火災保険と住まいの損害にまつわる税金まとめ

保険はお金が動くものですので税金が関係してきます。ここでは火災保険に関連する税金についてまとめました。と言っても、生命保険に比べるとさほど難しいものではありません。

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受け取る保険金はすべて非課税

まず、火災保険の保険金を受け取った場合について。生命保険の場合、保険金や満期金などを受け取ると、相続税や所得税などを支払う必要が出てきます。それに対して火災保険は、受け取った保険金はすべて非課税とされています。つまり、税金については何も心配する必要がありません。

これは火災保険の性質を考えれば当然です。実際に発生した損害に対する補償であって、受取人は利益を得ていないわけですから、課税はされません。だからこそ、損害程度の判定や、建物の価値に見合った保険金額の設定など、補償額の決め方・適用の仕方について細々とした仕組みがあるのです。

生命保険の場合、保険料を支払った人と受け取った人の関係によって、課される税金が異なることがあります。たとえば夫が自分自身に死亡保険を掛け、自分で保険料を支払い、その受取人が妻だった場合、保険金は相続財産として相続税が課されます。夫が保険料を支払うけれど、被保険者は妻であり、受取人が子どもであるなどのケースでは、贈与税が課されることになります。

火災保険では、保険料を支払った人と、保険金を受け取る人が別人でも、やはり非課税です。

火災保険の契約では、被保険者は常に建物の所有者であって、保険料の負担者が建物の所有者でなかったとしても、保険金は建物の所有者が受け取ります。子どもが、親の所有である家に火災保険を掛けて、保険料を支払っていても、保険金は親が受け取り、この保険金には課税されません。

支払う保険料に控除はなし

生命保険や個人年金保険では、確定申告や年末調整で、その年に支払った保険料について控除を受け、本来課税される税額を抑えられるチャンスがあります。

対して火災保険では、残念ながらこの仕組みはありません。平成18年までは、生命保険や個人年金保険同様に、損害保険料控除というものがあったのですが、平成19年の法改正で火災保険料の保険料控除はなくなってしまいました。ただし、地震保険料には控除があるため、地震保険に入っていればそのぶんの保険料は控除が可能です。

また、平成18以前に契約した、満期金のある積立型の火災保険については、特別に現在でも控除が可能とされています。

被害を受けた年は雑損控除が利用できる

火災保険の保険料控除はないのですが、実際に火災や自然災害の被害を受け、火災保険を受け取れるような状況にあったときは、雑損控除を利用するといいでしょう。

雑損控除とは、災害などで住まいが被害を受けたとき、損害額に応じて控除が受けられるという仕組みです。火災や自然災害のほか、盗難や横領の被害に遭った場合、ねずみやシロアリなどの獣害・虫害も対象になります。

雑損控除は火災保険とは無関係の制度ですので、火災保険に加入していない人も使えますし、火災保険の保険金を受け取っていなくても問題ありません。むしろ、保険金を受け取っていると、そのぶん損害が補償されているので、控除できる額は少なくなります。

雑損控除の仕組みは次のようなものです。まず、以下の式で「差引損失額」を求めます。

損害金額 + 災害関連支出金額 - 保険金などの補填金額 = 差引損失額

「損害金額」は発生した損害の額です。事業用の資産や一組30万円を超える美術品などは対象に含まれません。「災害関連支出金額」とは、片付け費用や修繕費用などの支出額です。領収証が必要ですので、とっておくのを忘れないようにしたいところです。

差引損失額を求めたら、

  1. 差引損失額-年間所得額×10%
  2. 差引損失額のうち災害関連支出額-5万円

上記のうちどちらか多い方を適用し、確定申告か年末調整で所得から控除します。

なお、雑損控除は3年にわたって繰り越すこともできます。次に述べる災害減免法による措置とは重複できないため、有利なほうを利用しましょう。

災害減免法による減免措置が受けられる場合も

災害減免法とは、自然災害の被害に遭った人に対して、被害程度に応じてその年の所得税を減免することで支援するという法律です。雑損控除とは同時には利用できないので、どちらがより有利か見極める必要があります。災害減免法による減免を受ける場合は確定申告を行います。

雑損控除は虫害や盗難も対象でしたが、災害減免法は、火災のほか、風水害、地震、津波などの自然災害による被害のみが対象になります。そして、保険金などの補填金額などを差し引いた損害額が、時価の1/2以上になった場合のみ、利用することができます。

減免される所得税額は、所得の額に応じて変わります。

所得金額減免される所得税額
500万円以下所得税額の全額
500万円超750万円以下所得税額の1/2
750万円超1,000万円以下所得税額の1/4

上記の通り、所得が1,000万円を超えている場合は減免されません。

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