「NISA」の積立版となる「積立NISA」が2018年1月からスタートします。 「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と似ていると言われていますが、どう使い分ければいいのか、考えてみたいと思います。
2018年スタートの積立NISAとは
2014年1月に「NISA(少額投資非課税制度)」がスタートして以来、投資の上限額が年100万円→120万円へと拡大したり、ジュニアNISAができたりと、毎年のように動きがありましたが、2018年1月から新たに積立NISAがスタートすることになりました。
NISAでは、株や株式投資信託、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)などへ投資した年120万円(合計600万円)までの元本に対する配当や譲渡益の課税が免除される制度で、非課税期間は5年でした。NISAで投資信託の積立をしている人もいましたが、一般の個人では月10万円の積立枠など使い切れるわけもなく、一方で非課税期間の5年は短すぎる印象でした。こうした利用者の声を拾い上げて作られたのが、積立NISAです。
積立NISAの概要は下表にまとめましたが、対象者は日本に住む20歳以上の人(1月1日時点)で、非課税投資枠は新規投資額で年40万円/年、累積で800万円です。新規投資額では、NISAの1/3ですが、累積では200万円も増えました。非課税期間も最長20年間と、最長5年のNISAに比べてだいぶ長くなっています。
対象となる投資商品も、NISAが株式や投資信託等であるのに対し、積立NISAは信託期間が20年以上の投資信託で、毎月分配型でないなど、長期の分散投資に適したものに限られる見込みです。実際の商品は、金融庁が金融機関などと協議して決めると見られています。非課税制度の期間は2037年までですので、NISAが2023年までであることと比べると長いですね。なお、途中売却も自由です。
大事な点として、口座開設できるのはNISAか積立NISAのいずれか一方のみということ。NISAで株を買っていた人はそのままNISAを使い、そもそもNISAで投資信託を買っていた人や投資未体験者、NISA未体験者は、積立NISAに移行するのではないかと思われます。
対象者 | 日本在住、20歳以上(1月1日時点) |
---|---|
非課税投資枠 | ・新規投資額 年40万円/年 ・累積 800万円 |
非課税期間 | 最長20年間 |
非課税制度の期間 | 2037年まで |
対象商品 | 長期の分散投資に向く投資信託 |
途中売却 | 自由 |
口座開設 | 「NISA」か「積立NISA」いずれか一方のみ |
iDeCoと積立NISAの使い分けは?
積立NISAと比較的似た制度として、既存の仕組みである個人型確定拠出年金(iDeCo)の存在が気になります。”節税メリットのある積立投資の制度”という点では同様の制度に見えなくもありません。(iDeCoについてはこちらの記事をご参考ください → https://hokensc.jp/kojinnenkin/ideco.html)
では、iDeCoと積立NISAは併用すべきものなのでしょうか。あるいは使い分けるべきなのでしょうか。この答えは、二者の違いを理解すれば、おのずと答えが出ます。違いが明確に分かるような表を作成しましたのでご覧ください。
iDeCo | 積立NISA | |
---|---|---|
掛金の所得控除 | ○ | × |
途中売却・引出し | × 原則60歳まで不可 | ○ |
運用期間 | 原則60歳まで | 20年間 |
運用益等への課税 | なし | なし |
受取り時の課税 | 受取方法で異なるが税制優遇あり | なし |
投資目的 | 老後資金 | 教育資金、住宅資金、老後資金、その他 |
iDeCoは、掛金が所得控除の対象になる点が大きな特長で、受取時にも受取方によって税制優遇があります。また、原則60歳までは引き出せないため、老後資金準備の専用商品と言えます。
一方、積立NISAは、配当や運用益が非課税になるのが大きな特長。運用期間が20年で、途中で売買して取り出すのも自由なため、老後資金にとどまらず、教育資金や住宅取得資金、その他の目的に使えます。
このことから、タイプによって次のように分けられます。
所得控除を受けられる人の場合
所得控除を受けることにメリットがある人、つまり所得があって節税効果が大きい人は、何はともあれiDeCoを選ぶか、あるいは余力があるならiDeCo+積立NISAを利用するのがいいでしょう。高所得で所得税率が高ければ高いほど効果は大きくなります。
所得控除を受けられない人の場合
たとえば、夫の扶養になっている専業主婦の場合、掛金に対する所得控除のメリットはありません。そのため、目的で選ぶといいでしょう。老後資金のための積立ならiDeCoまたは積立NISA(余力があれば両方)、教育資金や住宅取得資金であるなら積立NISAを優先させましょう。
所得控除より教育資金や住宅取得資金が重要な人の場合
所得控除を受けるメリットがあり、老後資金準備の必要性を理解していても、優先順位がマイホームや教育資金にある場合は、積立NISAを優先させるのも致し方ないでしょう。しかし、いずれは老後資金用に少額でもiDeCoも始めたいものです。