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分譲マンションで地震保険は必要?

このたび、新築の分譲マンションを購入します。
火災保険の加入は決定していますが、地震保険には加入するかどうか迷っています。

迷っている理由としては、木造の一戸建などに比べれば被害はさほど大きくないだろうと思っている事。マンションは共有部分が多いので、持ち家ほど負担も大きくないと考えているからです。

地震保険は必要でしょうか?また、もし地震保険に加入する場合、注意点はおすすめの選び方などありますでしょうか?

(28歳 女性)

推奨

分譲マンションでも地域や構造などによっては、地震保険に入っていた方が安心です。

ファイナンシャル・プランナー(CFPR) (株)プラチナ・コンシェルジュ 田辺 南香

保険料を抑えたいなら、補償の対象を「建物」ではなく「家財」に絞り、保険期間を5年にするとよいでしょう。

地震保険の目的は生活再建

政府と損害保険会社が共同で運営する地震保険は、補償内容や保険料はどの保険会社で加入しても同じ。火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で、「建物」5,000万円、「家財」1,000万円を上限に設定しますが、受け取れる保険金は、「全損」で保険金額の100%、「半損」で50%、「一部損」で5%が限度です。1回の地震による保険金総支払額には上限があり(2014年11月時点で7兆円)、この額を超えると支払いが削減される可能性もあります。これらの特性を考えると、保険金だけで家を建て替えたり、住み替えたりするのに十分な補償とは言えません。あくまでも生活再建が目的の保険です。

また、新築マンションは一般的に耐震性が高く、共有部分も多いため、高い保険料を支払って居住スペース(専有部分)の地震保険に加入すべきかどうか、確かに迷うところです。ただし、以下のような理由から、リスクが高いマンションに住んでいる場合は、地震保険の加入をおすすめします。

保険料が高い(リスクが高い)ほど、地震保険が役立つ可能性が高い

そもそも保険は、リスクが高いほど保険料が高く、低いほど安いしくみ。地震保険も保険料を比べれば、“リスクの高い・低い”がわかります。鉄筋や鉄骨、コンクリートから構成される分譲マンションは、木造の一戸建てに比べ、耐火性や耐震性の面では優れているため、地震保険の保険料は割安です。しかし、ひとくくりにマンションといっても諸条件によってリスクの大きさは異なり、保険料にも差があります。
条件のひとつが地域です。東京都、神奈川県、静岡県、千葉県、愛知県、三重県、和歌山県の7つの都道府県の地震保険料は最高レベル(2014年10月時点)。保険料が高い地域ほど、地震の発生リスクが高いと考えられます。

もうひとつが保険料の割引制度です(表参照)。割引がない、または割引率が低い物件ほど、損害が大きいと想定されているわけですから、地震保険が役に立つ可能性が高いと言えるでしょう。

地震保険の割引制度
割引制度 割引の説明 保険料の割引率
建築年割引 昭和56年6月1日以降に新築された建物 10%
耐震等級割引 対象建物が、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定する日本住宅性能表示基準に定められた耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)または国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に定められた耐震等級を有している場合 耐震等級1 10%
耐震等級2 30%
耐震等級3 50%
免震建築物割引 対象建物が、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく免震建築物 50%
耐震診断割引 地方公共団体による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす建物 10%

※出典:財務省「地震保険精度の概要」
※割引率は「建物」「家財」いずれにも適用される

保険料の差に表れない部分では、地盤や地形などによっても、地震によるリスクの大きさは異なります。軟弱な地盤や斜面を盛り土によって造成した土地など、立地条件のリスクが高いと思えば、保険の加入を検討しましょう

耐震構造でも専有部分の損害が大きくなることもある

耐震等級が高いほど、構造的にマンションそのもの(躯体)への地震被害は小さいと想定できます。ただし、構造の種類によっては地震の揺れが内部に伝わり、専有部分が激しく揺れて、家具や家電の転倒や落下などに繋がるかもしれません。実際、新築であっても多くのマンションは耐震等級1です。共有部分の地震保険だけで十分とは言えないでしょう。また、地震が原因で火災が発生した場合、延焼や消火活動によって、室内の「建物」部分や、「家財」に大きな損害が出ることも考えられます。この場合、火災保険では補償されず、地震保険で補償されます。

共有部分が地震保険に加入していないと震災時の負担は大

マンションの柱や梁、外壁、戸境壁、床スラブ、玄関扉、エントランス、エレベータなど共用スペースの地震保険は、マンション管理組合が契約するのが一般的。しかし、共用部分の地震保険付帯率は約35%(全国平均※)。地震保険の加入は、管理費の増加にも繋がるため、マンション住民の意見を取りまとめることは容易ではありません。もしも、震災によって、共有部分に損害が出た場合、保険未加入のマンションでは、修繕のための所有者負担が大きくなることが予想されます。さらに専有部分の損害も重なれば、費用がダブルでかかりますから、せめて専有部分だけでも地震保険で備えておきたいものです。

(※)出典:損害保険協会 2012年 損害保険会社5社調べ

保険料を抑えるには?

地震保険の保険期間は1年以上、最長5年。保険期間が長いほど割引率が大きくなり、5年で一括払いなら、1年の保険料の4.45倍。つまり1年分の半分程度(0.55倍)安くなります。また、補償の対象は「建物」「家財」いずれか一方という契約も可能ですから、さらに保険料を抑えたいなら、「家財」に限ることを検討しましょう。ここで言う「建物」とは専有部分の間仕切り壁や扉、床仕上げ、壁紙、キッチン、浴槽など“備え付けられたもの”を指し、「家財」は家具や家電製品、寝具、洋服など“動かせるもの”。前述のように、耐震性や耐火性が高いマンションであっても、転倒や落下など「家財」の損害が大きくなるケースがあるからです。地震保険に加入しない場合は、しっかり貯蓄で備えましょう。

ファイナンシャルプランナー(CFPR) (株)プラチナ・コンシェルジュ 田辺 南香

ライフプランから見た家計管理・保険・住宅などマネーに関するアドバイスや、セミナー・Webサイト・雑誌等で情報発信を行う。
主な書著「"未来家計簿"で簡単チェック! 40代から間に合うマネープラン」(日本 経済新聞出版社)、「隠すだけ!貯金術」「家計簿いらずの年間100万円!貯金術」「女ひとり人生 お金&暮らしの不安が消える本」(KADOKAWA メディアファクトリー)。

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