年間25件程度発生する「竜巻被害」は火災保険で補償されるか?

まれに、報道などで竜巻被害が伝えられることがあります。最近では2012年に茨城県を中心とした地域で大規模な竜巻被害があり、死者1名・負傷者約30名という惨事になっています。このときは茨城県・栃木県で、約600棟以上の住宅が損壊したといいます。

竜巻は、積乱雲により強い上昇気流が発生し、地上から上空にかけて、空気が渦を巻く現象です。地上で発生すれば激しく砂塵などを巻き上げ、巻き込まれたものが破壊されるおそれがあります。竜巻の直径は数十メートルが平均的ですが、大きなものは数百メートルから千メートル以上に達するものもあり、その間、積乱雲とともに移動することがあるため、被害は広範囲に及びます。発生して数分から、長くても30分程度で消滅することが多いのですが、自然現象としては非常に危険なものの部類に入るでしょう。

さいわい、日本では竜巻の発生はまれで、発生した場合も規模は大きくありません。海上で発生し、そのまま上陸せずに消えることで、ほとんど被害をもたらさない海上竜巻の割合も多いです。気象庁の統計によると、陸上竜巻の年間発生件数は約25件程度とされています。

※気象庁 竜巻等の突風データベース「年別の発生確認数」
//www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/tornado/stats/annually.html

地域によって発生件数は違いますが、北海道から沖縄まで広く確認されているので、まったく竜巻の心配がない地域というのはありません。日本に住んでいれば、ごく低確率ではありますが、竜巻被害に遭遇する可能性はゼロではないということです。

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竜巻被害は火災保険の「風災」で補償可能

さて、竜巻に遭遇して住まいが被害が受けた場合、火災保険で補償されるでしょうか。竜巻は、火災保険の補償範囲のうち「風災」にあたるものと解釈されるため、風災の補償をつけていれば補償されます。風災は「風災・ひょう災・雪災」というセットで、多くの火災保険で基本補償に含まれていることが多いです。

風災の補償には、損害額が一定以上であることを補償の条件としている場合や、自己負担額(免責額)が設定されている場合があります。たとえば損害額20万円未満の場合は補償されないとか、損害額から所定の自己負担額を差し引いたぶんだけ補償するといった形です。補償の条件や自己負担額の有無には注意しましょう。

補償される場合は、自己負担額を差し引いて全額補償されるので、竜巻の被害に遭っても原状回復の大きな助けになります。

大規模な竜巻被害は公的な支援を受けられる可能性が高い

竜巻の被害は、広範囲に渡る大規模なものになりがちですので、公的機関から支援を受けられる場合があります。代表的なものとして「被災者生活支援制度」があり、これは、自然災害によって住まいを失うなど生活基盤への大きな打撃を受けた世帯に対し、国から支援金を支給するというものです。

被災者生活支援制度の対象は、一定以上に大規模な被害の出た自然災害です。竜巻に限らず、地震や洪水など、大きな自然災害が起きたときに、地域の被害状況を一定の基準にあてはめて、適用するかどうかが判断されます。

冒頭に述べた2012年の竜巻被害にも適用され、茨城県つくば市の103世帯に対して合計1億8,800万円の支援金が支給されています。他にも竜巻被害では、2013年に埼玉県越谷市で起きたものが、この制度の適用となりました。

被害が制度の適用となるかどうは、所定の基準がありますが、10世帯以上が住宅全壊被害を受けていれば適用される可能性が高いです。ただし、ある地域の被害が適用されたとしても、ある世帯が支援金を受けられるかは、その世帯の損害状況によります。対象となるのは以下のとおりです。

  1. 住宅が「全壊」した世帯
  2. 住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
  3. 災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
  4. 住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊)

竜巻の被害が起こり、この制度が適用されることになった場合、上記の被災世帯にあてはまる世帯は、申請することで支援金の給付を受けることができます。もちろん、火災保険の加入の有無は関係しません。

申請窓口はそれぞれの市町村で、罹災証明書などが必要です。罹災証明書も市町村によって発行されますので、まずは役所で相談しましょう。

支給される額は住まいの損害状況に応じて支給される起訴支援金と、住まいの再建方法に応じて支給される加算支援金とがあります。住まいが全壊し、新築する場合は基礎支援金100万円+加算支援金200万円で、合計300万円が受け取れます。

住まいの被害状況支給金額
全壊した100万円
全壊はしなかったがやむなく解体した100万円
長期避難をやむなくされた100万円
大規模半壊の状態50万円
住まいの再建方法支給金額
新たに建設・購入する200万円
補修する100万円
別に家を貸借する50万円

※一度、貸借して、その後、建設・購入または補修する場合は合計 200万円または100万円まで
※単身世帯の場合、基礎支援金・加算支援金ともに、金額は3/4の額
※参考:内閣府 被災者生活再建支援法
//www.bousai.go.jp/taisaku/seikatsusaiken/shien
sya.html

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