が車両保険に付帯していれば、それらも補償対象になる……と思いきや、実は保険会社によってスタンスが異なります。たとえば、セゾン自動車火災は、
Q:いわゆる車上荒らしは、「車両身の回り品補償」の補償の対象ですか?
A:いいえ、いわゆる「車上荒らし」など身の回り品だけの盗難被害は、「車両身の回り品補償」の補償対象となりません。
としている一方で、ソニー損保は
■ こんな場合に補償
- 事故時に車の中に置いてあったビデオカメラが壊れてしまった。
- 車上荒らしにあい、車内に置いてあった携帯音楽プレーヤーが盗まれた。
としています。
HPだけでは分かりにくいところもあるので、詳細は保険会社に問い合わせてみましょう。
車両保険を使うと翌年の等級に影響が出る?
残念ながら、盗難に遭って車両保険を使うと、翌年の等級は下がってしまいます。ただ、本人に過失はないことが考慮され、 1等級だけのダウンとなります。
車が盗まれた場合の基本的な行動手順
車が盗まれたら、きっと動転してしまうでしょうが、まずは落ち着いて、本当に車がなくなったのかどうかを確認してください。早とちりというのは案外少なくないもので、家族が乗って行ってしまったとか、停めた場所を勘違いしていたとか、いろいろあるものです。
冷静になって確認し、それでもやはりないということになれば、盗難事件として警察に連絡、被害届を出してください。保険会社に連絡するのはそれからです。最近は 24時間対応の事故受付ダイヤルを用意している保険会社がほとんどなので、そちらに連絡してやるべきことをアドバイスしてもらうと良いでしょう。
要点のまとめ
- 車の盗難は車両保険で補償される
- 車の盗難に遭っても、所有者に過失があると保険会社が認めた場合には保険が出る
- 車上ねらいの場合も、車の修理費用や車に固定された付属品には保険が出る
- 車に置いていた日用品などは「身の回り品担保特約」を付帯すれば保険が出る