生命保険約款で想定する高度障害状態

死亡保険の受け取り条件の説明に、「死亡した場合または所定の高度障害状態に該当したとき」と記載されているのはご存知だと思いますが、この「高度障害状態」という言葉はやや曖昧で定義が必要です。

というのも、請求トラブルのなかには、「高度障害状態になったのに保険会社が払ってくれなかった」というクレームや相談が少なくないからです。

「所定の高度障害状態」とはどんな状態を指すのでしょうか。生命保険の約款をひもといてみましょう。

目次

高度障害状態とは

各社の約款に定義されている高度障害状態とは以下のような状態を指します。少し難解な言葉で書かれているので、下に噛み砕いた説明を追加しています。

  • 両眼の視力を全く永久に失ったもの
    →両眼とも失明してしまった状態です。
  • 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
    →言葉による意思疎通ができなくなった、または流動食以外しか摂取できなくなった状態です。
  • 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
    →脳から脊髄まで続く神経の中心部・精神、呼吸器、循環器などの障害により介護なしでは生活できなくなった状態です。
  • 両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
    →両手とも失ったか、または動かなくなった状態です。
  • 両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
    →両足とも失ったか、または動かなくなった状態です。
  • 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
    →片手を失い、かつ片足を失ったか、または動かなくなった状態です。
  • 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
    →片手が動かなくなり、かつ片足を失った状態です。

「死亡に匹敵する損失」と位置づけされているだけに、高度障害状態とは非常に重度の状態を指していることが分かります。

高度障害状態と認められない場合

「上記に該当しないもの=高度障害状態ではない」のですが、もう少し具体的に見ていきましょう。

回復の見込みがある

所定の高度障害状態に陥っても、回復の見込みがあると判断された場合給付金は支払われません。

一部介護状態である

「終身常に介護を要する」とは、該当する傷病によって全身の機能が低下し、食事、排泄、その他後始末、衣服の着脱、起居、入浴、歩行などの全てにおいて介護を要する状態です。したがって、たとえば脳梗塞の後遺症で左半身は麻痺したものの、右半身は動かすことができ、食事は自力で行える場合などは、一部介護状態であると判断されます。

身体障害等級1級=高度障害状態ではない

国が定める身体障害福祉法の身体障害等級1級の状態は、保険会社の高度障害状態を規定する文言に非常によく似ていますが、まったく別物だと考えてください。

等級給付の内容身体障害
第1級当該障害の存する期間一年につき給付基礎日額の三一三日分1.両眼が失明したもの
2.そしやく及び言語の機能を廃したもの
3.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
4.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
5.削除
6.両上肢をひじ関節以上で失つたもの
7.両上肢の用を全廃したもの
8.両下肢をひざ関節以上で失つたもの
9.両下肢の用を全廃したもの
※厚生労働省「障害等級表」より抜粋

高度障害状態の判断は保険会社によっても多少異なるものですし、「第1級だと認定される=高度障害保険金が受け取れる」ではない点に注意してください。

もともと患っていた障害が新たな傷病がもとで悪化した

責任開始期前、つまり保険の契約が有効になる前から各障害を患っている状態で、責任開始期以後に新しい病気や怪我が加わったことで高度障害状態に悪化した場合、保険金を受け取れないことになっています。

ただし、新たな傷病と高度障害状態になったことに因果関係が認められない場合はきちんと支払われます。

さいごに

高度障害状態になるくらいですから、保険金の請求を自分でできない可能性もあります。そのため保険会社は、指定代理請求制度を取り扱っていて、契約時または契約中に指定すれば被保険者以外でも保険金の請求が可能になります。

誰でも代理人に指定できるわけではありませんが、被保険者と同居し、生計を一にしている戸籍上の配偶者か、3親等内の親族と規定されていることが一般的です。

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