バッグやカメラなど身の回り品の盗難、破損等による損害を補償してくれる「携行品損害」。破損はともかく、盗難の場合は現地の警察に「ポリスレポート」という盗難証明書を発行してもらう必要があるなど、保険金の請求手続きが少々やっかいになります。
ここでは、海外で盗難被害に遭ったときの行動手順と請求手続きの要点を解説します。
1.保険会社に連絡後、現地の警察へ行く
加入している保険会社の事故専用窓口に連絡し、担当者に盗難時の状況を詳しく説明してください。事故の受付が完了すると、担当者は前述した「ポリスレポート」を取得するよう求めてくるはずですので、これに応じてください。ただし、「帰国直前に盗難に気付いた」など、どうしても取得が無理な場合は、その旨をきちんと伝えましょう。基本的には必須の書類ではありますが、事情を考慮してくれることもあります。
ポリスレポートには、依頼者の発言をもとに「盗難に遭った品目」「日時」「場所」「所有者の名前」「日本の住所」「滞在先の連絡先」などが記載されることになります。それなりの言語力を必要とすることもあるため、できるなら添乗員や現地旅行会社のスタッフと共に行くのが望ましいでしょう。
証明書の発行は基本的に即日。遅くとも2日以内には受け取れます。なお、地域によっては発行するのにお金がかかる場合もあります。
携帯電話の盗難は携帯会社→保険会社の順
盗まれたものが携帯電話の場合、まずは携帯会社に連絡し、回線停止手続きなどを行ってください。保険会社よりも優先する理由は、不正使用された通話料等は海外旅行保険の補償対象外だからです。国際電話の利用限度額は各社によって制限が設けられていますが、何をされるか分からないため、早急にサービスの中断を申込ましょう。
2.必要な物を用意する
帰国後、発行されたポリスレポートと共に、次のものを用意しましょう(ない場合は仕方ありません)。
- 盗難された品の保証書や領収書、または説明書
- 盗難された品の写真
- パスポートのコピー
[3]はいいとして、[1]と[2]の意味は、盗難された品が本当にあなたの物かを確認するためです。実は携行品損害の盗難請求には保険金目当ての詐欺が絶えず、保険会社は虚偽の申告がないか目を光らせているのです。心外な話ではありますが、スムーズに申請を通すためにもできる限り準備しましょう。
必要な物がそろったら、保険会社から送られてくる請求書類に必要事項を記入して提出、これで完了です。
携行品損害の基本は時価払い
申請が通ったからといって100%喜べないのが、携行品損害は「時価払い」にしている会社が多いということ。盗難された品を再び購入するときにかかる「再調達価額」ではなく、経年劣化が考慮された中古価格で査定されます。
さらに、1個(組)あたりに支払上限が設けてある点も注意。たとえば50万円の高級一眼レフカメラが盗まれ、時価額が40万円だと査定されても、受け取れるのは10万円までというケースが多いです。「30万円や50万円まで補償する」と書いてあっても、それはトータルの話であり、1個あたりには上限が決められているのです。
(例:トータル30万まで)
カメラ8万円、バッグ5万円、腕時計15万円、パソコン20万円=保険金は30万円まで
補償されない携行品もある
盗難に遭っても補償対象外の身の回り品もあります。現金、小切手、有価証券などは理解しやすいと思いますが、眼鏡、コンタクトレンズ、登山、義歯、サーフィンなどの運動用具などが補償されないのは、意外に感じる人もいるでしょう。とにかく補償対象外ということで、盗まれないように注意してください。
さいごに
「楽しいはずの海外旅行で盗難に遭った」ことと、「満足のいく保険金が出なかった」ことのダブルショックに見舞われるのが携行品損害です。せめて手続きでもたつくことのないよう、現地の警察署の場所を把握しておく、外国語対策をしておく(翻訳アプリなども十分使えます)など、事前に対策を練っておきましょう。もちろん、盗難に遭わないための努力も大切です。
なお、置き引きによる紛失は、本人に非があると判断されるため、携行品損害を請求できません。盗難、紛失、両方に注意して楽しく海外を旅したいものですね。