住宅ローンを利用するためには、火災保険に加入することが条件とされていることがほとんどです。ローンを提供する金融機関は、不測の事態があっても、ローンは返済してほしいと考えます。
しかし、火災に遭って、住まいを失ったのにローンが残っているという状態では、その後の返済が難しくなる可能性が高いため、金融機関としても、ローンの利用者には万一のリスクヘッジをしてもらいたいと考えるわけです。
では、火災保険について、住宅ローン利用の条件として入る場合の諸々を解説します。
住宅ローンの条件としての火災保険はどんな保険でもいい?
金融機関でローンの契約をする際、火災保険についても案内される場合があります。このとき、必ずしも金融機関から案内された保険に入る必要はありません。一定の条件さえ満たせば自分で選んだ火災保険でOKです。
「一定の条件」と言っても、保険業法に基づく保険会社や、生協法の規制を受ける共済団体の商品であればほとんど問題ありません。つまり、通常の保険・共済であればほぼ大丈夫だということです。
また、住宅金融支援機構で所定の融資を受けた人が入れる「特約火災保険」や、一部の金融機関が自行の住宅ローンを利用する人専用に提供している保険商品などは、別の金融機関のローン利用者は利用することができません。
住宅ローンのために入ると言っても、火災保険そのものには変わりはないので、難しく考える必要はありません。金融機関から案内された専用商品は保険料が安いなどのメリットがある場合もあるので、比較検討のうえ、良いと思ったら勧められたものに加入しても問題ありません。
ローンによって「質権設定」が条件になる場合も
住宅ローンのための火災保険は、「質権設定」が条件とされる場合があります。
質権設定とは、火災保険の保険金を請求する権利(保険金請求権)に対し、住宅ローンの借入金の担保として質権を設定することを言います。簡単に言うと、「火災に遭って保険金が支払われることになった場合、保険金を金融機関が受け取れるようになる」ということです。
そうすると、火災保険に入っていても自分は保険金を受け取れないのか?と心配になりますが、住宅ローンの返済が問題なく行われている限り、金融機関がこの権利を行使することはありません。あくまでも、ローンが返済されなくなったときのための備えとして、金融機関がとれるお金を押さえておくことが目的です。最近は、質権設定を求めない金融機関も増えています。
金融機関から質権設定を求められた場合、保険会社にその旨を伝えれば設定が可能です。質権設定を行うと保険証券は金融機関が預かることになり、加入者には写しだけが渡されます。
また、金融機関の同意なくこの火災保険を解約したり、補償内容(保険金額など)を変更したりできなくなります。この保険に対して、金融機関に一定の権利が発生しているからです。解約や変更をしたくなった場合は金融機関に相談が必要です。
火災保険はローン期間中、継続の必要あり。完済後も解約はしなくてOK
住宅ローンの利用条件として入る火災保険は、万一の場合の、ローン返済に備える意味があるのですから、原則として、ローンの借り入れ期間以上の保険期間が求められます。
例として、住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫)で、機構融資を受ける人に対して提示されている、火災保険の保険期間に関する要件を見てみましょう。
保険期間は10年とし、満期時は保険期間10年の保険を改めて付保し、その後も償還期間中は同様とすること。
償還期間が10年未満の場合の保険期間は、償還期間以上であること。
つまり、10年で契約し、それを更新し続けることで、ローンの借入期間中に保険期間が切れることのないようにしてください、ということが求められているのです。
ちなみに、平成27年9月30日以前は「保険期間は、償還期間(ただし、金銭消費貸借抵当権設定契約時より前に保険契約を開始する場合は「償還期間+1年」)以上であること」とされていました。同年10月より、火災保険は10年超の長期契約ができなくなったため、このようになりました。