「貯蓄性のある保険」の中で終身保険はどの程度有利?

終身保険は貯蓄性の高い保険として、死亡保障に加えてお金を貯める目的でも利用される商品です。

貯蓄目的で使える保険は、ほかに、学資保険、個人年金保険などがありますが、これらの保険が優れているか否かは、払い込んだ保険料の総額に対して受け取れる保険金(満期保険金や一時金)の割合がモノを言います。この割合を「返戻率」と呼びます。総額100万円の払込保険料に対し、110万円が戻ってきたら返戻率110%、120万円が戻ってきたら返戻率120%です。

目次

終身保険にみられる貯蓄性と柔軟性

終身保険と、学資保険、個人年金保険との主な違いをまとめると次のようになります。

保険の種類保険期間給付金の受け取り方税金の控除
終身保険終身被保険者が死亡した場合、死亡保険金が給付生命保険料控除
学資保険定期所定の時期に祝い金などが、満期時に満期金が給付生命保険料控除
個人年金保険定期所定の期間、年金が給付個人年金保険料控除

それぞれ、死亡保障、子どもの教育資金づくり、老後の資金づくりといった目的をもちますが、注目したいのは保険期間。終身保険は文字通り「終身」なので、死ぬまで入り続けることができます。つまり、満期に縛られません。保障の趣旨に沿った受け取り時期が設定されている学資保険、個人年金保険に対し、終身保険は、解約してはじめて返戻金が受け取れるのです。言い換えれば、終身保険だけが、お金を受け取る時期を好きに選べるということです。

そして、受け取り時期を据え置いている間、保険会社はその資金を運用しているわけですから、より多くの返戻金を受け取ることができます。同じ払込期間なら、終身保険より個人年金保険の方が高返戻率であることが多いのですが、据え置くことで追い越しも可能です。

以上から、学資金や老齢年金などのように、必要になる時期が決まっている場合はともかく、もっと漠然とお金を貯めたい場合は終身保険の方が柔軟性があり、なおかつ高返戻率も狙えると言えるでしょう。

返戻率で比べると、有利なのはどれ?

説明したとおり、終身保険の解約返戻金は、払込期間終了後、解約せずに置いておく期間が長くなるほど、返戻金額は増えていきます。払込期間終了直後の解約返戻金額の返戻率は、100~110%の間くらいですが、据え置くことでさらに上を目指せます。

いくつかの終身保険で、返戻金の変化を調べてみました。

商品試算条件払込期間終了直後の返戻率払込期間終了5年後の返戻率
アクサダイレクト生命 カチッと終身保険30歳男性、保険料払込期間55歳、死亡保険金額300万円の場合110.3%116.0%
アフラック WAYS30歳男性、保険料払込期間60歳、死亡保険金額1,000万円の場合107.8%112.2%
住友生命 バラ色人生30歳男性、保険料払込期間60歳、死亡保険金額490万円の場合107.4%112.1%

30年程度の払込期間で、107~110%程度、そこから5年据え置くことで、112~116%程度に増しました。

比較のために、学資保険と個人年金保険の返戻率を見てみましょう。

商品試算条件返戻率

ソニー生命 学資保険

プランII型。男性30歳、子ども(男の子)0歳。17歳払済・20歳満期の場合112.9%

フコク生命 みらいのつばさ

ジャンプ型。30歳男性、子ども(男の子)0歳。17歳払済・22歳満期の場合110.1%

アフラック 夢見るこどもの学資保険

30歳男性、子ども(男の子)0歳。18歳払済・22歳満期の場合105.2%

学資保険の返戻率は、払込期間が異なる(学資保険は長くて22年)ものの、数値的には終身保険とそう変わらない水準です。据え置きすることで、終身保険の方が高い返戻率になることが多いでしょう。

商品試算条件返戻率

明治安田生命 年金ひとすじワイド

35歳男性。65歳払済。10年確定年金の場合119.4%

東京海上日動あんしん生命 個人年金保険

30歳男性。60歳払済。10年確定年金の場合119.2%

住友生命 たのしみワンダフル

30歳男性。60歳払済。10年確定年金の場合117.9%

個人年金保険は、終身保険よりも返戻率が高い傾向にあります。。終身保険の返戻率が個人年金保険の水準に達するには、払済後10年以上は据え置かないと難しそうです。

以上を総合して考えると、返戻率からして、学資保険は終身保険で代用してもよさそうだと言えます。個人年金保険は、同じ払込み期間であれば、払い済み後すぐに給付を受ける終身保険よりも返戻率は高くなりそうです。

返戻率に翻弄されてはいけない?

では、貯蓄性の保険は個人年金保険がもっとも有利と言えるのでしょうか?

返戻率だけを見ればそうかもしれませんが、終身保険は前述のように、払済後の据え置き作戦で、さらに高い返戻金を得ることができます。また、最近の主流である低解約返戻金型終身保険は、もし払済前に途中解約をすると、大幅に返戻金額が下がり、元本割れを起こすという特徴があります。

中途解約で損をするのは学資保険でも個人年金保険でも同じですが、低解約返戻金型ほどではないので、「中途解約は絶対にしない」という自信がない場合は、終身保険は避けた方が無難かもしれません。

また、返戻率的に有利でないように見える学資保険も、個人年金保険が、払済後の給付開始まで一切お金を受け取れないのに対して、途中で祝い金などを受け取れるメリットがあります。

そして終身保険には、本来の目的である死亡保障があり、被保険者に万一のことが起こった場合は多額の保険金が給付されます。亡くなっているので損も得もないのですが、金額だけでいうなら、終身保険の死亡保険金がある意味、いちばんトクをすると言えます。

家族に対する死亡保障が必要な人で、貯蓄とは別に死亡保障を用意できればいいのですが、それが難しい場合、たとえば個人年金保険(貯めるため)+収入保障保険(万一の場合の保障)という保険の入り方が(保険料を支払う余裕などがなくて)難しいときは、終身保険に入っておくことで、解決できます。

このように、それぞれの保険には適したシチュエーションがあり、それに付随するメリット・デメリットがあります。高い返戻率の商品は魅力的ですが、それ以外の要素にも少なからず目を向けましょう。

まとめ:貯蓄のために終身保険を使うメリット・デメリット

メリット

  • 満期がなく、払済後は好きなタイミングでお金を受け取れる
  • 払済後に解約せずに置いておくと返戻率が上がっていく
  • 万一の場合に手厚い死亡保障がある

デメリット

  • 一部の個人年金保険などに返戻率で負ける場合がある
  • もし途中解約してしまった場合の損する度合いが大きい
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