医療保険のパンフレットの読み方
医療保険は、保障内容が複雑な商品も多く、商品ごとの違いが大きい保険です。各社の保険商品を比較するために、パンフレットのどの部分をチェックすればよいかを図解入りでわかりやすく紹介します。
まずはパンフレットをお手元に用意しましょう
①保険会社はパンフレットを無料で提供しています
多くの保険会社は、ご契約の前に保障内容をしっかりと理解してほしいとの思いから、パンフレットを無料で提供しています。
②なぜパンフレットを請求したほうがいいの?
医療保険は商品ごとに特徴が異なります。自分に合った保険を選ぶために、パンフレットを見るのがとても役立ちます。
保険会社の人に話を聞く前に、いくつかの商品を比較しながら、自分が気になる点をチェックしましょう。
③商品がたくさんあるけど、どれを請求すればいいの?
保険の比較対象は2~3社に絞り込むのが適切です。保険ソクラテスでは、ファイナンシャルプランナーの方の意見を参考に「最新の医療保険ランキング」を紹介しています。
パンフレット(資料)の請求もできますので、上位のもの+自分が気になった商品を2~3社ピックアップして、資料をお取り寄せください。
入院、手術、外来、先進医療など、医療保険にはさまざまな給付金が用意されており、それゆえにチェックポイントも多めです。
しかし、難しい項目はないのでご安心ください。これから紹介するポイントを拾って読みすすめていけば、ご検討中の保険の全貌が見えてくるはずです。
■医療保険のパンフレット例(イメージ)
(1)まずは保障内容のラインナップを確認
多くのパンフレットでは、冒頭で給付金のラインナップがまとめられています。各社によってさまざまではあるものの、ざっくり分類すると次のようになります。
- 入院費用を保障するもの
- 手術費用を保障するもの
- 通院費用を保障するもの
- 先進医療にかかる費用を保障するもの
- 特定の疾
病にかかる費用を保障するもの
現状では、医療保険の主役(主契約)のほとんどは入院費用を保障する給付金です。手術費用を保障する給付金もセットで主役なことが多いですが、オプション(特約)になっている保険もあります。
「特定の疾病にかかる費用を保障するもの」とは、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)を保障する給付金であったり、女性特有の疾病を保障する給付金であったり。その種類は多岐にわたり、その保険の個性が出るところでもあります。
どの保障が主役で、どの保障が脇を固めるものなのか? 保障のラインナップを眺めることで、その保険の特徴を読み取りやすくなります。
(2)各給付金の決まりや条件の確認
全体像の確認が終わったら、主契約と気になる特約の特徴を確認しましょう。ここで大切なのは、その保障の給付条件やルールです。
たとえば手術を保障する給付金は、名称は同じ「手術給付金」でも、各社・商品が違えば対象疾患や給付のされ方が異なることがあります。
給付金はどのように支払われる?よく見かける4つの特徴
給付金のタイプは大まかに4種類あります。
(1)支払条件を満たした日数や回数に応じて支払われる「日額・回数タイプ」
(2)支払条件を満たした段階で一律または一括で支払われる「一時金タイプ」
(3)治療内容の種類に応じて給付金が支払われる「変動タイプ」
(4)かかった医療費の分だけ支払われる「実損てん補タイプ」
(1)日数・回数タイプ
日数・回数タイプで代表的なものは「入院給付金」です。「入院給付金日額」という用語が出てきたら「入院1日あたりの給付金額を示すもの」と思ってください。5,000円~1万円が相場です。
(2)一時金タイプ
入院した時点でまとまった金額が支払われるタイプもあります。これを「一時金」と呼び、最近は入院日数が短縮化していることから、取り入れる保険会社も増えてきました。一時金の範囲は幅広く、5万円~20万円などバリエーションがあります。
もちろん、一時金は入院保障の他にもあり、代表的なものに、がんと診断確定されたら受け取れる「診断一時金」があります。
(3)変動タイプ
変動タイプの代表は手術給付金です。手術の種類に応じて給付金額が変動するタイプ(主に入院給付金日額×10倍・20倍・40倍)のほか、入院を伴う手術か、日帰り手術かによって変動するタイプなどがあります。
(4)実損てん補タイプ
実損てん補タイプは、入院費も手術費もその他の治療も引っくるめ、病院に支払った医療費分だけを補填してくれるものです。もちろん上限や条件はありますが、その他のタイプでは必ずつきまとう「◯◯はいくらの保障にしようか?」という悩みから解放されます。
(2-1)絶対に見落としてはいけない支払条件
どんなに手厚い保障でも、支払条件が厳しければ魅力が薄れてしまいます。医療保険ならではの支払条件や支払制限もありますので、見落としがちなポイントをおさえていきましょう。
日額タイプにある「支払限度日数」を確認!
入院給付金が日額タイプの場合、その「支払限度日数」が記載してあるはずです。主流なのは60日や120日。平均入院日数の短期化を背景に30日の保険も登場しています。
入院日数が短かくなっているとはいえ、入院が長期化しやすい病気もあるため、支払限度日数は長いに越したことはありません。しかし、支払限度日数が長いもの、具体的には180日以上の医療保険はそもそも数が少なく、また保険料も割高になることから、どちらが優れているかは価値観によって分かれるところです。
なお、特定の疾3に限って支払限度日数が延長されたり、「無制限」になる保険や特約もあります。
一時金タイプの回数制限は何回まで?!
一時金タイプには回数制限が設けてある場合があります。パターンとしては次の4つです。
1,2,4は、見たとおりです。3の「支払条件を満たしての複数回」は、がん保障の給付金によく見られ、「2年に1回を限度」等と記載してあります。
なお、ケース・バイ・ケースではありますが、回数制限が少ないからダメという訳ではありません。仕組み的には複数回、受け取れる給付金でも、支払条件のハードルが高ければ良さが薄れます。
「1回の入院」のルールはどうなってる?!
入院給付金関連の説明欄に、「1入院」や「1回の入院」という言葉がないか探してください。これは、前回の退院から180日以内に再入院した人を「新しい入院」だとみなすか、「前回の入院の続き」だとみなすかを定めた、とても重要な説明です。
各社、共通しているのは次の2パターンです。
- 病気Aで入院・退院したが、病気Aが再発。180日以内に再入院した(=1回の入院)
- 病気Aで入院・退院したが、病気Aと相関のある病気Bが発症。180日以内に再入院した(=1回の入院)
定義が分かれるのは次、
- 病気Aで入院・退院したが、今度は病気Cにかかり、180日以内に再入院した(=その商品による)
前回の入院理由と原因が違うのですから、「新しい入院」として扱ってほしいところですが、原因の有無を問わず「1回の入院」だとみなされる保険もあります。ということは、支払限度日数のカウントも前回の終わりから数えるということです。
通院給付金は「入院前」「入院後」という言葉を探す!
通院にかかわる保障も追加したい場合は、「入院前」「入院後」という言葉がポイントになります。多くの通院給付金は入院を伴う通院を支払条件としており、その入院の前後何日間を保障対象とするかは商品によってさまざまだからです。
そうしてチェックしてみると、「入院後180日以内の通院」や「入院前の60日以内、入院後120日以内の通院」など、保障対象となる通院を説明している文言が見つかるはずです。支払条件のハードルは低ければ低いほどいいので、「入院後」なのか「入院の前後」なのか、そしてそこに関わる日数は何日なのかをチェックしてください。
「所定の状態」は必ず確認すべし!
パンフレットを見ていると必ず出てくる支払条件に「当社所定の状態を満たした場合」等と書かれたものがあります。要するに、たとえ保障対象の疾病にかかっても、保険会社が定める状態にならないと給付金は払いませんよ、ということですので、絶対に読み飛ばしてはいけません。
「当社所定の状態」とはどんな状態なのか? そのハードルは高いのか、低いのか? 複数の保険で迷っているなら、A社とB社とではどう違うのか?など、必ず確認しておきたいものです。
三大(特定)疾病への保障や、保険料の払込を免除する特約など、比較的重要な保障の周りで見かける文言なので、本当に重要です。自分で判断するのが難しければ、保険相談を専門とするプロに相談するのも一手です。
(3)保険期間(定期/終身)を確認する
医療保険に限ったことではありませんが、保障期間には「終身」と「定期」の2タイプがあります。
終身タイプは保障が一生涯き、保険料は契約時から変わりません。一方、定期タイプは期限付きの保障で、それを超えて継続しようとすると保険料が再計算されます(医療保険の場合は保険料が上がります)。
先進医療特約は「更新型」?
少々ややこしいのは、主契約は終身タイプなのに、特約は定期タイプという保険があります。先進医療特約はその代表的な保障で、終身タイプのものもありますが、10年更新型のものも少なくありません。
月払100円程度という割安な保障ではありますが、保険料にかかわることですので、念のため確認しておくようにしましょう。
その他のチェックポイント
その他、念のため確認しておきたいことを押さえておきます。
保険料払込免除特約の仕組みについて
保険会社が定める「所定の状態」(また出ましたね!)になれば、「以降の保険料を支払わなくてよくなる」仕組みがあります。ほとんどの医療保険の特約にあり、三大疾病のような重い症状になったときを「所定の状態」としていることが多いです。
払込免除特約を付けたほうが気持ち的には安心だと思いますが、その分、保険料が少し上がります。
健康増進型保険の仕組みについて
健康増進型保険とは、保険に加入する方の「健康状態」や、健康への「取り組み」に焦点を当てた保険です。各社でいろんな特徴がありますが、現在、販売されている商品は大きく分けると次の2つです。
- 加入時に健康なら保険料を割り引かれる
- 健康に向けてのアクションを起こすと保険料の一部がキャッシュバック
前の項目でチェックした支払条件と同じく、この保険も「健康だと認められる状態」や「健康だと認められる行動」など諸条件の確認が大切です。また、健康状態を計測するにはウェアラブル端末が必要なのか、スマートフォンアプリだけでも可能なのかも、チェックポイントになると思います。
付帯サービス
保険会社によって、医療保険の契約者向けの医療相談サービスや、セカンドオピニオンの医療機関を紹介してくれるサービスを提供していることがあります。基本的に費用は無料ですので、せっかくその保険に入るなら積極的に利用したいサービスです。
付帯サービスはあくまでも「おまけ」のようなもので、商品選びの主軸にはなりません。しかし、いくつかの商品で迷ったとき、付帯サービスの充実度に目を向けて考えることもできますので、参考までにチェックしておくといいでしょう。
医療保険のパンフレットでよく見かけるこんなワード
さいごに、医療保険で頻出するお決まりのワードをご紹介します。これらは、基本的にはありふれた文言であり、見かけたとしても特に反応する必要が薄いものです。
「通算1095日まで保障!」
入院給付金の支払限度日数の通算は、ほとんどの医療保険が1095日です。1000日のものもありますが、「1回の入院の支払限度日数」は60日までが主流ですので、大差はありません。
「日帰り入院から保障!」
同じく、最近の医療保険は日帰り入院から保障してくれるものが主流です。「日帰り入院から保障」という言葉よりも、日帰り入院とはどんな入院のことかの説明を読むほうが大切です。
「先進医療にかかる技術料を2,000万円まで保障!」
先進医療を保障する特約も、最近の新商品は2,000万円までがほとんどで、注目に値するワードとは言えません。
「手術給付金の対象手術は約1000種類!」
1000という数字にインパクトがありますが、これも各社が採用している手術対象の基準です。ちなみに、これが強調されるのは、かつて主流だった対象手術が88種類だったためだと思われます。