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医療保険は損をする? 必要な人、不要な人の違いを徹底考察

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民間の医療保険は、その必要性がしばしば議論の対象になります。医療保険という商品の構造に欠陥がある(と言われている)のと、日本の健康保険制度が優秀すぎるために巻き起こる議論ですが、本当のところはどうなのでしょうか?

ここでは、医療保険を取り巻く問題をいくつかの視点で考えたうえ、必要な人・不要な人の違いを考察します。

なぜ医療保険は役に立たないと言われるのか?

冒頭で触れたとおり、医療保険がいらないと言われるのには主に2つの理由があります。一つは商品構造の問題、もう一つは公的保険制度の存在です。

「入院中心の保障」が時代にそぐわなくなってきた

まずは、商品構造の問題から見ていきましょう。

一般的に、医療保険の主契約は『疾病(・災害)入院給付金』と『手術給付金』です。「入院1日につき5,000円」「入院中の手術には5万円、外来だけの手術なら2万5,000円」など、支払事由には「入院したか否か」が大きく関わってきます。

imageところが近年、政府は医療費の抑制や医療連携の明確化のもと、通院治療や在宅療養を強化するとともに、入院日数の短縮化に乗り出しました。厚生労働省『患者調査の概況』によれば、2011年の平均在院日数は、病院全体で34.3日、一般診療所では17.5日と、年々、短くなっています。

つまり、“入院してなんぼ”の医療保険なのに、医療情勢に押される形で早期退院させられるケースが増えてきたことから、「思ったよりも給付金を受け取れない」「支払った保険料に比べてリターンが少ないなら貯金した方がマシ」といった不満がささやかれるようになったのです。

契約者には嬉しくない「1入院」の定義

医療保険には、1度の入院につき最大何日まで保険金を支払うかの上限が定められています。「1入院60日」の保険なら、入院61日目からは保険金を受け取れなくなるということです。

ここまではいいのですが、この1入院は、一般的に、「同じ病気が治るまでの1度の入院」と定義されている点に注意が必要です。

たとえば、何らかの疾病で40日間入院した人が、一度は退院したものの、再発して再入院した、または、その疾病に関連する別の病にかかって入院した場合、「前回の疾病が完治していない」と見なされ、1度目の入院としてカウントされてしまうのです。「1入院60日」の保険に入っている人が、1度目の入院が40日間、再発による2度目の入院が30日間だった場合、10日間の入院給付金は限度日数オーバーで受け取れないということです。また、商品によっては、再入院は理由にかかわらず1入院扱いになるものもあります。

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一応、退院から180日以上経過していれば別々の入院として扱われる決まりになっていますが、再発の可能性を含んで退院したような人が、半年間も無事な状態でいられるとは考えにくいでしょう。先述した入院日数の短縮化のあおりを受け、入院治療が必要な状態なのに、病院側の都合で退院させられるケースも併せて考えると、1入院の決まりが契約者に優しくないことが分かります。

※1入院については、医療保険とは? 医療保険の仕組みを徹底解説で詳しく解説しています。

支払事由のハードルが高すぎる特約

基本保障ではカバーしきれないリスクに対応するための特約ですが、なかには支払事由を満たす条件が高すぎるため、結局受け取れず、実質は”ただの飾り”に近いものがあると言われています。

よく指摘されるのは『三大(特定)疾病保障特約』の脳卒中・急性心筋梗塞で、約款に定められている「所定の状態」というのが、ほとんど寝たきりのような状態が60日間継続している場合を差していることがあり、確率的に稀なケースの典型だと言えます。

最近でこそ支払事由が緩和された特約が登場していますが、上記のような、いざというときに使い勝手の悪い特約もあるということです。

※知らなきゃハマる、三大(特定)疾病保障特約の落とし穴で詳しく解説しています。

自己負担額を大幅に軽減する高額療養費制度の存在

ここからは、公的保険制度の存在が、医療保険不要論のエビデンスになっている見方について解説します。平たく言うと、日本の健康保険が頼もしすぎるため、民間の医療保険に頼る必要性が薄いのではないか、という意見です。

『高額療養費制度』はその代表のような存在で、これは、1ヵ月にかかった治療費の自己負担額が、国が規定する上限を超えた場合、その超過分は国が肩代わりする制度です。上限額は年齢と所得に応じて異なりますが(下表参照)、70歳未満の一般所得者(年収約370~約770万円)の場合、1ヶ月にかかる医療費は9万円ほどで済むように設計されています。4回目(4ヵ月目)の利用時からはさらに負担が減り、一律4万4,400円にまで下がります。

70歳未満の場合
適用区分 自己負担限度額(1ヵ月)
区分【ア】上位所得者
年収約1160万円以上
(健保:標準報酬月額83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円以上)
25万2,600円+(総医療費-84万2,000円)×1%
年4ヵ月目の多数該当より一律14万100円
区分【イ】上位所得者
年収約770~約1,160万円
(健保:標準報酬月額53~79万円
国保:旧ただし書き所得600~901万円)
16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1%
年4ヵ月目の多数該当より一律9万3,000円
区分【ウ】一般
年収約370~約770万円
(健保:標準報酬月額28~50万円
国保:旧ただし書き所得210~600万円)
8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%
年4ヵ月目の多数該当より一律4万4,400円
区分【エ】一般
年収約370万円未満
(健保:標準報酬月額26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下)
5万7,600円
年4ヵ月目の多数該当より一律4万4,400円
区分【オ】低所得者
住民税非課税の世帯
3万5,400円
年4ヵ月目の多数該当より一律2万4,600円

もちろん9万円は大金ではありますが、所得から考えると捻出できない額ではなく、「高額療養費制度がある限り治療費に押し潰されることはない」と考えられています。

医療費の自己負担を大幅に軽減。高額療養費制度とはで詳しく解説しています。

収入減は傷病手当金でカバーできる

病気やケガで満足に働けなくなることで、収入が減る、またはストップしてしまう恐れがあるため、この不足分を補うために医療保険に加入している人もいるでしょう。確かに収入が減ると、治療費どころか退院後の生活も危うくなり、特に家族を養っている人は大ピンチです。

しかし、収入減に対するリスクは、『傷病手当金』を利用すればそこまで心配する必要はないという意見があります。病気やケガなどで就業できず、事業主から十分な報酬が支払われない場合、従業員は健康保険から手取り額の約7割を最長1年6ヵ月まで請求できることになっているからです。

会社員に限って利用できる制度ではありますが、高額療養費制度と並び、医療保険不要論の拠り所になっている制度です。

病気や怪我で会社を休んだら傷病手当金を申請しようで詳しく解説しています。

まとめ1.医療保険が不要なのはこんな人

以上から、医療保険が必要ないと思われる人、または、加入すると損をしたと感じる人は次のような人たちです。

  • 医療保険で元を取りたいと考える合理的な人
  • (少々の治療費なら問題ない)家計に余裕のある人
  • 計画的に貯蓄できる人
  • 公的保険制度だけでカバーできる会社員の人
  • 高額な先進医療費など万一の経済リスクを切り捨てできる人

今のところ、医療保険で得られるリターンが多くないのは確かなことなので、経済的に余裕がある人、毎月一定の金額をコツコツ貯蓄できるような人は、わざわざ保険に頼る必要は少ないでしょう。

ただ、保険が効かない先進医療のなかには、一度の治療で200万円以上かかるものもあります。この負担をカバーする『先進医療特約』は欲しいところですが、『先進医療技術の実績報告(厚生労働省)』に目を通してみると、高額な先進医療を受療する確率は極めて低いことが分かることから、必ずしも必要ではないという声が上がっています。

※先進医療特約については、人気の先進医療特約は本当に必要なのか?で詳しく解説しています。

まとめ2.医療保険が必要なのはこんな人

逆に、医療保険に入っても損はしないと思われる人は次のような人たちです。

  • まとまったお金を捻出できない人
  • 計画的に貯蓄するのが苦手な人
  • 公的保険制度の未来に不安を感じている人
  • 自営業で公的保険制度に物足りなさを感じている人
  • 子供の学費がかかる間など、期間限定的に「収入を落としたくない」人
  • 万一の先進医療に備えたい人
  • 保険に加入していないと不安な人

image当然ですが、金銭面に不安を感じている人たちです。公的保険制度の利用を前提にしても家計に余裕がない人や、傷病手当金を利用できない自営業の人にとって、医療保険は不要とは言い切れないでしょう。また、特に生活に困っているわけではない人でも、「子育て中だけは収入を不安定にしたくない」という理由で定期型の医療保険に加入するケースはたくさんあります。

先進医療については不要論者と逆で、受療する確率が低いからこそ、先進医療特約の保険料は月払100円程度に設定されています。年間約1,200円、10年間払い続けても約12万円の掛金で、もしものときは通算1,000万円から2,000万円もの負担をカバーできるのですから、ここに魅力を感じるのも納得できます。

医療保険不要論の核になっている公的保険制度については、超高齢社会で膨らみ続ける医療費問題に押されて改悪される可能性は否定できず、国に頼りっきりで大丈夫なのか?と不安を持つ人がいます。このように、無保険でいることに不安を感じる人たちにとって、医療保険は安心というお守りとして機能すると思われます。つまり「損をしない」とは、金銭面に限らず、「損をした気にならない」という精神面の負担を和らげる役割もあるということです。

ただし、先述したとおり、現行の医療保険は商品構造に問題のあるものも見られることから、保険選びの目利きは必要です。

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