自賠責保険では、治療費のほかに通院や入退院時の交通費も賠償として請求することができます。
では、どのような交通手段が請求できるのか、交通費の算定方法も含めて解説します。
電車やバスなど公共の交通機関を利用した場合
電車やバスなどの公共交通機関を使った場合は、かかった区間分の費用全額を請求することができます。領収書の類は不要。使用した公共交通機関の経路と料金を申告すればOKです。
日付や金額が分からなくなってしまうのはよろしくないので、通院した日付・時刻・運賃などを記録しておくか、IC乗車券の利用明細を発行して保管しておくことをオススメします。
ただし、グリーン車などの特別料金は認められないほか、特急代についても、自宅から遠く、専門性の高い病院に通院しなければならないなどの正当性が認められる場合を除いて、原則認められません。特急や新幹線を利用して通院する必要がある場合は、事前に保険会社に相談しておきましょう。
病院が定期区間内の場合は認められない
会社までの通勤定期券を所有していて、その通勤定期区間内の病院へ通院するための交通費は請求の対象にはなりません。通勤定期の区間内から外れた病院に通院する場合のみ、定期券で行ける場所から病院までの交通費が請求可能になります。
また、通学などで定期を所有している場合も、定期の利用区間の病院へ立ち寄れるのであれば、交通費の請求は認められません。
自家用車による通院の場合
自家用車による通院も、かかった交通費として請求することができます。自宅から病院までの距離1kmごとに15円程度と保険会社により決められています。カーナビや、地図アプリなどの情報で、必要な走行距離を証明できるようにしておきましょう。
原則、ガソリン代については車種や燃費に関係なく、一律15円/kmで算出されます。たとえば片道10kmの距離であれば、往復で300円が自家用車による通院交通費となります。
また、病院の駐車場代や高速道路(有料道路)を利用した場合は、領収書を一緒に提出すれば実費として請求することができます。
タクシーの利用は特別な事情がある場合のみOK
自賠責保険の交通費として、原則タクシーは認められません。公共の交通機関で通院することが可能な場合は、特別な事情がない限りタクシー以外の方法(公共交通機関や自家用車など)を利用しなければなりません。
しかし、ケガで歩くことが困難な場合や、歩けたとしてもバスや電車の乗降が大変な場合、または通院先の病院がバスでは行きにくい場所にある場合など、特別な事情が認められた場合のみタクシー代を請求することができます。
必要性が認められるかどうかは保険会社の判断になりますので、事前に保険会社にタクシーの利用可否を確認してくといいでしょう。もちろん、タクシーを利用した場合は必ず領収書の提出が必要になりますのでしっかりと保管をしておきましょう。
遠方の病院は担当医が指示した場合のみ交通費が支給される
自宅から遠く離れた病院へ通院する場合は、病院の担当医や事故直後緊急搬送された病院の担当医から指示(原則紹介状が必要)された場合のみ、交通費が認められます。
知り合いの医者がいるなど個人的な判断で遠方の病院に通院しても正当性が認められません。
治療費やその他賠償金については、病院の場所に関係なく請求することができます。
付添人の交通費も請求できる?
付添人の交通費については、12歳以下の児童であれば保険会社の承諾なしで交通費を請求することができます。ただし、2人で付き添ったとして、2人分の交通費が認められるとは限りません。たとえば自家用車で通院した場合、通常の1kmあたり15円と駐車場代、高速道路代などを受け取れるだけで、交通費が2倍になるわけではありません。
公共交通機関を利用したのであれば、付添人の交通費も実費請求できますが、12歳以下の児童以外に付きそう場合、そもそも付添人が2人も必要なのかについて問われる可能性があります。保険会社によって判断が分かれるところですので、事前に問い合わせてみてください。
なお、親近者の付き添いが認められれば、交通費のほかに「付添看護費」も請求できます(12歳以下の児童に限ります)。
交通費の申請方法
交通費の申請は、自賠責保険専用の「通院交通費明細書」に、通勤手段やかかった費用の明細を記入し、必要に応じて領収書(主にタクシー代、駐車場代、高速道路代)を添付して提出します。通院ルートや料金、日時などを記録しておくと通院交通費明細書の記入がスムーズになるでしょう。
任意の自動車保険に加入している場合は、担当スタッフが通院交通費明細書の記入を代行してくれることもありますが、基本的には被害者もしくはその親族が自分で作成しなければいけません。
全体を通して
自賠責保険の交通費は、原則認められない場合でも、事情によっては申請が通るケースもあります。どんな些細なことでも事前に保険会社に確認すると良いでしょう。