このページでは海外に在住しているブロガーの方から、現地の医療情報と日本人が渡航する際に知っておきたい情報などを寄稿していただきました。トラブル時に役立つ連絡先や薬局で買える薬など、在住者ならではの情報が満載です。
話を聞いた人
フランス在住ブロガー
キョウコ・アーネシュー さん
マダムのフランス暮らし ~ La Vie en Rose ~ オフィシャルブログ
プロフィール:パリ在住ライター。フランス人との結婚を機に渡仏。ブログではパリのお役立ち情報をはじめ、 日々の暮らしや旅行、美容、健康、国際結婚について綴っています。
フランスの医療体制や医療費について聞いてみました
日本の医療体制と比べて、フランスの医療体制はどうかを教えてください
フランスでは一般的に医療分業制となっています。体調に異常を感じたら、緊急時を除き、まずはかかりつけの主治医のところへ行くことが求められ、そこで必要に応じて、処方箋や専門病院、専門医の紹介を受けます。レントゲンや血液検査など治療に必要な検査についてもそれぞれ異なる検査機関に出向き、行われます。
1ヶ所の医療機関で、診察、検査、治療、入院が可能な日本の医療体制に慣れている私たちには不便に感じますが、主治医を通さないと医療費の自己負担率が高くなります。 ――日本人がそちらで体調不良を感じたら、まずどうすれば良いでしょうか?
旅行者の方でしたら、外国人の対応や旅行保険の扱いに慣れている海外旅行保険提携病院への受診をおすすめします。
公費負担費用や自費負担費用(保険の有無など)について教えてください
まず、フランスの医師はセクター1、2、3に区別されることを覚えておきましょう。 規定診察料で診察を行うセクター1の医師に対し、セクター2の医師は規定料金以上の高い診察料を設定しています。さらに、セクター3の医師の診察は国民健康保険の対象外となっています。
保険の種類と還付率は以下のとおりです。
保険の種類 | 加入資格 | 還付率 |
---|---|---|
Sécurité Sociale (セキュリテ ソシアル) 国民健康保険 | フランスで就労する者(外国人を含む)およびフランスの政府認定高等教育 機関に3ヶ月以上、留学する28歳未満の者は加入が義務づけられている。 | 規定診察料の7割をはじめ、 検査費6割、薬代3~6.5割、 入院費8割などが還付される。 |
Mutuelle (ミュチュエル) 任意保険 | Sécurité Socialeの加入者であれば、 誰でも加入することができる。 | 還付率は契約内容により異なり、Sécurité Socialeでカバー されない自己負担部分を補う。 |
※ 還付率はSécurité Sociale の規定料金に対してであり、支払った金額ではありません。
――観光程度の渡仏では「セキュリテソシアル」に加入できないと思うのです が、当然「ミュチュエル」の加入も不可でしょうか?
ミュチュエルはセキュリテ ソシアルの加入者を対象とした任意保険なので、単独での加入はできません。
――観光客はすべて自費になるという認識でOKでしょうか?
はい、全額自己負担となります。保険が必要な事態にならないことが一番ですが、もしもの時に、余計な悩みを増やさないためにも海外旅行保険への加入をおすすめします。
公立病院と私立病院の医療情勢について教えてください
フランスでは緊急の場合を除いて、医師の診察を受けるには予約が必須となります。公立病院の場合、その予約も早くて、数日後、専門医の場合は1ヶ月、2ヶ月先となることも珍しくありません。待っている間に病気が進行してしまうのではと心配になりますが、医療費が安い反面、 時間や手間を要します。
一方、私立病院は自由診療ということで、専門医が医療費を自由に設定できるため、医療費は高額になるものの、処置の早さや医師とのコミュニケーションが密にとれるなどの利点があります。
――日本人が体調不良やケガに見舞われた場合は、私立公立問わず救急に搬送されますか?
救急車(SAMU)に同乗している医師の判断により、最適な公立の医療機関に搬送されます。
フランス医療Q&A
地域特有の病気や、季節で流行る病気はありますか?
寒い時期にガストロ(正式名:ガストロアンテリット)という胃腸炎が流行します。ウィルスによる感染が主で、激しい嘔吐、下痢、悪寒、発熱などの症状があらわれます。普段から手洗いを徹底し、衛生面に気を配ることが肝心です。
救急車の費用はかかりますか?
救急車は有料です。約60ユーロの基本料金に、走行距離に応じて、1kmあたり約2ユーロ が加算されます。 救急車利用で保険は適用されますか?
Sécurité Sociale に加入していれば、8割が還付されます。「Mutuelle」の契約内容によっては全額還付の場合もあります。
薬はどうやって処方してもらうのでしょうか?
主治医制度が推奨されているフランスでは主治医を通して、処方箋を受け取ります。処方箋が必要な薬を服用中の方はあらかじめ、フランス語か英語で、薬品名、服用期間、自分と家族の病歴などについても説明できるようにしておきましょう。
主治医はどうやって見つけるのでしょうか?
フランスで暮らすうえで、良い主治医を見つけることは重要です。フランス人の家族がいる方は同じ主治医にかかればよいですが、そうでない方は自宅付近の薬局で、評判の良い医師を紹介してもらいましょう。また、こちらのサイトでは郵便番号や都市名などから医師の情報を検索することができます。
日本語が通じる病院を教えてください
パリ郊外にある総合病院で、海外旅行保険提携病院でもあります。
アメリカン・ホスピタル・オブ・パリ
住所 : 63 Boulevard Victor Hugo 92202 Neuilly sur Seine
電話番号:01 46 41 25 15 (月~金 9:00~18:00)
//jp.american-hospital.org/
その他、日本語の通じる医師・歯科医師は、在仏日本大使館のサイトをご参照ください。
日本人がフランスに行くときに知っておきたいこと
海外では言葉の問題も加わり、誰もが病院のお世話にはなりたくないものです。しかし、気をつけていても病気や怪我はつきものです。フランスではSécurité Sociale への加入がなければ、医療費はすべて自己負担となります。
保険は使うことがなければ、なかなか有りがたみが感じられませんが、不測の事態に備えて、たとえ、短期の滞在であっても海外旅行保険には加入しておきましょう。
保険会社提携の医療機関であれば、高額な医療費を一旦、自分で負担しなくてもよいというメリットもあります。もしもの時のために、旅の計画とあわせて、現地の医療事情や海外旅行保険提携病院などを確認しておくとよいですね。
日本人がフランスに旅行に行く際に気を付けておきたいポイントはありますか?
フランスに限ったことではありませんが、とにかく貴重品の管理には十分、注意してください。街中の至るところに、スリのグループが身をひそめています。
私も渡仏直後は警戒心がうすく、バックの口がパックリ開いたまま、街中を散策したり、地下鉄に乗ったりして、主人に注意されたものです。カフェやレストランの中だからといって、安心はできません。テーブルに置いたスマホを持ち去られたり、地下鉄の中で強引に盗まれるという被害も頻発しています。
また、観光客を狙った路上詐欺も年々、進化していて、ボードを手に、署名活動をしているふりをして、近づき、ボードで死角となったカバンから貴重品を盗むという手口が横行しています。
女性や子供だからと油断せず、見知らぬ人に声をかけられたら、警戒してください。怪しいと思った場合は立ち止まらず、速やかにその場を離れましょう。
フランスで気を付けたい病気やケガについて教えてください
体調を万全に整えて、出発しても長時間のフライトや過密スケジュールで疲労は蓄積します。現地での食事や水が合わないということも想定されます。フランスの水道水が飲めないわけではありませんが、日本の軟水に体が慣れている日本人旅行者の方はミネラルウォーターを飲まれた方がよいでしょう。
環境や生活リズムが変わるだけで、体調を崩しやすくなりますので、旅行中も十分な休息を心がけましょう。
フランスに危険地域はありますか?
在仏日本大使館のサイトで、最新のフランス安全情報が入手できますので、渡仏前には一読しておくことをおすすめします。
フランスで便利に使えるクレジットカードはありますか?
VISA および Master Card はカード決済可のほぼすべてのお店で使用可能です。JCB はVISA やMaster Card に比べると制限されますが、デパートや大手ショップでは問題なく、使用できます。
フランスで困った時に相談できるサポートダイヤルを教えてください
- 在仏日本大使館
TEL : 01 48 88 62 00 (月~金 9:30~13:00 / 14:30~17:00)
住所 : 7 Avenue Hoche 75008 Paris
//www.fr.emb-japan.go.jp/ - 救急車(SAMU) TEL : 15
- パリ緊急医療サービス(SOS Médecin) TEL : 01 43 37 77 77 または01 47 07 77 77
- 救急歯科(SOS Dentaire) TEL : 01 43 37 51 00
- 救急眼科(SOS Ophthalmologie) TEL : 01 47 07 64 64
- 警 察 TEL : 17 (携帯電話からは112)
- 消防署 TEL : 18
- アメリカン・ホスピタル・オブ・パリ (海外旅行保険提携病院)
TEL : 01 46 41 25 15(月~金 9:00~18:00)
フランスに移住して思ったことやフランスの魅力とは?
フランスの薬局ではDermo Cosmetique(デルモ コスメティック)という皮膚科学に基づく研究により開発された、低刺激の高機能性化粧品が充実しています。
私を含め、私の周りでもフランスに移住後、生活環境と水質の変化により、お肌の乾燥に悩まされる日本人女性は多いです。空気が乾燥しているうえに、硬水のフランスでは外国人に限らず、肌トラブルを抱える人が多く、処方箋を手に、デルモコスメを買い求めるパリジェンヌもよく目にします。スキンケアについても処方箋が出されるというのは化粧品に対する日本との認識の差を感じます。
また、眼鏡も処方箋があれば、保険が適用され、今後、老眼鏡が必要になるであろう私には有難いです。