生命保険(死亡保険)のパンフレットの読み方
家族に万一のことがあったときに備える死亡保険は、生命保険の代表的なものと言えます。数多くの商品がありますが、各社の商品を比較するために、パンフレットのどの部分をチェックすればよいかを図解入りでわかりやすく紹介します。
まずはパンフレットをお手元に用意しましょう
①保険会社はパンフレットを無料で提供しています
多くの保険会社は、ご契約の前に保障内容をしっかりと理解してほしいとの思いから、パンフレットを無料で提供しています。
②なぜパンフレットを請求したほうがいいの?
生命保険は商品ごとに特徴が異なります。自分に合った保険を選ぶために、パンフレットを見るのがとても役立ちます。
保険会社の人に話を聞く前に、いくつかの商品を比較しながら、自分が気になる点をチェックしましょう。
③商品がたくさんあるけど、どれを請求すればいいの?
保険の比較対象は2~3社に絞り込むのが適切です。保険ソクラテスでは、ファイナンシャルプランナーの方の意見を参考に「最新の生命保険ランキング」を紹介しています。
パンフレット(資料)の請求もできますので、上位のもの+自分が気になった商品を2~3社ピックアップして、資料をお取り寄せください。
死亡保険の仕組みを、ごく単純に説明すると、「被保険者(保険の対象になっている人)が亡くなったら、保険金が支払われる」というものです。この基本的な仕組みに加えて、関係するいろいろな要素を理解する必要があります。商品パンフレットから、必要な情報を読み取る方法を、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。
■死亡保険のパンフレット例(イメージ)
(1)死亡保険のタイプを確認する
死亡保険は大きく4つのタイプがあります。まずは、その保険がどれにあたるのかを理解しましょう。おもには商品の正式名称を確認することで知ることができます。
表紙に大きく書かれている名前はペットネームとも呼ばれる愛称のような名称です。正式な名称はその下や、表紙の隅に小さく書かれていることが多いです。あるいは最後のページの、商品概要をまとめた箇所に書かれているかもしれません。たとえば、次のような感じのものです。
- ・無配当定期保険
- ・5年ごと配当付終身保険
- ・無配当収入保障保険
終身保険
(図)
正式名称に「終身保険」とあれば、それは終身タイプの死亡保険=終身保険です。死亡保険に限らず「終身タイプの保険」は存在しますが、普通は単に終身保険と言った場合、終身タイプの死亡保険を指します。
終身タイプの保険とは保険期間が決まっておらず、被保険者が生きている限り保険契約が続くものを言います。
人はいつか必ず亡くなりますので、終身保険は死亡保険金が支払われることが確実です。そのために保険会社はお金を準備しているので、原則として、途中で解約した場合も、それまでに準備されたお金である「解約返戻金」を受け取れます。
なお、正式名称が「積立終身保険」「変額終身保険」といった言葉を含んでいる場合、それは終身保険でも少し性質が違います。詳しくはのちほど解説しますが、一般的な終身保険とは分けて考えたほうがいいでしょう。
定期保険
(図)
正式名称に「定期保険」とあれば、それは定期タイプの死亡保険=定期保険です。死亡保険に限らず「定期タイプの保険」は存在しますが、普通は単に定期保険と言った場合、定期タイプの死亡保険を指します。
定期タイプの保険とは保険期間が決まっているもののことです。このことを「満期がある」とも言います。
被保険者が亡くなることなく満期を迎えた場合、保険契約を更新して続けるか、終了するかを選ぶことになります。契約を修了する場合、解約返戻金は受け取れないことが普通です。つまり、いわゆる「掛け捨て」タイプの保険です。
定期保険に継続して加入する場合、保険期間ごとに「更新」が必要です。ほとんどの場合、更新のたびに保険料は上がっていくことになりますので、何年で更新になる保険なのか、保険期間を確認しておきましょう。
養老保険
(図)
正式名称に「養老保険」とあるものです。養老保険とは、定期保険のように保険期間が決まっていて、満期で契約を修了したときに満期金が受け取れるという死亡保険です。
収入保障保険
(図)
正式名称に「収入保障保険」とあることが多い商品です。収入保障保険は定期保険の一種なのですが、死亡保険金を年金形式で受け取れるものを指します。
例を挙げると、定期保険の場合、その保障内容は、被保険者(保険の対象になっている人)が亡くなったら「死亡保険金3000万円」が受け取れる、というようなものになっていると思います(「3000万円」というのは例であって、金額は自由に決められます)。それに対して、収入保障保険の場合、被保険者が亡くなったら、「以後の10年間、毎月20万円が受け取れる」といった内容になります。
その他の死亡保険
他にも、いくつかタイプの異なる死亡保険があります。比較的、よく見かけるものを列挙して補足しておきます。
定期特約付終身保険
終身保険が主契約で、定期保険を特約としてプラスしたもの(※主契約/特約についてはこちらを参照)を言います。終身の保障を確保しながら、一時期だけ保障を厚くしたいというニーズに応えるものです。
利率変動型積立終身保険
主契約が積立であり、そこにさまざまな保障機能を特約としてプラスする(※主契約/特約についてはこちらを参照)ことで、保障内容をカスタマイズできるパッケージ商品のような保険です。アカウント型保険と呼ばれることもあります。
なお、「利率変動型終身保険」と、「積立」が入らない名称のものは、払い込んだ保険料を保険会社が運用する際の利率が変動する商品を指し、最近は外貨建て保険であることが多いです。
変額保険
保険金額が一定でなく、変動する保険を言います。払い込んだ保険料を特別勘定という枠で運用することで増やすことを意図した投資の性格を持つ商品です。
(2)保険金の受取方法を確認する
(図)
死亡保険の保険金は、一括で受け取るタイプ(一時金)が基本になりますが、収入保障保険などは年金形式です。
また、多くの場合、保険会社に申し出れば受取方法を変更することもできます。収入保障保険であっても、一時金で受け取ることを選択できるのが普通です。
なかには、介護保険など、別の保障内容に変更できる商品もあります。
保険金の受取方法は、どれが有利ということはなく、自分の意向や保険の加入目的に応じて選ぶべきものです。目的に合った受取方法になっているか、変更したくなったとき変更できるのか、などを確認しておきましょう。
(※受取方法に有利不利はないと言いましたが、年金形式を予定していた保険を一時金での受取に変更した場合、受取総額は少なくなります。そういった部分も、確認しておくとよいでしょう)
(3)保険期間と保険料払込期間を確認する
(図)
保険期間とは保険契約が続く期間を言います。
終身保険は終身(一生涯)ですし、定期保険なら「10年」など年数で区切られていたり、「60歳まで」など年齢で区切られていたりします。
保険料払込期間とは、保険料を払い込む必要がある期間のことです。保険期間とは別である点に注意してください。
保険料払込期間と保険期間が同じであることもあり、その場合、契約期間中はずっと払い続ける必要がある、ということを意味しています。このことを「全期払い」とも言います。
保険料払込期間が保険期間より短いことを「短期払い」と言い、その場合、ある時点で保険料の払込が終了して、以後は保険料を払い込むことなく、保険契約が続くというものです。一般に、同じ保障内容なら短期払いのほうが保険料は高くなりますが、支払いを終えてしまえば、以後は負担なく保障が続くというメリットがあります。
保険期間と保険料払込期間は契約時にある程度の範囲で選べることもあります。必ずパンフレットのどこかに記載がありますので、両者を混同することなく、確認しておきましょう。
(4)解約返戻金・満期金の返戻率を確認する
(図)
終身保険や養老保険などの貯蓄性のある死亡保険は、保険を解約すると解約返戻金を受け取れます。
解約返戻金は、それまでに支払った保険料から、保険会社の経費などを差し引いた残りを積み立てていったものですので、契約後、時間が経つほど、額が増えていくことになります。
ここで大切なのは、「いつの時点で、解約返戻金がどの程度貯まっているのか」ということです。
解約返戻金額がそれまでに支払った保険料総額を下回っている場合、それは「元本割れ」ということですから、その時点では解約すべきではありません。
解約返戻金額がそれまでに支払った保険料総額を下回っていれば、お金が増えたということであり、どのくらい増えたかの割合をあらわしたものが「返戻率」です。返戻率が高ければ高いほど、その保険で得をしたことになります。教育資金や老後資金など、資金準備のために保険を活用する場合は、資金が必要とされる時期の返戻率がどれくらい高いのかが、重要なポイントになります。
返戻率はパンフレットではわからない……?
時期ごとの返戻率は、パンフレットでは確認することができず、自身の年齢・希望する保険金額などをもとに保険会社に個別に見積もりをお願いしなくてはならない場合もあります。しかし、この点は加入前に必ず確認しておきたい点です。
パンフレットに目安が載っていることもありますから、それらを参考にしてもいいでしょう。
特に「低解約返戻金型」と言って、保険料払込期間中は返戻金額が低く抑えられている(そのかわり保険料が割安)商品もあります。資金計画に合ったものであるかどうか、確認するようにしてください。
また、商品が変額保険か外貨建ての場合は、パンフレットに書かれているのは、相場の変動を仮定したうえでの「例」になります。つまり、実際にどうなるかは予測できないものですので、書かれている例をそのまま信じてはいけません。
そのとおりになることもありますが、ならないこともあります。パンフレットには「うまくいった場合」がアピールされていることが多いのですが、「それほどうまくいかなかった場合」のことも考慮しましょう。
※返戻率は「解約返戻金額÷払込保険料総額×100」でもとめることができます
(5)主契約と特約を確認する
(図)
保険商品は、その保険に必ずセットされている保障のメイン部分「主契約」と、セットするかどうかは契約者が選べるオプション部分「特約」からなります。
パンフレットには、主契約・特約が織り交ぜて紹介されていますので、なにがその商品の主契約であり、なにが特約なのかは区別して理解する必要があります。
特約をたくさんつけると、保障が手厚く・幅広くなる一方で保険料は高くなっていきます。必要な保障内容に絞り込むことが大切ですので、どの部分が特約なのかの理解は重要と言えます。
そのほか、知っておくとよい用語集
ここまで解説した5つのポイントをチェックすれば、死亡保険についてはその輪郭を掴むことができます。
それだけでも十分だと思いますが、以下に、死亡保険のパンフレットに出てくることが多い用語について、簡単に解説をつけました。パンフレットを読んでいて、「これって何のこと?」と思ったら参照してください。
配当
配当とは、契約者が支払った保険料をもとにした保険会社の利益が、予想より多かった場合、利益の一部を契約者に還元することです。商品によって配当ありのものと、なしのものがあります。配当ありの商品でも、予想以上の利益が出なければ配当はありません。「5年ごと利差配当付き終身保険」は、5年ごとに(あれば)配当が出る保険という意味です。配当が出ると、死亡保険の場合、解約返戻金にプラスされたり、保険料から配当金分の金額を差し引いて保険料が安くなるなどします。
リビングニーズ特約
被保険者が余命6か月以内と判断された場合、本来なら亡くなったときに受け取る死亡保険金の一部を、リビングニーズ保険金として生前に自分で受け取れるという仕組みです。特約の一種ですが、この特約をプラスしても保険料は上がりません。
高度障害保険金
被保険者が保険会社が定めた「高度障害状態」であるとみなされた場合、死亡保険金に代えて支払われる保険金です。高度障害保険金を受け取ると、契約は終了します。
災害割増保険金
不慮の事故や災害などが原因で亡くなった場合、死亡保険金が増額になるという仕組みです。
払込免除特約
保険会社が定めた所定の状態(例:がん・脳卒中・心疾患などで所定の状態になる、など)になったとき、以後の保険料が免除されたうえで契約が継続するという仕組みです。
契約者貸付
貯蓄性のある保険で利用できる制度で、契約を解約することなく、解約返戻金の一部を貸付金として引き出すことができるというものです。貸付金ですので、返済する必要があり、金利もかかります。保険料の払込が滞ったときに、自動的に契約者貸付が行われて、保険料が立て替えられる「自動貸付」という仕組みもあります。
外貨建て保険
近年、外貨建て保険が大変、人気です。外貨建て保険とは、払い込んだ保険料を外貨で運用するものを言います。正式名称は「利率変動型終身保険」などであることが多いですが、「米国通貨建」などの文言が入っていることで区別できます。