支払事由とは、保険会社が保険金を支払うことになる理由のことをいいます。反対に、免責事由とは、保険会社が保険金を支払う責任を免れる理由のことです。
ある保険について、なにが支払事由で、なにが免責事由であるかは、その保険契約の根幹部分をあらわしているものと言えます。
支払事由・免責事由について理解できていないと、「もらえると思った保険金がもらえなかった」ということにもなりかねません。
どちらも、約款にはもちろん書いてありますし、「ご契約のしおり」や、保険金請求の手続き方法を解説した書類、保険会社のホームページなどで案内されていることが多いため、事前に確認しておくことが大切です。
支払事由=保険金が支払われる理由のこと
保険とは、ある出来事が起こったとき、あらかじめ決めていたとおりの保険金を支払いますよ、という契約です。
この「ある出来事」は保険によって違い、
- 被保険者の死亡(生命保険)
- 病気で入院すること(医療保険)
- がんだと診断されること(がん保険)
- 自動車の事故(自動車保険)
- 火災(火災保険)
などいろいろあります。この「保険金支払いの対象となる出来事」のことを「保険事故」と呼びます。保険事故は1つの保険つき1種類だけとは限りません。たとえば火災保険なら、火災だけでなく水災なども対象になります。
保険事故の発生は、保険会社から見ると、被保険者(保険の対象になっている人)に対して保険金を支払わなくてはならない理由ができたことになります。この「保険金を支払わなくてはならない理由」が「支払事由」です。
被保険者からすると、支払事由に該当する出来事については、保険金を受け取る権利(保険会社に対して保険金を請求する権利)ができたことになります。
ただし、一見、支払事由に該当するように見えても、細かな条件の違いで実は該当しないという場合があります。そのときは保険金が支払われませんので注意が必要です。
たとえば、医療保険の入院給付は、「○日以上の入院」の場合に支払う、ということが決められています。入院日数が所定の日数に満たない場合は支払事由に該当しません。手術給付についても、具体的に支払事由になる手術とはどういう手術なのか、約款に挙げられていて、手術だからなんでも該当するわけではありません。
また、医療保険に入る前に原因があるものも、責任開始前の出来事に由来するものは支払事由に該当しないことが一般的です。ある病気であると診断され、診断後に加入した医療保険では、その病気で生じた入院・手術は、日数や内容が支払事由の条件を満たしていたとしても給付金は支払われません。
免責事由になるのはどんな場合?
保険会社は、支払事由に該当すれば保険金を支払います。契約にもとづいて「支払う責任」が生じているからです。ただし、免責事由に該当する場合は、この責任を免れるものと決められています。
つまり「免責事由」とは、保険金支払いの「例外」で、例外にあてはまってしまうと保険金は受け取れなくなるのです。
たとえば、生命保険(死亡保険)の免責事由として典型的なものとして、次のようなものがあります。
- 加入後3年以内の自殺
- 保険金の受取人による故意(殺人)
- 戦争やその他の変乱による死亡事故
自殺や殺人を免責事由とするのは、保険金の不正な取得を防ぐためです。かつて自殺はつねに免責事由でしたが、最近は加入後一定の年数が経過していたり、精神疾患が原因とはっきりしていたりすれば免責ではなくなっています。
戦争などは、事前の予測が難しく、これを支払事由としてしまうと保険商品が成り立たない場合があるため、免責とされています。
ほかにも、自動車保険で、運転者が飲酒運転で事故を起こした場合など、法律に違反する行為がもとで起こった出来事や、重大な過失がある場合なども、免責事由とされます。
また、免責事由とは別に、告知義務違反があった場合も保険金は支払われません。