精神疾患のための治療費負担を軽く出来る医療費助成制度まとめ

精神疾患の治療は、病院への通院や、薬代はもちろんのこと、仕事を休んで、治療に専念しなくてはならない場合もあります。それらが家計に対して大きな負担となってくる可能性は大いにあります。

実際、うつ病の治療を受けていた私の友人も、会社を休職したときは貯金を切り崩す生活で、家計としても精神的にも不安が大きかったと言っていました。

今回は、精神疾患を治療していく中で増大しがちな家計への負担を軽減してくれるいくつかの制度についてまとめてみました。

目次

傷病手当金で休業中の給与も最大3分の2保障される

病気で仕事を休みがちになったり、本格的に休職をすることになった場合でも会社の社会保険に入っていれば『傷病手当金』というかたちで、標準報酬日額の3分の2を給付してもらうことが可能です。給付期間は最大で1年半。3日間以上の休みがあった場合、4日目から支給されます。

※参考:全国保険協会『傷病手当金』
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31710/1950-271

この『傷病手当金』を申し込むには「傷病手当金請求書」の提出が必要です。

これには主治医や、会社からの記入をしてもらわなくてはいけない欄もありますから、まずは勤めている会社(庶務課などが窓口のことが多いようです)に相談してみましょう。

また、病気が理由で会社をやめてしまっていても、1年以上社会保険に入り続けていれば、給付を受けることができます。

注意する点としては、年金など他の給付金制度とあわせての支給ができないということと、社会保険ではない国民健康保険などの保険では、この傷病手当金の申請はできないということがあります。

自立支援医療制度で医療費の自己負担が1割に

自立支援医療制度とは、通院による治療(外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等)にかかった費用を国が負担してくれる制度で、通常の社会保険では3割の自己負担となるところが1割の自己負担ですみます。また、その人の所得に応じて、最大の負担上限額も決められます。例えば、市町村民税非課税世帯であって受給者の収入が80万円以下の場合、月額の負担上限額は2500円となります。詳細は下記を参照してください。

※引用:厚生労働省 自立支援医療(精神通院)医療の自己負担の概要

対象となる疾患は、

・統合失調症
・うつ病、躁うつ病などの気分障害
・不安障害
・薬物などの精神作用物質による急性中毒又はその依存症
・知的障害
・強迫性人格障害など「精神病質」
・てんかん

などで、受給の有効期限は1年で、1年ごとに更新が必要です。

病気のせいで休職中だったり、通院の回数が増えていたりするときには、医療費が際限なく増えていくという状況がお金以外にも、気持ちの上でも大きな負担になりがちです。

これ以上はかからないと上限がわかっていれば、ある程度はその不安もおさえていくことができます。

申請に必要な書類としては、市町村の役所などでもらうことのできる申請書に、医者からの診断書をもらってください(診断書をもらうのに多少別途費用がかかるところもあるようです)それから、所得状況がわかるものなどです。

精神障害者保健福祉手帳の発行を受ける ~様々なサポートを~

そして最後にもうひとつ、精神障害者保険福祉手帳、というものを挙げておきます。

これは、こころの病気のせいで生活にいろいろな不具合がある人に、その症状がある一定以上だということを国が認定し、その人にさまざまな支援をしていくために発行されるものです。

病気の重さの度合いによってそれぞれ、認定は一級から三級に分かれていて、それぞれの市町村の担当窓口から申し込むことができます。有効期限は二年間ですが、きちんと手続きをすれば更新することもできます。

<一例:精神障害者保健福祉手帳の等級>
※文言は東京都福祉保険局による基準・()内は筆者による

一級 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度
(ひとりでの外出が難しい、社会や趣味・娯楽に関心がない)
二級 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度(ひとりで外出はできるが付き添いがあったほうがよい、衛生管理が難しい)
三級 日常生活又は社会生活が制限を受けるか、日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度(ひとりで外出ができる、仕事をある程度こなしていける)

※参考:精神障害者福祉保険手帳の障害等級の判定基準についての一部改正について

そして、この手帳を持っていることで受けられる援助サービスは、全国どこでも一律で受けられるものと、地方の自治体ごとに実施しているものとに分かれています。それぞれを書き出していくと、以下のようになります。

<全国一律で受けられるもの>
・税金(所得税・住民税・相続税・自動車税など)の控除・減免
・NHK受信料の減免
・生活福祉資金の貸付
・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウント
・障害者職場適応訓練の実施

<地方自治体によって行っているもの>
・鉄道・バス・タクシーなどの交通機関運賃の割引
・携帯電話料金の割引
・水道料金の割引
・心身障害者医療費助成の受給
・公共施設の入場料等の割引
・福祉手当
・通所交通費の助成
・軽自動車税の減免
・公営住宅の優先入居                          等

また、そのサポートの内容によっては認定された手帳の級が、一定の級以上であることが必要な場合もあります。

それらをしっかりと確認したうえで、使える割引をしっかりと使っていくこと。そしてどのように家計を見直していくか、反映させていきましょう。
<一例: 精神障害者保険福祉手帳の等級による税金控除額比較(所得税)>

所得控除額
一級(特別障害者) 40万円まで
二級・三級 27万円まで

最後に、ひとつだけ

ここまで見てきたいくつかの制度を使うにあたって、「精神障害」という言葉にあまり良いイメージがない、そのように国から認定を受けたり、申請の際にこころの病気であるということを親しくもない相手に知られたくないと思う方も多いと思います。

ですが、これらの公的なサポートの制度というのはすべて、わたしたち国民の権利でもあります。国が定めた基準を満たしていて、利用することができる。そして実際に日常で困っていることがあるのなら、使うことに何の問題もありません。

それは、学生が奨学金を申し込むようなものです。事情があって、家計が苦しい。その助けになる制度があるから申し込む。ただ、その事情がそれぞれ違っているだけ。

うつ病は、だれにでもなる可能性がある「こころの風邪」とも言われる病気です。だれでも可能性がある当たり前のものだからこそ、それを支援する制度が確立してきたといえます。

これらこころの病気の治療をサポートする制度を活用して家計の負担を軽くすることはなにも悪いことではないのです。自分が使える制度をきちんと見つけて、家計を安心してやりくりできるよう、これらの制度を上手に利用していきましょう。

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この記事を書いた人

ソクラテス編集部です。

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