教育資金を積み立てるための手段といえば「学資保険」がその代表格ですが、ここ数年は「つみたてNISA」や、2016年から始まった子供版の「ジュニア NISA」を利用している人もいるでしょう。
三者三様、メリットもあればデメリットもあり、その特徴に合わせて、向いている人・向いていない人が分かれると思います。
そこでこのページでは、少々強引ではありますが、「学資保険」VS「ジュニアNISA」VS「つみたてNISA」の視点で比較し、それぞれの特徴を紹介します。
堅実さと保障重視の「学資保険」
教育資金の積立といえば、最初に浮かんでくるのは学資保険でしょう。毎月、保険料を払い続けていけば、子どもが進学する時期に合わせて保険金を受け取れる仕組みです(払込方法は年払や一括払もあります)。特徴的なのは、払込期間中に契約者(通常は親)が亡くなった場合は、以後の保険料払込が免除されたうえで、予定どおり保険金を受け取ることができる点。さすが「保険」だけに、いざというときの保障目的も兼ねています。
保険料を口座振替払にしておけば、貯めることが苦手な人でも貯めやすく、満期の時期と受け取れる金額が決まっているので計画を立てやすいというメリットもあります。デメリットとしては、途中で止めることが難しく、解約すると多くのケースで元本割れしてしまうことが挙げられます。
毎月定額の積立で堅実に教育資金を貯められる学資保険ですが、最近の超低金利の影響で返戻率が下がっています。学資保険のなかでも返戻率が高いと言われるソニー生命のIII型ですら、18年間払い込んで103.8%です(契約者30歳男性・子ども0歳の場合)。18年で3.8%ということは、年利回りで考えれば単純計算で0.21%……。定期預金の金利と比べれば高いものの、かんぽ生命などのように元本割れする商品もなかにはあり、以前と比べると魅力が薄くなっているのが学資保険の現状です。
高い収益率が期待できるがリスクもある「ジュニアNISA」
できるだけ増やしたいと考えるのであれば、学資保険よりもジュニアNISAの方が収益性は期待できます。金融機関に子ども名義のジュニアNISA口座を作り、親が子どもに代わって株・投資信託などで運用を行うというものです。年間80万円(合計で400万円まで)の投資額を限度に、投資の運用益や配当・分配金に税金がかからないため有利に増やせます。
毎月決まった金額を投資信託等で積み立てることもできますし、「ボーナス時だけ積み立てたい」「お祝い金を貰った分を多く積み立てたい」も可能。逆に、「何か大きな出費があって家計が苦しいので積立額を減らしたい」など、フレックスな積立にも対応できます。積立目標額をしっかりと定めて、目標を達成できるよう管理していくことが重要です。
ただし、子どもが18歳(高校3年生の1月)を迎えるまでは引き出しができません。どのくらい増やせるかは運用次第ですが、元本割れするかもしれないのがデメリットです。
もう一つ、注意しておきたいのは、「ジュニア NISA」制度は 2023年で終了することになっていることです。延長される可能性もありますが、執筆時現在では発表がないので、 2024年以降は新しい非課税投資枠が作れないことも想定しておく必要があります。
これから投資を始めたい人にも利用しやすい「つみたてNISA」
NISA制度の利用を検討するなら、ジュニアNISA以外に「つみたてNISA」も有効です。つみたてNISAは20歳以上が対象なので、両親どちらかの名義で口座開設することになりますが、年間40万円まで、最長20年間の積立が、2037年まで非課税対象となります。対象となる商品は長期投資に適した投資信託に限られるので、投資に慣れていない人にも比較的始めやすい制度となっています。
学資保険やジュニアNISAにないメリットとしては、途中で解約することができる点でしょうか。家計が急変した場合には一部を解約して利用することもできますし、早めに目標額に達した場合にはそこで積立を終了することも可能です。
もちろん、ジュニアNISAと同様、元本割れする可能性は付いて回ります。ただし投資対象となる商品が、金融庁から許可を受けた投資信託に限られるので、ジュニアNISAに比べるとリスクは小さめと考えられます。
積み立て方法を選ぶポイント
ここまで、学資保険、ジュニアNISA、つみたてNISAのメリット・デメリットを見てきましたが、ここからは、それぞれがどのような人に向いているか考えてみます。
まず、元本割れのリスクがあっても高い収益性を求めたいのか、安定性を重視し、それほど増えなくても確実に積み立てていきたいのか、どちらが自分に合っているか考えてみましょう。
安定性を重視するなら学資保険が向いています。ただし、返戻率や払込(積立)期間をよく検討して、できるだけ有利に積み立てられる商品を選びましょう。
次に、投資経験があるかどうかです。これまでも株や投資信託、債券などで運用を経験していて、資金にも余裕があり、すでにNISA制度も利用しているなら、ジュニアNISAが向いているでしょう。投資経験が全くなく、「投資信託ってなに?」くらいからのスタートの人に、ジュニアNISAの利用はハードルが高い気がします。もちろん、「勉強するからやってみたい」という意欲があるなら話は別です。
複数を組み合わせるミックスプランも
それぞれの金融商品をあえて個別に比較してみましたが、教育資金の積立を一つの方法に限定する必要はありません。目標額が300万円だとしたら、150万円は学資保険で、もう150万円はつみたてNISAで月に8,000円ずつ積立など、複数を組み合わせたミックスプランにするのも一つです。ここで挙げた以外の方法、たとえば定期預金や国債などを利用するのも賛成です。
家計の状況や教育プランは各家庭それぞれですから、夫婦でよく話し合い、一番しっくりくる教育資金計画を立てていただければと思います。自分たちの知識だけでは不安という場合は、ファイナンシャル・プランナーや保険の相談員など、専門家の力を借りることも考えてみましょう。経験豊富なプロなだけあって、話してみるといろんな発見があるものです。