最近、「ミニ保険」という呼ばれる保険商品が増えてきているのをご存知でしょうか。正確には「少額短期保険」という保険で、一般の保険とは制度上の違いがあることから、実にさまざまな種類が販売されています。
もちろん、火災保険にあたる商品もありますが、一般の火災保険や火災共済などと同等に考えてもいいものなのでしょうか? ミニ保険についての基礎を振り返りながら、その特徴を調べ、考えたいと思います。
ミニ保険=少額短期保険とは
ミニ保険こと少額短期保険は、2006年の保険業法改正により新設された制度です。もともと保険は公益性が高いため、新たに保険会社を興したり、保険商品を販売したりすることに対しては、非常に厳しい法の規制が敷かれていました。一方で、根拠法なく保険に類似した商品を扱う、いわゆる「無認可共済」が横行していたという現実があり、国が消費者保護の観点から、そうした保険に類似する商品とそれらを扱う事業者を保険業法の中に取り込もうとしたというのが背景にあります。
少額短期保険は、通常の保険よりも保険金額の上限は少額で、保険期間も短期間に制限されます。
小規模なものに制限するかわりに、本来なら正式な保険(会社)としては認められなかった商品や事業者も、保険業法のもとに、通常の保険に準ずるものとした制度です。少額短期保険を扱う業者を少額短期保険業者と言います。
現在、少額短期保険業者は約80社ほどあり、さまざまな少額短期保険を販売しています。死亡保障や医療保障といった、一般の保険と変わらない商品もある一方で、ペット保険や葬儀保険など、ニッチでユニークな商品もあるのが特徴です。
ミニ保険と一般の火災保険の5つの違い
ミニ保険の火災保険について見てみましょう。ミニ保険に課される制限の関係で、通常の火災保険とは異なる点があります。
1.保険の目的にできるのは「家財」だけ
ミニ保険は、家財にしか保険がかけられないという点が最も大きな違いでしょう。建物の保険としては使用できないわけです。そのため、ミニ保険の火災保険は、「家財保険」という名称になっているものが多く、基本的に賃貸に住んでいる人向けと考えていいでしょう。「マンション保険」のような名称のものもあります。
2.保険金額の上限は1,000万円
補償の範囲や内容については、通常の火災保険とほぼ同じです。ただし、補償額は上限が1,000万円と低く制限されています。目的は家財のみですので、建物よりは保険金額は低めになるとはいえ、人数が多い世帯ですと、若干、物足りないと感じる場合もあるでしょうか。また、この上限1,000万円というのは、少額短期保険の損害保険としての上限であり、個別の商品としては、もっと低い金額が上限である場合もあります。事前によく確認してください。
3.保険期間は2年以内
少額短期保険の保険期間は、第1分野(生命保険)で1年、第2分野(損害保険)で2年以内と定められています。火災保険ですと、2年ということになります。もちろん更新することは可能です。一般の火災保険も、長期契約が廃止になりましたし、この点は大きな問題ではないかと思われます。
4.地震保険は付帯できない
少額短期保険には地震保険をつけることができません。基本補償の一部として、地震に関する費用保険や見舞金補償、地震による被害で転居を余儀なくされた場合の引っ越し費用補償などがある商品は存在します。また、今のところ唯一の、地震の損害を補償する独立したミニ保険として、SBI日本少額短期保険株式会社から「地震補償保険リスタ」が販売されており、地震についての本格的な補償が必要であれば、そういったものを利用するしかありません。
5.万一、保険会社が破綻した場合の扱いが異なる
保険は公益性が高いため、保険会社が破綻した場合は法律により契約者が保護される仕組みがあります。通常の火災保険ですと、損害保険契約者保護機構による保護を受けることができます。
具体的には、契約していた損害保険会社の破綻後3か月以内は、もしも保険事故が起こっても、契約していた保険金は削減されることなく支払われます。つまり、保険会社が破綻した場合も、別の契約先を見つけて新しい保険に切り替えられる猶予期間が3か月あるということです。
少額短期保険の場合、このような仕組みはありません。しかし、破綻したらすべてが終わりかというとそうでもなく、少額短期保険は一定金額を供託しておくことが義務付けられており、いざというときはそこから補償されるようになっています。ただし、一般の損害保険のように100%の保険金支払いが保証されてはおらず、供託されていた保証金の範囲内となります。これをもって、少額短期保険のほうが危ないと言い切ることはできませんが、もしもの場合のリスクは、一般の保険会社とは異なることは理解しておきましょう。
まとめ:ミニ保険の火災保険は使えるか?
以上を踏まえて考えると、ミニ保険は、通常の火災保険や火災共済と比べると、その完全な代替物とは言えないでしょう。まず建物に保険が掛けられないという点で、戸建住まいの人は使えないからです。
ですが、保険料は比較的安い傾向にありますので、賃貸住まいの人が、家財にだけ安価に保険をかけたいという場合はニーズに合います。一時的に、最低限の補償だけ付けておきたいという場合は、検討してみる価値は大いにあるでしょう。