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相次ぐ高額賠償事例! 自転車事故の加害者が負う経済的・社会的リスク

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ここ数年、エコや健康志向を追い風に自転車愛好家が増えてきています。内閣府の調査によると、平成20年の自転車保有台数は約6,900万台で、年によって増減はあるものの、長期的に見れば増加傾向にあります。

図

※出典:平成22年度 自転車交通の総合的な安全性向上策に関する調査 報告書

利用目的は「買物」「通勤」に次いで「レジャー・健康」がランクイン。自転車の利用価値を単なる移動手段以外に見出している人が多いことがわかります。

利用者が増えたことで気になるのが交通事故件数の増加です。分母が増えたのですから分子も連動して増えたと考えるのが自然ですが、実際にはどれくらい変化があったのでしょうか。


怖いのは、自分が「加害者」になる可能性

2013年6月、道路交通法の一部が改正され、自転車は「路側帯の右側通行禁止」「ブレーキ検査の実施」「講習の義務化」等、これまでより厳しく取り締まられることになりました。違反者には罰則も科せられます。

自転車の右側通行は「逆走」扱い。2013年に改正施行された道路交通法のポイント

道交法改正の背景にあるのは自転車による交通事故です。ここ数年の交通事故全体に占める自転車事故(死傷者・死亡者)の割合は2割程度で緩やかに減少していますが、注目したいのは対歩行者、対自転車との事故発生数。平成9年には633件だった対歩行者との事故数は、平成27年では約3.8倍の2,406件にまで増加し、自転車同士の事故も637件から2,519と約3.9倍に膨れ上がっています。

対自動車 自転車相互 歩行者
22年 127,422 3,799 2,770
23年 121,007 3,616 2,860
24年 111,414 3,260 2,625
25年 102,118 3,037 2,605
26年 92,192 2,805 2,551
27年 83,502 2,519 2,406

加害者になることで負う想定外の経済的・社会的リスク

歩行者や自転車同士の事故で自分に過失があり、相手に重篤なダメージを与えてしまった場合、その賠償金額が多額になる事例がちらほら報告されています。

たとえば、2013年7月の神戸地裁では、自転車で62歳(当時)の女性に正面衝突して意識不明の重体を負わせた小学生の母親に対し、合計で約9,520万円の支払いを命じる判決が出ました。この他にも以下のような高額賠償事例が見られます。

高額倍賞事例

賠償額 事故の概要 判決
5,438万円 成人男性が昼間に信号表示を無視して高速度で交差点に進入し、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突した。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡。 東京地裁 平成19年4月判決
5,000万円 夜間、女子高校生が携帯電話を操作しながら無灯火で走行中、前方を歩行中の女性(57歳)に気づかず衝突。 女性には重大な障害が残った。 横浜地裁 平成17年11月判決
4,043万円 男子高校生が朝、赤信号で交差点の横断歩道を走行中、男性(62歳)が運転するオートバイと衝突。男性は頭蓋内損傷を負い13日後に死亡した。 東京地裁 平成17年9月判決
3,138万円 男子高校生が朝、自転車で歩道から交差点に無理に進入し、女性(60歳)が運転する自転車と衝突。女性は頭蓋骨骨折で9日後に死亡した。 さいたま地裁 平成14年2月判決
3138万円 夜間、男子中学生が無灯火で自転車を走行中、対面から歩いてきた女性(75歳)と正面衝突。女性には重大な障害(後障害2級)が残った。 さいたま地裁 平成14年2月判決

自転車事故の加害者になって負うのは民事責任による経済的リスクだけではありません。場合によっては重過失致死傷罪(5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金)や、過失傷害罪、道路交通法違反の刑で刑事責任を問われることも十分にあり得ます。

免許もなく、誰でも気軽に乗れる自転車だけに甘く見てしまいがちですが、自転車も車やバイクと同じく「凶器になる」と認識するべきでしょう。

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