交通事故で最も問題になりやすいのが「過失(責任)割合」の認定です。「90:10」や「70:30」というやつですね。
互いに動いている限り、いくらかの落ち度は発生するとはいえ、やっぱり自分は悪くないと思っている事故に、「40:60」なんて算定をされると頭にくるものです。過失割合はそのまま損害額の負担率を意味しますから、安易に妥協してはいけません。
過失割合の算出は過去の判例に基づいて決められるもので、保険会社は一般的に『別冊判例タイムズ』という雑誌を参考にしています。「車同士」「対二輪車」「対歩行者」「駐車場内」など、さまざまな事故パターンに応じた基本過失割合が類型化されていて、そこに個別の修正要素(「合図なし」「スピード出しすぎ」など)を引いたり足したりし、過失割合を算定します。
ここで大切なのは、判例タイムズはあくまで「参考」「引用」するものであり、尊重こそすれ、反論の余地は十分あるということ。事故担当者の見解が甘い場合もあれば、今回の事故と判例タイムズの事例が一致していない場合もあるのです。
過失割合の交渉術
どの事例を根拠にしているか書面で説明を求める
判例タイムズに事例があるからといって、あたかもそれが絶対であるかのように語る担当者には、その根拠をハッキリ示すよう伝えましょう。具体例を挙げてきたら、
「該当する判例タイムズのコピーを送ってください」
と伝えます。保険会社が判例タイムズ等を基準にしているのは事実ですから、これを断わる理由はないはずです。もし、保険会社が被害者の無知につけ込んでいい加減に算定しているとすれば、「根拠を示して」「自分で算定する」という態度は牽制として効果があります。
コピーが送られてきたら、そこに記載されている修正要素を見て、自分なりに検証しましょう。知識のない状態で読んでもわかりにくいものではありますが、ここは粘り強く調べるしかありません。余力があれば、判例タイムズとは別に、日弁連交通事故相談センターの『交通事故損害額算定基準』に目を通すのもいいでしょう。個人でも購入できますが、自分の事故態様だけを調べる程度なら図書館を利用するほうがいいと思います。
どうしてもよくわからない場合は、『そんぽADRセンター』や『日弁連交通事故相談センター』などの交通事故相談所を利用しましょう。第三者の見解を聞けば自ずと妥当な相場が見えてくると思います。そうして自分なりに検証したうえ、保険会社に
- どんな修正要素を適用したのか?
- こちらは素人なのでわかりやすく説明して欲しい
- 実際に事故現場を見て判断してのことなのか?
- 加害者の供述内容に偏っていないか?
などを質問します。「説明しろ!」と激昂するのではなく、あくまで冷静に、相手が誠意を持って対応しているかを観察してください。そこまで確認したうえで、納得できなければ自分の見解を主張します。
過失割合交渉は骨が折れる作業
上記のような質問を投げかけ、自分なりの答えを主張したにもかかわらず譲歩が見られない場合は、それ以上の進展は難しいと考えるべきです。むしろ一旦冷静になって、自分の主張に無理がないか振り返ってみましょう(笑)。たまに、ゴネても仕方のないことを延々とゴネる人もいらっしゃるので……。
それでも納得できない場合は、そもそも判例タイムズ等の事例では解决できないとして、事故発生状況と当時の運転動向がどうであったかを徹底的にやり合うことになります。最終的には裁判の道をたどりますが、その前に『交通事故紛争処理センター』など外部機関に相談するのもいいでしょう。