誰も住んでいない空き家でも火災保険は必要?

相続などの関係で、誰も住んでいない家を所有している人もいると思います。通常、火災保険は自分が今暮らしている住まいに対してかけるものですが、こうした「空き家」にも火災保険は必要なのでしょうか?

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空き家の損害を保険で補償する必要はあるのか?

誰も住まない家なら保険をかける必要はないのではないか?と思う人もいることでしょう。保険は損害を補償するためにありますが、もともと必要でない家なら、全焼して失われても損害ではない(補償の必要がない)とも言えるからです。確かに、失っても補償する必要のないものに保険をかける意味はないのかもしれません。

ですが、住まいが全焼したとしても、受け取った火災保険の保険金を「必ず、住まいの再建に使わなくてはならない」義務などはありません。もともと誰も住んでいなかった空き家であれば、焼け跡を片付けるだけにして、家は建て直さず、保険金を余らせても問題はないのです(※ただし家が建っていた土地を更地にすると、固定資産税は上がります)。その意味で、空き家に火災保険をかけておくことがまったくの無駄ということはありません。

損害保険で「焼け太り」は許されませんが、「焼け太り」は、被った損害以上の利益を得ることを言います。この場合、無用の空き家であってもそれは失われているのですから、その損害ぶんが補償されただけなのです。「どうせ空き家だったから再建しなくていい」と考えるのは、所有者の気持ちの問題であって、保険金は受け取っても構いません。どのみち、片付け費用は発生するのですから、費用保険金が受け取れるだけでも意味はあります。

火災保険の保険金が時価で支払われていた頃、老朽化した空き家などは大した補償額になりませんでした。このことも「空き家に保険などかけても無駄だ」という考えを助長していたようです。しかし現在、火災保険は再調達価額で契約することがほとんどですから、空き家であってもまとまった保険金額になります。

それでも、空き家にかける保険のために保険料を払うのは釈然としないという人には、「約定付保割合を設定する」という方法があります。これは、通常、保険金額を物件の評価額の 100%で設定するところ、 100%未満の割合にするということです。再調達価額 2,000万円の家に火災保険をかけると、通常は全焼時に 2,000万円の保険金となるところ、「約定付保割合 50%」で契約しておくと保険金の上限が 1,000万円となります。当然、そのぶん保険料は割り引かれますので(単純に 50%にはなりません)、完全な再建をするつもりがないなら、保険料を抑えたうえで火災保険をかけておくのに良い方法です。

空き家から生じた近隣の迷惑には所有者の管理責任が問われる

次に、空き家に火災が発生した場合の責任について考えてみましょう。誰も住んでいないのですから、住人の不注意や過失で火事が発生することはありません。放火などであれば、責任は放火犯にあるのですし、重過失がなければ類焼の責任を負わないのが火災の原則です。しかしながら、空き家の所有者である以上、所有者としての管理責任を完全に免れることはできないのです。

空き家が老朽化していけば、倒壊の可能性も出てきます。害獣・害虫の住処になって近隣に迷惑をかけることもあるでしょう。近年、地方を中心に、放置されている空き家が周辺環境に与える悪影響が問題化しており、 2015年から「空き家対策特別措置法」という法律が施行されています。これは、空き家の所有者に適切な管理をするよう行政が指導できるというものです。つまり、述べたような事態について、空き家の所有者の責任がより強く問われるようになったと言えます。

では、空き家の所有者に問われる責任問題について、火災保険で対処できるでしょうか? 残念ながら老朽化による損害は火災保険では補償されないため、ほとんどの場合、直接的な対策にはならないでしょう。ただし、賠償責任が生じた場合は、付帯されている個人賠償責任保険で補償されることはあります。

まとめ:空き家には最低限の保険をかけつつ、空き家の処分も検討

ここで、ひとつ、問題があります。それは、誰も住んでいない空き家は、そもそも保険契約上「住宅」とみなされないということです。そのため、空き家に対して火災保険を契約しようとすると、「一般物件」という形の契約になってしまいます。事務所や店舗、倉庫などと同じ扱いであり、人が住んでいる住宅より保険料は高めになってしまうのです。

以上を踏まえて、ここまでの論点をまとめましょう。

  • 空き家でも片付け費用などは発生するので火災保険は無駄ではない
  • 空き家で契約する火災保険は一般物件契約のため、保険料は高くなる
  • 約定付保割合を設定することで保険料を抑えることは可能
  • 受け取った保険金で再建をしなくても構わない
  • 空き家については所有者に管理責任が生じている

総合すると、片付け費用などを見越して最低限の火災保険をかけておくのが良いかと思われますが、そもそも、空き家を使わずに放置しているという状況そのものを解決するのが本筋だとも言えます。可能なら処分してしまったほうがいろいろな意味でスッキリすることも多いでしょうから、空き家を所有している人は、保険だけでなく、相続や固定資産税のことなども含めて検討し、空き家をどうするのが良いか、判断すべきでしょう。

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