認定死亡

認定死亡とは、死亡した事実の確認はできていないものの、死亡だと認定して戸籍簿に「死亡」と記載する戸籍法上の制度のことをいいます。認定死亡した人が生命保険に加入している場合、遺族は保険会社から死亡保険金を受け取ることができます。

本来、死亡届には、死亡診断書または死体検案書のどちらかが必要になりますが、これらは遺体の確認なしには作成できません。しかし、大規模な自然災害や航空機事故など、現実には「死亡した可能性は高いが遺体が見つからない」場合もあるため、事故の調査を行った官公署の報告に基づいて戸籍簿への死亡記載を認めています。

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失踪宣告との違い

認定死亡によく似たものとして、民法には「失踪宣告」という制度があります。不在者の生死が一定期間、不明であれば死亡したとみなす制度ですが、認定死亡とは要件が異なれば決定する機関も異なるため、相違点を整理しておきます。

認定死亡失踪宣告
制度戸籍法(第89条)民法(第30、31条)
生死判断の基準行方不明者の生死が確実である行方不明者の生死が不明である
決定機関官公庁家庭裁判所
法的効果死亡の推定に留まる死亡したとみなす

「推定」と「みなし」

不在者の死亡を「推定」するに留まる認定死亡に対し、失踪宣告は死亡と「みなす」ため、法的には失踪宣告の方が重い扱いになっています。その証拠に、認定死亡は不在者が生きている証拠を提出すれば決定を覆すことができますが、失踪宣告はそうはいかず、生存の証拠を示したうえで失踪宣告の取り消し手続きを行わなければいけません。

たとえば、不在者の財産を受け取ったものの、不在者が生きていた場合、認定死亡では財産を返す必要がありますが、失踪宣告では法律上の手続きが取られない限り受け取った人のものになります。

保険金を受け取るとき

認定死亡でも失踪宣告でも保険金の請求は可能ですが、失踪宣告には「普通失踪」と「特別(危険)失踪」の2種類があり、普通失踪の場合は行方不明者の生死が7年間明らかでないと認められないため、その間の保険料は払い続けなければなりません。

普通失踪特別失踪以外の理由での失踪。消息を絶った時から7年間生死が不明
特別(危険)失踪戦地に臨んだ、沈没した船に乗っていた、その他死亡する恐れの高い危難に遭遇した失踪。危難が去った時から1年間生死が不明

また、上表のとおり、普通失踪は災害に遭って失踪したかどうかを問わないため、災害特約を付けていても保険金を受け取れない可能性が高いです。

さいごに

法律上の死亡を認定する意味ではどちらも同じですが、戸籍法と民法とで起点が異なること、それによって具体的な手続きや必要書類等が異なることを覚えておきましょう。保険会社への請求も各社により違いがあります。

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