公的年金の受給資格期間が10年に短縮。私たちの年金プランにどう影響する?

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誰しも年を取れば、若い頃と同じように働いて収入を得ることができなくなります。そのとき、生活の支えとなるのが公的年金制度です。公的年金には老齢年金、遺族年金、障害年金がありますが、老齢年金を受けるには、年金保険料を納付して受給資格期間を満たすことが必要です。

これまでは、老齢年金を受け取るには25年以上の受給資格期間が必要で、25年にたった1か月でも足りなければ、老齢年金を受け取ることができませんでした。しかし、2017年8月から、必要な受給資格期間が10年に短縮されています。この改正で、無年金の人が減り、保険料を納めた分に応じて、年金を受け取ることができるようになりました。


受給資格期間とはどういう期間?

改正によって、老齢年金受給に必要な受給資格期間が25年から10年に短縮なったということですが、この受給資格期間とは、具体的にどのような期間でしょうか。

  • 保険料納付済期間
  • 保険料免除期間
  • 学生納付特例期間・納付猶予期間
  • 合算対象期間(カラ期間)

これらを合計したものが受給資格期間です。主に年金保険料を納付した期間ですが、保険料納付を免除や猶予された期間があれば、それも含めることができます。

合算対象期間には、海外に住んでいた人が任意加入しなかった期間や、国民年金が任意加入だった時期(1986年3月以前)に、専業主婦や学生などが任意加入していなかった期間などがあります。合算対象期間は、受給資格期間の計算には入っても、年金額には反映されないため、「カラ期間」とも呼ばれます。

改正前は、受給資格期間の合計が25年以上必要だったため、例えば20代には「年金は要らない」と考えて国民年金に加入していなかった人が40代になって、「やはり年金を受け取りたい」と考えても、25年の資格期間を満たすことができませんでした。ところが、10年に短縮になったことで、50代からでも年金保険料を納め続ければ、年金を受け取る資格を得られるようになったのです。

もし、60歳になったとき10年に満たなかったとしても、任意加入をして保険料を納め続ければ、受給資格期間を満たすことができます。

受給額は保険料納付済期間に比例する

受給資格期間が10年あれば、老齢年金を受け取ることができるようになりましたが、保険料を10年納めれば、40年間年金保険料を納め続けた人と同じ金額の年金を受け取れるわけではありません。実際に受け取ることができる金額は、保険料を納めた月数をもとに計算されます。免除を受けた期間は免除割合に応じて納付済月数に加算されますが、猶予された期間やカラ期間は、年金受給額に反映されません。

20歳から60歳までの40年間、保険料を納め続けた人は、65歳から年額約78万円の老齢基礎年金を受け取ることができます。でも、保険料納付済期間が10年の人の老齢基礎年金額は、その1/4である年額約19万5,000円ですから、それだけで生活していくのは難しいでしょう。さらに、受給資格期間は10年でも、保険料納付済期間が8年、カラ期間が2年なら、年金受給額はさらに少なくなり、年額約15万6,000円となります。

保険料を納付した年数 老齢基礎年金額(年額) 老齢基礎年金額(月額)
10年   約19万5,000円   約1万6,000円
20年   約39万円   約3万2,000円
30年   約58万5,000円   約4万9,000円
40年   約78万円   約6万5,000円

加入期間が40年に満たない人は、60歳以降も保険料を納めることで、年金額を増やすことができます。60歳以降、厚生年金に加入していない人は、任意加入制度を利用することで、年金額を満額に近づけることができます。また、60歳以降も厚生年金に加入し続けて保険料を納付すれば、任意加入したのと同じように年金額を増やすことができます。

60歳以降も任意加入ができるといっても、保険料は月に1万6,260円(平成30年度)です。5年間、任意加入をすれば100万円近い金額を納めなければなりません。それだけの保険料を納めて、どのくらいの年金額が増えるかというと、5年の任意加入で、年に10万円弱ですから、元が取れるとは限らないと思う人もいるかもしれません。それでも、65歳時の平均余命が、男性19.55年、女性24.38年(厚生労働省「平成28年簡易生命表」より)であることを考えると、生きている限り受け取れる公的年金は、魅力的ではないでしょうか。

遺族年金の受給資格は25年のまま

気を付けておきたいのは、今回の改正で、老齢年金の受給資格期間は10年に短縮されたものの、遺族年金の受給資格期間は25年のまま、変わっていないことです。ですから、今回の改正で老齢年金を受け取ることができるようになった人が亡くなっても、家族は遺族年金を受け取ることができません。ただし、亡くなった人が被保険者であった場合は別です。受給資格期間に関係なく、遺族年金を受け取ることができます。

例を挙げて考えてみましょう。

  • 厚生年金に40年加入して退職、老齢年金を受給中の夫が70歳で死亡した場合には、妻は遺族厚生年金を受け取ることができます。
  • 厚生年金に20年加入して退職、その他に年金加入歴が無い夫が、老齢年金を受給中の70歳で死亡した場合には、妻は遺族厚生年金を受け取ることができません。
  • 厚生年金に15年加入している現役の会社員の夫が35歳で死亡した場合、妻と子(18歳未満)は遺族厚生年金と遺族基礎年金を受け取ることができます。                                        

その他に、1級または2級の障害厚生年金の受給権がある人が亡くなった場合も、受給資格期間と関係なく、家族は遺族年金を受け取ることができます。わが家が遺族年金の対象となるかどうかを調べておきましょう。もし、遺族年金の対象とならない場合は、その分、万一の保障を準備しておく必要があります。

まとめ

「人生100年時代」と言われるようになりました。100歳まで生きることを考えれば、生きている限り受け取ることができる公的年金は、老後のマネープランの強い味方です。でも、公的年金だけで生活していくのは難しいかもしれません。自分が受け取れる年金について知り、老後の生活に足りそうもない分は貯蓄や保険で、賢く備えていきたいものです。

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