介護保険は生活保護受給者でも受けられるの?

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さまざまな事情で生活に困窮する人々に対し、最低限の生活を保障することで自立を助長する生活保護制度。申請が認められると、生活を営むうえで必要な各種費用が支給される仕組みになっています。
ところで、保険料を納められない生活保護受給者が要介護状態になったとき、介護保険を受けることはできるのでしょうか?

結論を先にいうと「できる」のですが、制度としてはちょっとややこしい仕組みになっています。


40歳~64歳(第2号被保険者)の場合

本題に入る前に、簡単に介護保険の区分をおさらいしましょう。

介護保険は、65歳以上の人を「第1号被保険者」、40歳~64歳未満の人を「第2号被保険者」と呼んで区分けしています。

区分(年齢) 保険料
第1号被保険者(65歳以上) 老齢年金給付より特別徴収。ただし年額18万円未満の場合は納付書または口座振替による普通徴収
第2号被保険者(40歳~64歳) 各種医療保険より特別徴収

第2号被保険者の項目を見てください。40歳~64歳の人は、医療保険から介護保険料が特別徴収(天引き)される仕組みなので、「医療保険加入者=第2号被保険者」という構図になっています。言い換えれば、医療保険料を納められない生活保護受給者の人は、介護保険の第2号被保険者になれません。

こうした人が要支援または介護状態になった場合、理屈でいえば全額自己負担になってしまいますが、もちろんそんなことはなく、生活保護費のなかの「介護扶助費」という予算で賄われることになっています。居宅介護や施設介護サービスを利用したときの介護サービス費や、食費、標準負担額などが、利用者の負担なしに(原則)現物給付の形で支払われます。

【参考】介護扶助の支給内容と他の生活保護の種類
扶助の種類 支給内容
介護扶助 介護費用を直接指定の介護事業者へ支払。ただし現物給付が適当でないときは金銭給付による支給もあり
生活扶助 食費や光熱費のための費用一定の範囲内で支給
住宅扶助 家賃にかかる費用を一定の範囲内で支給
教育扶助 義務教育に必要な費用を一定の範囲内で支給
医療扶助 医療費を直接医療機関へ支払
出産扶助 出産にかかる費用を一定の範囲内で支給
生業扶助 就労にかかる費用を一定の範囲内で支給
葬祭扶助 葬祭にかかる費用を一定の範囲内で支給

40歳~64歳の生活保護受給者のケースをまとめると、 「介護サービス料は全額生活保護費から支給」ということになります。

65歳以上(第1号被保険者)の場合

一方、65歳以上の人は、それまで医療保険を支払っていない人でも全員が介護保険の第1号被保険者になります。生活保護受給者にも介護保険が適用され、必要な介護サービスを1割負担で受けることができるわけです。

介護保険を利用条件として保険料を支払う義務が生じますが、生活保護受給者は「生活扶助」から支給されるので心配いりません。正確には、生活扶助費に介護保険料が加算される形です。
そして、こうした人が要支援または介護状態になり、介護サービスを利用したときに支払う1割負担は、やはり生活保護の介護扶助から賄われることになります。

65歳以上の生活保護受給者のケースをまとめると、 「介護保険料は生活保護費の生活扶助から、介護サービスの1割負担は介護扶助から支給」ということになります。

まとめ

最後に、通常の被保険者も含め情報を整理しておきます。

区分(年齢) 介護保険料 介護サービス自己負担割合
第1号被保険者(65歳以上) 年金より特別徴収。年額18万円未満の場合は普通徴収 1割
同上の生活保護受給者 生活保護「生活扶助」から支払う 1割(生活保護「介護扶助」より支給)
第2号被保険者(40歳~64歳) 各種医療保険より特別徴収 1割
同上の生活保護受給者(医療保険未加入) なし 生活保護費「介護扶助」より全額支給

いかがでしょうか。支給にかかわる制度の仕組みはやや複雑ですが、結果的には生活保護費で賄ってもらえるということになります。

生活保護の申請は、事前に居住する地域の福祉事務所に相談する必要がありますので、詳細は厚生労働省または市区町村にお問い合わせください。

【参考】生活保護制度/厚生労働省

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