保険金請求がすみやかに出来ない場合の対処法

火災保険に限らず、保険というものは保険金が支払われる状況になったとしても、加入者が請求を行わなければ受け取ることはできません。しかし諸々の事情で保険金請求がスムーズに行えなかったり、最悪、請求漏れになるケースもあると言います。ここでは事例を挙げて、そういった場合の対策や予防法などをまとめました。

目次

ケース1:入っていた火災保険がわからない

住まいに損害が生じた際、保険証券も失われてしまって、自分が加入していた火災保険がどこの保険会社だったかわからないというケースが考えられます。また、自分ではなく、別居の親の住まいが被害に遭い、それにともなって不幸にも親が亡くなってしまったり、生きていても話ができる状態ではないなどで、その家にどんな火災保険がかかっているのかわからない、ということがあります。そういうときは、どうすればよいのでしょうか?

特定の保険代理店と付き合いなどがあれば、問い合わせてみれば解決です。まさにこういうときこそ、複数の保険契約を一括で管理してくれる代理店利用のメリットが発揮される場面だと言えるでしょう。

代理店を利用していない場合は、どうにかして契約している保険会社を突き止める必要があります。なんとか保険証券が見つかればOKですが、見つからない場合は、保険金請求や更新案内のハガキなどがないか探してみましょう。地震保険にも加入していれば「地震保険料控除証明書」が届いているかもしれません。保険料を口座引き落としやカード決済にしていれば、通帳やカード会社の明細が手がかりになります。

どうしてもわからない場合は、最悪、損害保険会社に1社1社問い合わせるのが最後の手段となります。

このとき、もし、災害救助法が適用となるような大きな自然災害で被害を受けていた場合、「自然災害損保契約照会制度」によって、保険会社の照会を受けることができます。これは、災害によって住まいが全損し、保険証券が失われたケースに対処するためのものです。

自然災害損保契約照会制度を利用したいときは、日本損害保険協会の専用窓口に連絡します。(※この制度が利用できるのは災害救助法が適用となる災害の場合だけですのでご注意ください。)

■日本損害保険協会 自然災害損保契約照会センター
//www.sonpo.or.jp/useful/icrcd/
電話: 0570-001830/ 03-6836-1003( IP電話の場合)
受付時間:平日 9:15~ 17:00

火災保険は、住まいの損害を補償するものですので、火災保険の請求をしたいときというのは、住まいに何か起きたときです。証券が失われるケースは十分に考えられるのですから、あらかじめコピーをとって別居の親族にも預けておくなどしておくのが良いでしょう。災害から避難するときに持ち出す用のセットの中に入れておくのも良い方法です。

ケース2:保険証券が焼失した、なくしてしまった

契約している保険会社はわかっているが、火災で保険証券が焼失したなどという場合、保険証券を再発行する必要があります。

火災などとは関係なく、単純に証券を紛失してしまう場合もあると思います。不注意による紛失でも保険の契約は無効にはなりませんし、証券を再発行してもらえますので安心してください。

証券の再発行は、契約している保険会社に連絡をして手続きします。このとき、保険証券の番号がわかれば手続きはスムーズです。そのためにも、やはり、証券のコピーを親族に預けておくのは有効でしょう。次善の策として携帯電話で撮影しておく手も考えられます。

再発行手続きについて、具体的な手順は各保険会社ごとに決まりがありますから指示に従ってください。印鑑証明などの書類が必要になる場合もあります。再発行にはおおむね 1~ 2週間はかかることが多いようです。

ケース3:親が亡くなっている場合の請求手続は?

火災などで、不幸にも親が亡くなってしまった場合、親が契約していた火災保険金は子が請求することになります。

まず前提として、火災保険は、人が契約していても、その対象は住まいという物であり、その物の所有者=物件を相続した人が、受け取る権利を持ちます。保険の契約や保険料の支払いを誰がしていたかはこれに関係ありません。親の住まいが、親の持ち物であったなら、その保険金は親が受け取るものであり、その親が亡くなっているのですから、物件の現在の所有者=物件を相続した人が、保険金を請求できます。

通常、それが子になるわけですが、保険金を受け取るためには物件の所有者である必要があるため、名義変更などの手続をしなくてはならないでしょう。また、相続に関して、他の相続人の了承がとれていないと、スムーズにいかない可能性があります。

なお、火災保険の請求をしない場合でも、親が亡くなって住まいを相続したら、火災保険も引き継ぐ必要があります。自動的に継承されたりはしませんので、保険会社に連絡して名義変更を届け出ましょう。これはさほど煩雑な手続ではありません。ただし、積み立て型の火災保険の場合は、満期金が相続財産とみなされるため、他の相続人の同意がいるなど、余分な手続が発生することがあります。

ケース4:親が認知症で、自分では請求できない場合

保険の契約者である親が認知症で、生きてはいるが自分自身で保険金請求できない場合があります。認知症とは言え、生存している限りは、相続人が勝手に手続をすることもできません。この場合は、

  • 成年後見人がいる場合は成年後見人
  • 成年後見人がいない場合は、配偶者または 3親等以内の親族

に、代理で請求が可能とされています。

成年後見人とは、認知症をはじめ、知的障害などにより成人でも判断力が十分でない人が不利益を被ることのないよう、親族などが後見人となって、本人の代理で権利を行使できるように定めた制度です。認知症のケースでは、保険請求に限らず、さまざまな権利上・手続上の問題をスムーズにするため、このような制度を利用すると良いでしょう。

目次