「告知義務違反」を疑われて知った医療保険の意外なルール

もぶ太です。この出来事のせいで痩せました。
僕は2年間好きだった女性に2秒で振られても2分で立ち直れた男ですが、今回ばかりは胃にきましたよ・・・。

タイトルのまんま、ケガで病院のお世話になったので医療保険の給付金を請求したところ、「アンタなんかルール違反してない?」と言われたんです。さらに、「支払いが可能かどうかは調査をもって判断する」と。

え~??

ルール違反というのは、保険に入るときの健康状態や過去の病歴に対する質問に嘘偽りなく答えるという契約(以下、告知義務と言います)に落ち度があったのでは、ということでした。告知義務とは、たとえばこんなものです。

(1)最近3カ月以内に医師の診察・検査・治療・投薬を受けたことがあるか。またその結果、検査・治療・入院・手術をすすめられたか。
(2)   過去2年以内に健康診断、がん検診、人間ドックを受け、異常を指摘されたことがあるか。
(3)   過去5年以内に病気やケガや検査で継続して7日間以上の入院をしたことがあるか。
(4)   過去5年以内に病気やケガで手術を受けたことがあるか。
(5)   過去5年以内に所定の病気で医師の診察・検査・治療・投薬を受けたことがあるか。
(6)   過去5年以内に(5)における別表に示された病気以外の病気やケガで7日間以上にわたって医師の診察・検査・治療・投薬をうけたことがあるか。

日本経済新聞 告知書の見方Q&Aより抜粋

一体どれに違反したというのか? これから保険に加入しよう、または見直そうと思っている人のためにも、今回の教訓をお伝えできればと思います。

《登場人物》

mobuta

・もぶ太(管理人)
僕。今回の被害者であり、自分に過失はない……ことはなかったけど非常に困った。

担当者・FPさん
いつもお世話になっている人。保険に詳しくもぶ太の心強い味方で、非常に頼りになる。

医者・新人ドクター
今回のきっかけを作ってくれた私的にA級戦犯。30代前半か。詫びとして焼肉おごってほしい。

調査員・調査員
告知義務違反を調べる要領を得ないおじさん。詫びとして満漢全席おごってほしい。

目次

事の発端はうっかり新人ドクターにあり

僕は引用した例でいう(5)または(6)に該当する恐れがあるとのことでした。つまり、「過去5年以内に治療歴があんじゃねーか」と疑われていると。

どういうこと?!と、保険会社に提出した診断書をチェックしてもらったところ、『治療期間』の『初診』という項目に、今回の治療よりも以前のものが記入されているというではありませんか。

  • 初診:平成24年●月~ 現在治療中 ←なにこれ?
  • 第1回目入院:平成28年●月×日~●月×日 ←今回の治療期間(合ってる)

平成24年●月? そんな時期にケガなんてしてな……あ!

そうなんです。すっかり忘れていたのですが、たしかに僕は4年前、ちょっとしたケガをして今回と同じ病院で治療を受けていたのです。これを忘れていたのは僕に非がありますが、入院はもちろん手術だってしていない単なるケガですし、「7日間以上にわたっての治療」なんて、とんでもない話です。

そもそも、なぜ今回の治療と関係のない4年前のケガを『初診』欄に書いたのか? 調べてもらったらこれ、新人ドクターの凡ミスというオチだったんですよね。先輩医師から診断書の作成を依頼された若先生が、今回の治療と無関係の治療データを見つけて何も考えずに転記したという。。。おいおい頼むぜ?

今回の治療と4年前の治療に因果関係がないのは明らかなのですから、保険会社さんも、

給付金2

なーんて感じで済ませてくれればいいものを、

「関係ないとしても、4年前のケガが“告知すべき内容だったか”は調査する必要がある」
「もし告知に値する内容だった場合、ルール違反はルール違反なので保険契約は解除。ただし給付金は払ってあげても可」

といった展開になりまして、信頼のおけるFPさんにちょっと相談した次第です。

 「7日間以上にわたっての治療」における意外な解釈

先述のとおり、もぶ太からすれば単なる軽いケガで、 “告知すべき内容”とは捉えていなかった(そもそも忘れていた)し、7日間以上にわたる治療なんて受けていないのですが、FPさんによると、この解釈には注意が必要だと。

保険会社が定義する「7日間以上にわたる」とは、初診から終診までの期間を指し、そこに通院回数は関係ないようなんですね。要するに、たとえばケガで診療を受け、薬を塗り、その8日後に傷の治り具合を見せに再診し「もう大丈夫」と言われた場合でも、約款上は7日以上にわたる継続した治療になるとのことなのです。

はぁ~!?

一般的に7日間以上といわれたら「7日間以上の連続した受療」、または「合計7回以上の実受療数」だと考えると思うのですが、他社の約款も複数閲覧したところ、保険の世界では感覚が異なる様子。しかも最近は保険業界の体制整備が進んでいるせいか、結構分かりやすく説明してありました。もぶ太が契約した当時の某社は細かく小さく書いてあったのに。

この定義でいくと僕はまるっとアウトになるな・・・と震えていたのですが、持つべきものは信頼関係のあるFPさん。そうした場合、契約者に特別な瑕疵はないという判例を見つけ出してくれました。

【参考】告知義務違反における故意又は重過失に関する裁判例の分析と検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsis/2014/626/2014_626_107/_pdf

要約するとこうです。

  • 告知すべき重要な事実の存在を忘れていることはあり得る話 ←実際に忘れてた
  • 告知すべき重要な事実とは考えずに告知しないこともあり得る話 ←覚えていたとしても軽いケガだし言い出さなかったかも
  • 告知すべき重要な事実が重大な疾病であるかが重要 ←軽いケガ
  • その重大な疾病について被保険者に自覚症状があるかも重要 ←前に同じ
  • 治療と告知(契約)までが時間的に近接しているか ←2年以上前

告知義務違反を故意や重過失だと証明するのは容易ではなく、基本的には消費者寄りに判断されるということなんですね。というわけで、いざ裁判になっても大丈夫だし、まあ相手さんも理解してくれるよね~♪くらいの気持ちで、調査会社の方の報告を待ったのですが……。

1度で済む作業を分割して行う調査員

この調査員さん、なかなかのくせ者で、わざとやってんのか?と思うくらい進展のない仕事をする人でした。調査員の活動は2週間毎に書面で送られてくるのですが、その内容に具体的な成果はなく、ただただこの人がとった行動履歴が送られてくるだけ。

「今日は整形外科の先生に書面で回答を求めたよ!」
「回答に対する再度の調査依頼を求めたよ!」
「再回答に対する再再の調査依頼を求めたよ!」

ほとばしる無能感。あまり上手いたとえが浮かびませんが、冬服一式を揃えるのに、「今日はコート!」「今日はマフラー!」「今日は手袋!」「うーん今日はヒートテックだ!」みたいな買い物に2週間に1度付き合わされている気分。いや冬終わるわい!!調査員は調査確認をすることで稼ぎになるのかと勘ぐりたくなるレベルでした。それとも調査ってこんなもんなの?

FAX

結果、初対面のときに 「問題ないと思いますよ~、ただちょっと時間がかかるかもしれません」と言われた「ちょっと」が、ふたを開けると8ヵ月にもなったのです。

最終的には、業を煮やした僕が保険会社に連絡し、

「これは問い合わせではなくクレームです」
「件の調査について、◯月◯日までに答えを出しておくように」
「回答を聞きに弁護士を連れて訪問する考えです」

とアクションをしかけた途端、何の事前報告もなく給付金が振り込まれたという尻つぼみなオチです。

こうした脅し(本気だったけど)がクリティカルにヒットしたのかどうかは分かりません。FPさんは、調査活動の終了と給付のタイミングが一致しただけだろうという見解で、確かにまあ、さすがに引き伸ばすネタがなくなっていたと思うので、頷けもします。

あまり良い方法ではなかったかもしれませんが、とにかく解決して良かった、そんな気持ちです。

今回の件から得た教訓は

保険会社との、面倒くさい、おそらくはお互いに良い気がしないやり取りを避けるためにも、今後は次の点に気をつけようと思います。書き出してみると当たり前のことなんですけど。

・些細な疑問でも必ず解消しておく

ネット販売の保険の場合、基本的には自分一人で契約を結ぶことになり、保険に詳しくないと分からない用語や言い回しが出てくると思います。少しでも「ん?」と感じたら、自分で調べてみるほか、カスタマーセンターにも確認し、疑問を解消しておくべきです。

ただ、今回のもぶ太のように、「ん?」という引っかかりもないまま契約するケースもあるため、信頼のおける専門家を側に置いておくのも大切だと思いました。

・告知義務では正確かつ詳細に答える

告知書は、将来、契約希望者に起こるリスクの「唯一の判断材料」であるという理解が足りませんでした。質問されていないことに答える必要はありませんが、聞かれたことには不足なく回答してこそ、双方にとって良い結果が得られると思います。

事実、たとえば高血圧気味で治療中なら、「いつから治療を開始したのか」「治療を開始したきっかけ」「健康診断の結果」「服薬中の薬剤名」など、審査員が判断しやすい材料をそろえてあげた方が、曖昧な告知をするよりも審査に通りやすいそうです(専門家  談)。

もしも過去に戻れるなら、僕は告知し忘れたケガについて、診査員の人が引くくらいの詳細を書き込んで悦に入りたいです。

その他、

  • 診断書には自分でもきちんと目を通す
  • 調査員へのクレームは早めに
  • 告知書や診断書など大切な書類は控えを取っておく

医師であってもミスはしますし、調査員にも当たり外れはあるでしょう(今回の人は本当に何だったのか)。また、大切な書類は必ずコピーを取っておき、何かあればすぐに応戦できるよう用意しておくほうが、心の安寧を乱されなくて良いです。

以上、告知義務を軽んじていたわけではありませんが、特に何も考えていなかったと言われれば、そうなります。大金が絡む契約ですから、「知らなかったもん」じゃ通じないこともあると、反省しています。

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この記事を書いた人

ソクラテス編集部です。

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