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【部位・ステージ別】がん治療にかかった実費はいくら?500人に聞いた医療費の相場

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がんの治療にかかる医療費は、基本的に、がんの種類とステージ(進行度)で異なります。また個々の症状や選択する治療方法によってもさまざまです。とはいえ、相場としてどのくらいなのか?は気になるところではないでしょうか。答えによっては、がん保険の保障内容や、保険に入るそもそもの必要性を問うきっかけになりそうです。

厚生労働省などが発表している統計から推計もできますが、ここではあえて、がんに罹患し、治療を終えた方500名にアンケートを行い、実際にかかった費用について聞いてみました。

■調査概要
調査方法 マクロミル 調査地域 全国
調査対象 20歳以上の男女 調査日時 2017年3月17日~3月22日
がんの部位 大腸がん、胃がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん 症状 ステージI(0)〜IV
有効回答数 500(各部位・各ステージに可能な限り均等に振り分け)
参考 医療費はあくまで実費。高額療養費制度で払戻を受けた場合はその差引額とする。
民間のがん(医療)保険の給付金は含めないものとする。

全体の治療費

調査した5つのがん(大腸がん、胃がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん)の個別結果を見る前に、まずは全体的な金額の分布を見てみたいと思います。ステージ全体での集計ですので、あくまで参考としてご覧ください。

全体

約7割が50万円以内に収まっており、100万円以上かかったという人は1割強という結果に。「がんにかかったらいくら?~」という問いに具体性を持たずに答えるなら、「医療費については、ほとんどのケースが50万円未満で済む」と言えそうです。

がんといえども、入院日数は年々減少傾向にあります。厚生労働省の「患者調査」によると、退院患者の平均在院日数は、がん(悪性新生物)全体でも、2005年には24.6日であったのに対し、2014年には18.7日と、約6日間も短縮しています。その分、入院にかかる費用も減っているはず。

医学の進歩や生存率の向上で、がん治療は「高額化」「長期化」の傾向にあると言われていますが、「標準治療」であれば保険適用になります。この調査結果を見る限り、必要以上に医療費を不安に感じることはないのかもしれません。

部位別・ステージ別の治療費

部位、ステージごとではどのような結果になるでしょうか。1つのがんにつき100サンプルをできるだけ均等に振り分け、まとめてみました。

大腸がん(直腸がん・結腸がん)

大腸がん治療費

大腸がんの治療法は、軽度であれば内視鏡治療 → 経過観察で済みます。今回の調査でも、ステージIでの治療方法はほとんどが「内視鏡切除」でした。結果、治療費の実費は「20万円未満」が約7割。

ステージIIになると、ステージIでは3割弱だった手術(開腹・腹腔鏡下)の割合が増え、抗がん剤の併用も見られました。治療費は「20万円~50万円未満」が5割以上を締めるようになり、「250万円~300万円未満」かかったという回答も(開腹手術・治療期間5年以上)。

ステージIIIでは、それまで少数だった「50万円~100万円未満」が2割以上になり、「150万円~250万円未満」というケースが初登場します。手術の後、再発を防ぐために抗がん剤を使用するケースも増えてきます。

ステージIVは、ついに「50万円~100万円未満」が5割弱に。「300万円以上」という回答もありましたが、どれも治療方法についての詳細の記載がなかったため、不明です。

大腸がんは、2007年4月以降、ベバシズマブ(商品名アバスチン)を皮切りに、体内の特定の分子だけを攻撃する「分子標的薬」が相次いで保険承認され、切除できない再発・進行した大腸がんの治療法は選択肢が広がっています。

また、分子標的薬の登場にともなって個々のがん細胞の遺伝子に基づいた個別化医療も進み、薬剤の効果が期待できるかどうか調べる「KRAS(ケーラス)遺伝子検査」も2010年4月から保険適用されました(自己負担2,000円~6,000円程度)。

これによって、治療効果がある程度事前に予測できるようになり、無用な副作用や医療費負担の軽減が図られています。

胃がん

胃がん治療費

胃がんの治療費用は、全体を通して「20万円~50万円未満」が多いようです。とくに、ステージⅣはもっとも顕著で、8割以上が「50万円未満」と回答しています。

ただ、ステージⅣ以外では、「100万円以上」かかったと回答している人が一定数おり、それぞれ、どのような治療法を選択するのかによって、費用が大きく異なってくることが分かります。

ステージIIIで見られた「250万円~300万円未満」では、開腹手術による切除の後、抗がん剤治療、漢方薬治療を受け、がんと診断されてから治療を終えるまで5年間以上かかったと記載されていました。

胃がんは、手術での切除が最も治療効果が高いとされており、ほとんどのケースで手術を選択することになります。しかし早期がんの場合、胃カメラによる内視鏡的粘膜切除で済むこともあります。入院期間についても、開腹手術の場合、2週間程度かかりますが、内視鏡手術の場合、5~7日程度で済むので、費用も抑えられます。さらに、早く職場に復帰できることで、収入への影響も少ないと言います。

また近年は、内視鏡手術適応外の早期がんでも、胃やリンパ節をできるだけ残す縮小手術が増えているようです。胃の機能が残るため、術後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)維持にも効果的だと言われています。

2011年3月以降、乳がんで使用されている分子標的薬のトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)が、一部の胃がんについても保険適用されるようになりました。「HER2(ハーツー)検査」の結果、HER2陽性の場合は、分子標的薬と抗がん剤の併用が標準治療となっています。分子標的薬は抗がん剤に比べて高額で、これが医療費負担にも表れてくると思われます。

乳がん

乳がん治療費

乳がんにかかる人は全世代で増加傾向にあり、30代や40代という若さで罹患するケースも珍しいとは言えません。今回の調査でもその傾向は見られ、特にステージI・IIでは40代の女性が目立ちました(もちろん全体で見ると50代以上の方のほうが多いです)。

ステージIでの調査結果では「20万円~50万円未満」が4割、次いで「20万円未満」が3割弱ですが、ステージIでも「100万円~150万円未満」の回答があり、まさにがん治療がケース・バイ・ケースであることを示しています。

ステージIIに移ると全体的な実費が増え、手術・抗がん剤・放射線治療の組み合わせが増えてきます。それに伴い、治療期間も長期化する傾向にあるようです。これはステージIIIにおいても同じことが言えます。ステージIVについては、十分なサンプルが得られなかったため、引き続き調査を行いたいと思います。

乳がんは、ステージや「サブタイプ分類(ホルモン受容体やHER2発現状態から4つのタイプに分かれる)」、乳房再建の有無などによって治療法や費用は変わってきます。乳房温存の場合、術後に放射線治療を行うのが標準治療で、1.8~2Gyを25回照射するのが一般的なスケジュールですが、追加で行うケースもあります。今回の調査でも、30回程度照射したと回答した人もいました。

また、ホルモン療法を行うケースも多く、治療期間は5~10年にわたります。抗がん剤に比べると費用はそれほど高額ではありませんが、期間が長い上、副作用軽減のために通院するケースもあり、じわじわと家計への負担がかかってきます。

乳房全摘手術を行った場合、その後に乳房再建する人も増えています。特に、2013年7月、2014年1月にかけて、インプラント(人工物)が保険適用されたことで、費用面でのハードルが引き下げられました。

目安として、自家組織による再建は30〜60万円、インプラントによる再建は、ティッシュ・エキスパンダーの挿入が15万〜20万円。インプラントの挿入が17~30万円です(いずれも自己負担3割の場合)。さらに、高額療養費が適用されれば実質的な負担は軽減できます。

子宮頸がん

子宮頸がんの治療費用

子宮頸がんは20代や30代の女性でも油断できないと言われており、事実、今回の調査では乳がん以上に若い方が目立ちました。

ステージIでは「20万円未満」の実費で済んだケースが6割で、子宮を温存する「子宮頸部円錐切除術」が7割以上でした。ステージIIになると、再発予防として抗がん剤や放射線治療の併用が多くなるため、やや金額に差が出ています。「100万円~300万円未満」と回答した人が2割という結果には注目でしょう。

逆に、ステージIIIでは再び「20万円未満」が1位になりました。なお、年齢は40代後半~50代の方が多いですが、30代の方も少なくありません。

乳がんと同じく、ステージIVでは十分なサンプルが得られなかったため、こちらも引き続き調査を行えたらと思います。

子宮頸がんの治療の基本は、ほかのがんと同じく手術です。また放射線治療(外部照射と膣内照射)も効果があり、根治目的では、抗がん剤と放射線を同時に行う併用療法が標準治療となっています。

子宮頸がんでよく使用される抗がん剤は、プラチナ製剤のシスプラチン(商品名ブリプラチン)をベースにした多剤併用療法です。シスプラチンは、抗がん剤の中でも効果が高い反面、副作用(吐き気やおう吐、腎機能障害など)が出やすく、その症状も強くなります。病院によっては、外来(通院)ではなく、入院治療で行う場合もあり、その分の費用がかかります。

また年代的に、子宮頸がん罹患後、妊娠・出産を希望する方も少なくありません。最近では、妊娠の可能性を残す生殖医療として、受精卵または卵子を凍結する方法や卵巣組織ごと凍結する方法などを実施している病院もあります。

費用は保険適用外で全額自己負担です(*参考:聖マリアンナ医科大学病院の場合 採卵・培養25万9,200円、胚凍結保存料(5個以下)5万9,400円、卵子凍結保存料(更新料:年1回)3万8,800円、悪性腫瘍用、卵巣組織移植60万円など(2017年3月28日現在)。

これらは治療を選択する前に、主治医に相談する必要があり、本調査でも高額な実費がかかっている方は、それが医療費に上乗せされている可能性もあります。

前立腺がん

前立腺がん治療費

前立腺がんの治療費の実費結果は、やや極端なものとなりました。というのも、全体的には「20万円未満」が多い一方で、今回の区分けで最高ランクに位置づけている「300万円以上」が最も多く見られたからです。治療期間はいずれも1年未満のようですが、先進医療技術の「重粒子線治療」を受けており、納得の金額です。

がん(医療)保険の先進医療特約は、受療する確率が低すぎることから不要だと主張している声もありますが、こうした結果を見ると、やはり加入していた方が安心に思えます(※今回の調査では「民間保険の給付金は含めないもの」としているため、これらの方々が実際に300万円以上負担したかは定かではありません)。

また、ロボット支援手術(ダヴィンチ)を用いる腹腔鏡下手術を行っているケースもいくつか見受けられました。日本では、2012年2月から、ダヴィンチによる前立腺全摘手術が保険適用になり、急速に普及しています。費用総額は約150万円ですが、保険適用になる症例については、3割負担で45万円。高額療養費も適用可です。

一般的に前立腺がんは、高齢の男性がかかりやすいがんです。ただし、「PSA検査」など検診の普及などで早期発見される若年層の患者も増えてきました。

前立腺がんの治療法は、手術や放射線治療、ホルモン療法が中心となりますが、患者側の年齢や体力、もともと患っている基礎疾患の有無によって、特別な治療を行わず、経過を見る「PSA監視療法(待機療法)」で経過を見守るケースもあります。前立腺がんは、抗がん剤が効きにくいがんと言われていますが、手術の効果が薄れて、がんが再燃(再び活動を始める)した場合は、抗がん剤を使用します。

全体を通して

「がんにかかる治療費=高額」とイメージしてしまいがちですが、実際にかかった医療費の実費として切り出すと、「意外にそうでもないケースが多い」と言えそうです。

下の円グラフは、冒頭で紹介した実費の全体図(右)と、”がんと診断されたときにいくらかかると思ったか?”の予想図(左)ですが、やはり多めに想像してしまいがちなようです(それでも「20万円~50万円未満」はほとんど一致している点は少々驚きです)。

予想と実態

実際には、病院にかかる医療費以外の費用(消耗品、交通費・宿泊費、差額ベッドを利用する際は個室代、ウイッグ・医療用かつら、健康食品・サプリメント等)も必要になるでしょうし、入院や治療中、働けない間の収入減を補うためには、個々の状況に応じて、それなりの備えは必要だと思います。ただ、今回の結果からいえば、がん保険で対応する場合、がんと診断されれば給付金が受け取れるタイプの保険で、100万円もあれば安心でしょうか。

もちろん、すべてを保険で備えるとなると、保険料がいくらあっても足りません。また、保険は「契約」ですので、保険約款上に記載された要件を満たさなければ、給付金は受け取れません。そのためにも、いざというときに自由に使えるお金(預貯金)でも準備しておくこともお勧めします。

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