団体信用生命保険(以下、団信)は、住宅ローンを利用する人が金融機関を通じて加入する生命保険です。受け取れる保険金額が時間と共に少なくなっていくという形式は、収入保障保険に似ています。
ここでは団信と収入保障保険の関係について取り上げます。団信そのものについての詳細は、こちらのページをご覧ください。
団信と収入保障保険は両方入らなくてはならないのか?
団信は、もしものことがあっても住宅ローンの返済に困らないように入るものです。ほとんどの民間の金融機関は、団信への加入を住宅ローンの利用条件としていますから、住宅ローンを利用している人は必ず生命保険に入っていると言えます。
すると、そのうえで収入保障保険に加入すると生命保険がダブるのでは?という疑問が出てきます。もしかすると、団信に入っていれば収入保障保険は必要ないのではないでしょうか?
結論から言いますと、団信に入っているから収入保障保険は不要、とは言えません。
ですが、団信と収入保障保険にダブりが生じる可能性があるのも事実。正解は、ダブらないように保障額を調節して収入保障保険に入る、ということになります。
団信が収入保障保険の代わりにならない理由は、団信はあくまでも住宅ローンの残りを完済するためのものだからです。団信に入っていれば、住宅ローンを支払っている人(一家の収入源)に万一のことがあっても、住宅ローンの残債は団信の保険金によってまかなわれ、今後のローン返済に困ることもなければ、住まいを失う心配もありません。
しかし、ローン返済以外の生活費などが保障されるわけではありません。遺族年金などの公的保障や、貯蓄だけでなんとかできない場合、生活費については別に死亡保障が必要となるでしょう。
ただし、死亡保障はいくら必要か?を考えるとき、団信に入っているなら、住宅ローンの支払いについて考える必要はなくなります。すでに団信に入っている人が収入保障保険にも入る場合、収入保障保険の保障額から住宅ローン返済分については抜いて設定しないと、オーバースペックになるということです。
収入保障保険のほうが40万円も得する?
民間の金融機関で住宅ローンを利用する場合、団信への加入が必須条件になっていることが多いです。
一方、住宅金融支援機構によるフラット35を利用するなら、団信への加入は任意で、必須ではありません。では、このとき、任意に団信に加入するのと、収入保障保険を団信代わりに利用するのとでは、どちらがいいのでしょうか?
住宅金融支援機構のシミュレーションを使って、検証してみました。
- 返済方法:元利均等
- 返済期間:35年
- 借入金額:3,000万円
- 借入金利:1.10%
- 特約料総支払額:200万1,200 円 ※特約料とは団信の保険料のことです
35年間で支払う保険料総額がおよそ200万円です。収入保障保険だとどうなるでしょうか。上記の条件の住宅ローンは、毎月返済額がおよそ10万円ですので、保険金が月額10万円の収入保障保険の保険料を、ある保険会社のシミュレーションを使って調べました。
- 被保険者:男性30歳
- 保障額(月額):10万円
- 保険期間:35年(65歳満了)
- 月払保険料:3,760円
- 払込保険料総額:157万9,200円
結果、収入保障保険のほうが安くなりました。この例では総額50万ほどの差になりましたが、健康体割引などで収入保障保険の保険料をさらに下げられるなら、いっそう差が開く可能性もあります。
しかし、被保険者を35歳にして見積もりし直してみると、意外な結果が出ます。
- 被保険者:男性35歳
- 保障額(月額):10万円
- 保険期間:35年(70歳満了)
- 月払保険料:5,560円
- 払込保険料総額:233万5,200円
収入保障保険の方が約30万円も高くなりましたね。
これは団信が、 保険料の算出に年齢を考慮していないため、若い人ほど安くなる傾向があるということです。30代前半では収入保障保険の方が安く、中盤あたりからそう変わらないか、高くなると考えられます。もちろん保険商品によって違いますし、前述したように健康体割引などが適用されるかによっても変わってきますが、加入年齢が大きく関係することは間違いありません。
まとめ
以上から、フラット35の団信を利用するにあたって、契約者が30歳前半など年齢が若い場合は、収入保障保険の方が有利になる傾向があると考えられます。
ただし注意も必要です。当然ながら、収入保障保険は住宅ローン専用の保険ではないため、受け取った保険金をそのまま住宅ローンの残債に充てるには面倒な手続きも発生します。
両者のメリット・デメリットをまとめると次のような感じでしょうか。
団信
【メリット】
- 住宅ローン残債を間違いなく完済できる
- 死亡保険金は保険会社 → 金融機関へと直接支払われ、手続きが簡単
【デメリット】
- 保険料はローン残高に応じて変わるため、初年度は高く、負担が大きい
- 保険料は年払いのみなので、まとまった金額が必要
- ローンを繰り上げ返済したとしても、年払いで払済みの分は返却されない
- 生命保険料控除に利用できない
収入保障保険
【メリット】
- 若い人なら保険料が安く、健康体割引などでさらに減額できる可能性がある
- 部位不担保など、健康に問題のある人でも加入できる枠がある
【デメリット】
- 死亡保険金は保険会社 → 受取人の流れで渡り、金融機関への返済は遺族が直接手続しなくてはならない
- 受け取った保険金は相続税の対象になり、相続内容によっては税金を支払う必要あり
- 「相続届」のほか、「遺産分割協議書」などの書類を金融機関から求められることもある
- 住宅ローンの月額返済額と収入保障月額を同じにすると一括返済ができない(足りない)。契約時点で過不足なく設定することが大事
※別サイト『住宅ローンの手引き』でも解説していますので、よろしければそちらも参考にしてください。