個人年金保険のパンフレットの読み方
個人年金保険で老後資金を準備するには、まず、商品をしっかり比較して選ぶことが大切です。各社の保険商品を比較するために、パンフレットのどの部分をチェックすればよいかを図解入りでわかりやすく紹介します。
まずはパンフレットをお手元に用意しましょう
①保険会社はパンフレットを無料で提供しています
多くの保険会社は、ご契約の前に保障内容をしっかりと理解してほしいとの思いから、パンフレットを無料で提供しています。
②なぜパンフレットを請求したほうがいいの?
個人年金保険は商品ごとに特徴が異なります。自分に合った保険を選ぶために、パンフレットを見るのがとても役立ちます。
保険会社の人に話を聞く前に、いくつかの商品を比較しながら、自分が気になる点をチェックしましょう。
③商品がたくさんあるけど、どれを請求すればいいの?
保険の比較対象は2~3社に絞り込むのが適切です。保険ソクラテスでは、ファイナンシャルプランナーの方の意見を参考に「最新の個人年金保険ランキング」を紹介しています。
パンフレット(資料)の請求もできますので、上位のもの+自分が気になった商品を2~3社ピックアップして、資料をお取り寄せください。
個人年金保険は、保険商品としては、さほど複雑なものではありません。ざっくり言うと「保険料を払い続けると、将来、支払った額に少しプラスされた額の年金が受け取れるようになる」という仕組みです。ただ、この仕組みには、いくつかのタイプ、パターンがありますので、その商品はどういうタイプの個人年金保険なのかを理解することが大切です。
■個人年金保険のパンフレット例(イメージ)
パンフレットは、上のイメージ図にあるような、商品内容をあらわした図が掲載されていると思います。この図は、たしかに商品内容をあらわしてはいるのですが、図を眺めているだけでは、意味がよくわからないと思います。なので、図についてはあまり気にしないことにしましょう。それよりも、次の5つのポイントに沿って、内容を確認してください。
(1)どれだけの期間受け取れる年金か?を確認
個人年金保険に関して、最初に確認すべきポイントが、「年金の種類」です。つまり「その年金はいつまで、どのような形でもらえるの?」ということです。これは、大きく分けて3種類あります。
- 終身年金
- 有期年金
- 確定年金
終身年金
生きている限り、ずっともらえる年金です。
有期年金
決まった期間(5年間・10年間など)だけもらえる年金です。ただし、もらっている途中で亡くなった場合は、そこで終了です。
確定年金
決まった期間(5年間・10年間など)だけもらえる年金です。有期年金と違って、もらっている途中で亡くなった場合も、決まった期間もらえます(遺族が受け取ります)。
これら年金の種類は、同じ商品でも、プランによって異なる(つまり、選べる)ことがあります。ですので、資料を見るうえで大切なのは、どんな選択肢があるのか(どんな受け取り方ができるのか)ということでしょう。
年金の種類のあとにカッコで年数が書いている場合は、受け取れる期間か、次の項目で説明する「保証期間」を指しています。たとえば「確定年金(5年または10年)」と書いてあれば、年金の種類は確定年金で、その期間は5年か10年を選べるということです。
夫婦年金って?
少しレアなタイプですが、「夫婦年金」と書かれている商品があるかもしれません。これは、終身年金の一種ですが、夫婦で加入し、夫婦どちらかが生きている限り年金がもらえるというものです。
「一括でも受け取れます」
個人年金保険の保険金は、年金形式(定期的に受け取る)のほかに、一時金形式(一括で受け取る)もあります。受け取り方(プラン)の一種として選べるのが一般的です。単にそういう仕組みがあるというだけのことですので、「そうなんだ~」と思っておけばOKです。なお、一時金で受け取ると、年金で受け取るより、受取総額は低くなります。
(2)「保証期間」があるのか?を確認
保証期間とは「受取期間中に契約者が亡くなっても年金が支払われる期間」のことです。保証期間は終身年金と有期年金に付いていることがあります(確定年金はもともと、受取期間中に契約者が亡くなっていても決まった期間は受け取れるので、保証期間という仕組みはありません)。
保証期間があるかどうかは、年金の種類に「保証期間付〇〇年金」などと書かれているので見分けられます。
たとえば「保証期間付終身年金(10年)」と書いてあれば、保証期間のある終身年金ということです。この商品は終身年金なので、生きている限り年金が受け取れますが、受取開始から10年未満で亡くなってしまっても、受取開始後10年の間は(遺族が)受け取れるという年金です。この場合、受取開始後5年で亡くなっても、残り5年間は年金支給が続くということですね。
(3)「変額年金」かどうか?を確認する
商品の正式名称を確認しましょう。表紙に大きく書かれている名前はペットネームとも呼ばれる愛称のような名称です。正式な名称はその下や、表紙の隅に小さく書かれていることが多いです。あるいは最後のページの、商品概要をまとめた箇所に書かれているかもしれません。たとえば、次のような感じのものです。
- 無配当個人年金保険
- 5年ごと利差配当付き個人年金保険
- 変額個人年金保険(無配当)
正式名称に「変額」という言葉が入っているかどうか確認してください。上の例でいうと、いちばん最後の商品がそうですね。これは変額年金という商品で、簡単に言うと「受け取れる年金額が変動する」というものです。
変額年金は、支払った保険料が、投資信託などで運用され、うまくいけば高利率で年金を受け取れる一方、うまくいかなければ、思ったほどの成果が出ません。つまり、リスク(変動幅)のある商品ということです。変額年金は、受け取れる額が決まっている個人年金保険とは、根本的に性格の違う商品なので、仕組みを理解せずに契約すべきではありません。
変額年金がいけないということではないのです。変額年金であることを知らずに契約してしまうと、将来、「こんなはずではなかった」と思ってしまう結果になりかねないので、きちんと確認しておきましょう、ということです。わかったうえで選ぶのは問題ありません。
(4)「外貨建て」か「円建て」か?を確認する
外貨建ての個人年金保険とは、支払った保険料が外貨で運用されるものをいいます。外貨の高金利を活かして、高い利率が期待できます。外貨建てかどうかは、だいたい、パンフレット全体で大きくアピールされていることが多いですから勘違いすることはあまりないでしょう。イメージで言えば、表紙などに海外の写真が載っていることが多いです。「米ドル」「豪ドル」など通貨の名称が出てくることも多いでしょう。
外貨建ての個人年金保険には、為替変動のリスクがあり、円建てよりもコストがかかるという特徴があります。変額保険と同じく、一概に良い悪いではなく、外貨建てだとわかったうえで選ぶことが大切です。
外貨建てと書かれていなければ、それは円建て、つまり日本円で運用される保険です。円建て保険はわざわざそうとは書かれていませんので、見方のポイントは「外貨建て」と書いてあるかどうかになります。
(5)結局、いくら支払って、いくら受け取れるのか?を確認
最後に、もっとも重要なポイントが、「結局、いくら支払って、いくら受け取れるのか?」ということでしょう。個人年金に加入する目的が、老後にお金を受け取るということですから、どれくらいもらえるのかがいちばん大切ですよね。
これは、パンフレットでは、受け取り例・プラン例などとして、例が掲載されていると思います。例から次のことを読み取ってください。
- 総額でいくら払い込んだのか
- 総額でいくら受け取ったのか
- 返戻率(受取総額÷払込総額×100)はいくらか
毎月1万円の保険料で20年間の保険料払込期間だったのなら、1万円×12ヵ月×20年=240万円です。この例で、年額60万円の年金を5年間受け取ったのなら、受取総額は60万円×5年間=300万円です。払込総額が240万円で、受取総額が300万円ですから、300万円÷240万円×100=125%が返戻率となります。
いくつかの商品を比較検討する場合は、この返戻率を計算して、高いものを選ぶことになります。
ただし、商品が変額保険か外貨建ての場合は、パンフレットに書かれているのは、相場の変動を仮定したうえでの例になります。つまり、実際にどうなるかは予測できないものですので、書かれている例をそのまま信じてはいけません。
そのとおりになることもありますが、ならないこともあります。パンフレットには「うまくいった場合」がアピールされていることが多いのですが、「それほどうまくいかなかった場合」のことも考慮しましょう。
「最低保証」に注目!
変額保険や外貨建て保険には、予想よりも運用がうまくいかなかった場合に備えて、受け取れる年金額や利率に、最低保証が設けられていることがあります。「最低保証」という言葉を探してみましょう。最低保証額または最低保証利率では、どれくらいの返戻率になるのかを確かめたうえで、検討してください。
「1万円からはじめられます!」
個人年金保険のパンフレットによくある表現として「1万円からはじめられます!」といったものがあります。これは、月々の払込保険料を最低1万円から契約できるという意味です。たしかに、月1万円なら気軽にはじめられますが、大事なのは、それが最終的にいくらの年金になるのかというところ。つまり返戻率です。
「1万円からはじめられます!」には、はじめやすいという以上の意味はないことを理解しておきましょう。
そのほか、知っておくとよい用語集
ここまで解説した5つのポイントをチェックすれば、個人年金保険についてはその輪郭を掴むことができます。
それだけでも十分だと思いますが、以下に、個人年金保険のパンフレットに出てくることが多い用語について、簡単に解説をつけました。パンフレットを読んでいて、「これって何のこと?」と思ったら参照してください。
配当
配当とは、契約者が支払った保険料をもとにした保険会社の利益が、予想より多かった場合、利益の一部を契約者に還元することです。個人年金保険の場合、年金原資にプラスされるのが一般的です。商品によって配当ありのものと、なしのものがあります。配当ありの商品でも、予想以上の利益が出なければ配当はありません。「5年ごと利差配当付き個人年金保険」は、5年ごとに(あれば)配当が出る保険という意味です。
年金原資
将来、契約者が受け取ることになる年金のもとになるお金のことです。契約者が今までに払い込んだ保険料から保険会社の経費を差し引き、配当があれば加えたものが年金原資になります。
据置期間
保険料払込期間が終わったあと、年金受取開始までの期間が据置期間です。たとえば60歳払込済で年金が65歳支払開始の場合、61歳~65歳になるまでの期間が据置期間になります。据置期間が長いほど、返戻率は高くなるのが一般的です。
増額年金・増加年金
総額年金とは、配当が加わることで、受け取る年金額が増額されたぶんをいいます。
増加年金は、保険料払込期間が終わったあとに、年金原資が運用されることで年金額が増加したもののことです。
死亡給付金
契約者が亡くなった場合、支払われるお金のことです。通常は、払込期間中・据置期間中の死亡の場合、それまでの保険料積立額が死亡給付金になります。
特別勘定
変額年金の場合で、払い込んだ保険料のうち、より積極的に運用するために分けた部分のことをいいます。基本的に投資信託で運用され、契約者が運用する投資信託を選べるものもあります。
個人年金保険料控除について
最後に、個人年金保険料控除について、確認しておきましょう。個人年金保険料控除とは、個人年金保険に払い込んだ保険料の一部を所得から差し引くことができ、結果として所得税・住民税が軽減される制度です。個人年金保険は、一定の条件を満たす商品・プランであれば、個人年金保険料控除適格特約という特約がつき、個人年金保険料控除を利用することができるようになります。
この条件は以下のとおりです。
- 年金を受け取るのが、保険料を払う人本人か、その配偶者であること
- 受取人が被保険者であること
- 保険料を払う期間が10年以上であること
- 確定年金の場合、年金の受取開始時は60歳以降で、受取期間は10年以上であること
これは税制上決まっている条件ですので、どの保険会社のどの商品であっても、上記の条件を満たせば個人年金保険料控除適格特約がつけられます。パンフレットを見るときに知っておきたいのは、どのプランならこの条件を満たせるのか、という点です。だいたい、パンフレットにも記載があることが多いので、チェックしてみましょう。