損保会社が破綻したら、火災保険はどうなる?

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もしも加入している火災保険の保険会社が破綻してしまったらどうなるのでしょうか? 保険会社自体は民間のものですが、保険は公益性が高い存在であるため、万一に備えて補償の仕組みがあります。


火災保険の保険金は、破綻後3か月間は100%補償される

国内で活動している保険会社は、外資系の会社も含めて、すべてが保険契約者保護機構という機構の会員になっています。保護機構は生保と損保に分かれていますが、いずれも、会員である保険会社が破綻した場合は、契約者を保護するために動いてくれることになっています。

保険会社が破綻した場合、次のいずれかの措置が行われます。

  • 別の保険会社が「救済保険会社」として破綻会社の事業を引き継ぐ
  • 保護機構が継承会社を設立して破綻会社の事業を引き継ぐ
  • 保護機構自身が破綻会社の事業を引き継ぐ

いずれの場合も、保険契約が引き継がれるため、かけていた保険が完全に白紙になってしまうことはありません。また、更生特例法という法律の適用で経営再建が行われることもあります。この仕組みは、生命保険・損害保険共通です。

このとき、生命保険の場合、破綻会社の財務状況に応じて責任準備金の削減などが行われ、契約内容が一部変更されることがあります。たとえば、

  • 保障額の減額
  • 予定利率の引き下げ(保険料のアップ)
  • 早期に解約した場合の解約返戻金の減額

などが行われます。白紙にならないだけマシではあるのですが、ノーダメージというわけにはいかない場合も多いです。

【関連】保険会社が破綻したら保険ってどうなるの?

一方、損害保険の場合、より契約者にやさしい形になっています。火災保険について言うと、破綻後3か月間は、保険金が減額されない(補償割合100%)ということが保証されています。

解約返戻金・満期保険金などについては補償割合80%になりますし、保険金も破綻後3か月経過以降は80%になってしまいますが、破綻直後に支払事由があっても、問題なく保険金が受け取れるというのは心強いでしょう。

補償額は減らないのですが、予定利率の引き下げなどは行われる可能性はあります。そのため、加入している保険会社が破綻した場合は、別の火災保険に乗り換えたほうがいい場合も多いのですが、そういうとき、3か月間の猶予がある(その間はもしものことがあっても補償が減らない)と考えることもできるでしょう。

なお、上記の規定は火災保険の契約者が個人・小規模法人・マンション管理組合である場合に限ります。また、自賠責保険、地震保険は解約返戻金も含めて、つねに100%補償され、一部の積立型商品や傷害保険、所得補償保険などは仕組みが異なります。以下に表でまとめました。

保険の種類 保険金の支払い 解約返戻金・満期保険金など
自賠責保険・地震保険 補償割合100%
自動車保険 破綻後3か月間は補償割合100%(3か月経過後は80%) 補償割合80%
火災保険
その他の損害保険
短期傷害保険・海外旅行保険
積立型の傷害保険など 補償割合90% 補償割合90%
その他の疾病・傷害保険(医療・介護・所得補償保険など) 補償割合90%(積立型の場合積立部分は80%)

参考:損害保険契約者保護機構 //www.sonpohogo.or.jp/02_a1.html
※保険の種類についてはわかりやすい表現にしています。契約者の種類や諸条件で例外がある場合があります。

共済やミニ保険の場合はどうなる?

ここまで述べてきたのは保険の場合です。共済や、ミニ保険(少額短期保険)については事情が異なります。共済団体や少額短期保険会社は、保険契約者保護機構の会員ではなく、上記のような救済の仕組みはありません。そのため、実際のところどうなるかは「わからない」のが率直なところです。

JA共済は公式サイトにて「加入しているJAが破綻した場合、契約はどうなりますか?」という質問に対して、次のよう回答しています。

共済契約をJAとJA共済連が共同でお引き受けすることにより、ご契約者の皆さまの保障を継続しております。

JAおよびJA共済連は、健全な事業運営に努めておりますが、仮に、窓口となっているJAの経営が困難になり破綻するような場合でも、共済契約は他のJAとJA共済連が共同して、またはJA共済連が単独でお引き受けすることにより、保障を継続してまいります。

注記:JA共済連ではご契約者の皆さまへの支払原資として、十分な共済契約準備金を確保しています。

(出典:JA共済の特長やご加入条件に関する質問 //www.ja-kyosai.or.jp/contact/qa/tokucho/

コープ共済でも、次のような記述があります。

保険会社における「保険契約者保護機構」や銀行における「預金保険機構」に類するものは、生活協同組合にはありません。

コープ共済連では厚生労働省令が定める共済契約準備金を積立て、将来の支払いに備えています。また、生協法にしたがい、資産運用のリスクを適切に管理し、健全な資産運用を行い、長期的な視点で安定した事業運営を行っています。

(出典:その他の質問 //coopkyosai.coop/faq/faq_other/faq_other01.html )

要約すると、「破綻しないように頑張ります」ということですので、保険に比べるとリスクはあるということは認識しておいたほうがよさそうです。JA共済やコープ共済などは加入者も多く、もしも破綻した場合の社会的影響は大きいですから、国がなんらかの対応をする可能性は十分あります。ありますが、はっきりと法律で定められていない以上、安易に期待することはできません。

少額短期保険会社についても同様です。もっとも、少額短期保険という制度自体、セーフティーネットのない無認可共済をなくすために設けられたものであり、少額短期保険会社は事業規模に応じた保証金の供託が義務付けられています。

ジャパン少額短期保険株式会社の家財保険「新すまいRoom保険」では重要事項説明書の中に次の記述がありました。

万一弊社が経営破綻した場合であっても、「損害保険契約者保護機構」による資金援助は行われません。また、保険業法で定める補償対象契約に該当しないため、同機構による保護はございません。弊社は、保険業法に基づいた少額短期保険業を運営しており、事業規模に応じた保証金の供託を行い、事業継続の不測の事態に備えています。ただし、弊社が破産手続き開始の決定を受けたときは、お客さまは保険契約を解除することができます。お客さまが解除しなかったときは、当該保険契約は、破産開始決定の日から3ヶ月を経過した日に失効します。

(出典:重要事項説明書 //www.japan-insurance.co.jp/rules_in.html

この商品は破綻後3か月で保険契約が失効するということのようです。3か月以内の間に乗り換えるように、ということだと思いますが、その間、保険のように補償額が維持されるのかどうか、この文言からはわかりません。少額短期保険は会社によって扱いが異なると思いますので、個別に規約・約款を確認しておくべきでしょう。

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