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「医療保険はいらない」と言われる理由は?不要論の根拠を解き明かす

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民間の医療保険は、その必要性がしばしば議論の対象になっています。医療保険という商品の構造に欠陥がある(と言われている)のと、日本の健康保険制度が優秀すぎるために巻き起こる議論ですが、本当のところはどうなのでしょうか?

ここでは、「医療保険不要論」で必ず出てくると言っていい代表的な5つの根拠と向き合い、できる限りはっきりとした結論を出したいと思います。

なぜ医療保険は役に立たないと言われるのか?

冒頭で触れたとおり、医療保険がいらないと言われるのには主に2つの理由があります。一つは商品構造の問題、もう一つは公的保険制度の存在です。

(1)「入院中心の保障」が時代にそぐわなくなってきた

まずは、商品構造の問題です。

一般的に、医療保険の主契約は『疾病(・災害)入院給付金』と『手術給付金』です。「入院1日につき5,000円」「入院中の手術には5万円、外来だけの手術なら2万5,000円」など、支払事由には「入院したか否か」が大きく関わってきます。

ところが近年、政府は医療費の抑制や医療連携の明確化のもと、通院治療や在宅療養を強化するとともに、入院日数の短縮化に乗り出しました。厚生労働省『患者調査の概況』によれば、2014年の平均在院日数は、病院全体で33.2日、一般診療所では17.4日と、年々、短くなっています。

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つまり、“入院してなんぼ”の医療保険なのに、医療情勢に押される形で早期退院させられるケースが増えてきたことから、「思ったよりも給付金を受け取れない」「支払った保険料に比べてリターンが少ないなら貯金した方がマシ」といった不満がささやかれるようになったのです。

(2)本当に怖い長期入院のリスクに備えられない

医療保険には、1度の入院につき最大何日まで保険金を支払うかの上限が定められています。「1入院60日」の保険なら、入院61日目からは保険金を受け取れなくなるということです。

現状、販売されているほとんどの医療保険は60日や120日までで、これは(1)で説明した「平均在院日数の短縮化」にマッチしていると言えるでしょう。

ここまではいいのですが、この1入院のカウントにはイヤな決まりがあります。1入院とは、「同じ病気が治るまでの1回の入院」とルール付けされていることです。

たとえば、何らかの疾病で40日間入院した人が、一度は退院したものの、再発して再入院した、または、その疾病に関連する別の病にかかって入院したとしましょう。この場合、「前回の疾病が完治していない」と見なされ、1度目の入院としてカウントされてしまうのです。「1入院60日」の保険に入っている人が、1度目の入院が40日間、再発による2度目の入院が30日間だった場合、10日間の入院給付金は限度日数オーバーで受け取れないということです。

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一応、退院から180日以上経過していれば別々の入院として扱われる決まりになっていますが、再発の可能性を含んで退院したような人が、半年間も無事な状態でいられるとは考えにくいでしょう。前述した入院日数短縮化のあおりを受け、入院治療が必要な状態なのに病院側の都合で入退院させられるケース(ベッドの回転率を上げた方が儲かる)も併せて考えると、1入院の決まりが契約者に優しくないことが分かります。

カルテ上では短期入院なのに、医療保険の約款上では長期入院扱いになるケースがある……。このことから、1入院60型日や120型ではいざというとき頼りにならないという声があります。かといって730日型や1,000日型の医療保険が”買い”かというと、「保障日数が長いぶん保険料が高くなるため微妙」というのが不要論者の意見です。

(3)支払事由のハードルが高すぎる特約たち

基本保障ではカバーしきれないリスクに対応するための特約ですが、なかには支払事由を満たす条件が高すぎるため、結局、給付金を受け取れず、実質は”ただの飾り”に近いものがあると言われています。

よく指摘されるのは『三大(特定)疾病保障特約』の脳卒中・急性心筋梗塞で、約款に定められている「所定の状態」というのが、ほとんど寝たきりのような状態が60日間継続している場合を差していることがあり、確率的に稀なケースの典型だと言えます。

最近でこそ支払事由が緩和された特約が登場していますが、上記のような、いざというときに使い勝手の悪い特約は少数ではないということです。特約に惹かれて加入した人にとっては、期待はずれを通り越して怒りしかないでしょう。

(4)自己負担額を大幅に軽減する高額療養費制度がある

ここからは、公的保険制度の存在が、医療保険不要論のエビデンスになっている見方について解説します。平たく言うと、日本の健康保険が頼もしすぎるため、民間の医療保険に頼る必要性が薄いのではないか、という意見です。

高額療養費制度(正確には高額療養費)はその代表のような存在で、これは、1ヵ月にかかった治療費の自己負担額が一定の額を超えた場合、その超過分は公的保険が肩代わりしてくれる制度です。上限額は年齢と所得に応じて異なりますが(下表参照)、70歳未満の一般所得者(年収約370~約770万円)の場合、1ヶ月にかかる医療費は9万円ほどで済むように設計されています。4回目(4ヵ月目)の利用時からはさらに負担が減り、一律4万4,400円にまで下がります。

70歳未満の場合
適用区分 自己負担限度額(1ヵ月)
区分【ア】上位所得者
年収約1,160万円以上
(健保:標準報酬月額83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円以上)
25万2,600円+(総医療費-84万2,000円)×1%
年4ヵ月目の多数該当より一律14万100円
区分【イ】上位所得者
年収約770~約1,160万円
(健保:標準報酬月額53~79万円
国保:旧ただし書き所得600~901万円)
16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1%
年4ヵ月目の多数該当より一律9万3,000円
区分【ウ】一般
年収約370~約770万円
(健保:標準報酬月額28~50万円
国保:旧ただし書き所得210~600万円)
8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%
年4ヵ月目の多数該当より一律4万4,400円
区分【エ】一般
年収約370万円未満
(健保:標準報酬月額26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下)
5万7,600円
年4ヵ月目の多数該当より一律4万4,400円
区分【オ】低所得者
住民税非課税の世帯
3万5,400円
年4ヵ月目の多数該当より一律2万4,600円

もちろん9万円は大金ではありますが、所得から考えると捻出できない額ではなく、「高額療養費制度がある限り治療費に押し潰されることはない」と考えられています。

(5)収入減は傷病手当金でカバーできる

病気やケガで満足に働けなくなることで、収入が減る、またはストップしてしまう恐れがあるため、この不足分を補うために医療保険に加入している人もいるでしょう。確かに収入が減ると、治療費どころか退院後の生活も危うくなり、特に家族を養っている人は大ピンチです。

しかし、収入減に対するリスクは、『傷病手当金』を利用すればそこまで心配する必要はないという意見があります。病気やケガなどで就業できず、事業主から十分な報酬が支払われない場合、従業員は健康保険から手取り額の約7割を最長1年6ヵ月まで請求できることになっているからです。

会社員に限って利用できる制度ではありますが、高額療養費と並び、医療保険不要論の拠り所になっている制度です。

不要論への不安と反論

以上の不要論は説得力のある内容だと思います。保険を損得で考えるのは議論の余地がありますが、現状の仕組みでは、医療保険から得られるリターン(給付金)は多くないでしょう。

しかし、不要論を唱える人が必ず語る高額療養費制度については反論があります。

高額療養費制度は改悪されないのか?

反論というより不安に近いのですが、高額療養費制度はこのまま存続することができるのでしょうか? 医療費は年々、増加傾向にあり、2015年には過去最高の41.5兆円にまで膨れ上がったという現実があります(2016年は41.3兆円)。

さすがに廃止まではいかないとしても、自己負担限度額が増す恐れは十分に考えられます。それがプラス1万円なのか3万円なのか、またどの区分(所得)の人を巻き込むのかは分かりませんが、改悪される可能性を否定できないなか、公的制度があるから必要ないとまで言いきれるでしょうか?

高額療養費制度の雲行きが怪しくなり、医療保険の必要性を感じたとき、自分が何歳になっているのかも気になります。保険料は年齢を重ねるごとに上がっていくからです。さらに言えば、そのとき医療保険に加入できるほど健康体を保っていられるのかも不安です。

……となると、公的医療制度の改変を見越し、若くて健康なうちに保険に入っておく選択肢はなしではないはずです。

差額ベッドを利用しないと言えるのか?

公的な医療費補助制度は健康保険内の医療にしか使えないため、『差額ベッド(特別療養環境室料)』を利用した場合、そこは自腹を切ることになります。

利用しなければ済む話かもしれませんが、病気やケガの状態によっては人目が気になることだってあるでしょう。また、救急で病院に担ぎ込まれ、空いているのが差額ベッドしかないとき、「嫌なら別の病院に行ってもらうしかない(※厚労省の指導に反する行為)」なんて言われたら、毅然とした態度で交渉できるでしょうか。心身共に余裕のない状態なのに。

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差額ベッド代の料金は上を見るとキリがありませんが、医療保険の入院給付金日額があれば負担はかなり軽減できるはずです。

傷病手当金がもらえない自営業者はどうすればいいのか?

病気休業中でもお手当を保障してもらえる傷病手当金は頼もしい制度ですが、これを利用できるのは会社員だけです。さらに、今は会社員でも、その先もずっと会社員でいられるなんて保証はありません。大企業であっても倒産したり、リストラにあったりするご時世です。

不測の事態で会社員でなくなったとき、自分は何歳で、どういう健康状態にあるのでしょうか。高額療養費の改悪で述べた不安が再びよぎります。

先進医療特約はあってもいいのではないか?

がんの治療に用いる『陽子線治療』や『重粒子線治療』のように、保険が効かない先進医療のなかには200万円以上の治療費がかかるものもあります。先進医療を受ける確率は非常に低いものの、低いからこそ、その特約保険料は月払100円程度に設定されています。

年間約1,200円、10年間払い続けても約1万2,000円の掛金で、もしものときは通算1,000万円から2,000万円もの負担をカバーできるのですから、コストパフォーマンスは高いと思います。

長期入院をカバーできる医療保険なら悪くないのではないか?

高額療養費制度があるといっても、治療が長期に渡ればそれなりの医療費がかかります。本当に怖いのが長期入院をしたときなのであれば、そこをカバーできる医療保険なら悪くないのではないでしょうか。

たとえば、チューリッヒ生命の『終身医療保険プレミアムDX』は、1入院の支払限度日数が最大365日まであります。さらに、『入院給付金免責日数60日特約』という特約を付ければ、1日目~60日目までの入院保障を外すことも可能。まさに長期入院専用の保険にカスタマイズすることができ、同時に保険料の大幅な節約もできます。

他に、楽天生命の医療保険『ロング』も、1入院支払限度日数が61日目~1095日と、長期入院のリスクだけを見据えた設計になっています。

こうした医療保険なら、短期入院の医療費は高額療養費制度や貯蓄で、長期入院は医療保険で対応、という棲み分けができるのではないでしょうか。

結論:結局、医療保険はいる?いらない?

以上をふまえて、医療保険不要論に答えを出すなら次のようになります。

不要な人もいる

保険に頼る必要のない富裕層や、公的保険制度だけで十分と確信している会社員、フリーランスでも「100~200万円なら自由に動かせる」という人には不要です。また、医療保険で元を取りたいと考える人にも不要でしょう。

貯蓄が乏しい人には必要

病気やケガはいつ自分の身に起こるか分かりません。そうした不意打ちのタイミングでお金が必要になったとき、まとまった金額を捻出できない人にとって、保険は救いになると思います。ある程度の蓄えができた後は、次で書く「不安かそうでないか」によるでしょう。

そうはいっても不安という人には必要

貯蓄はしているし、ある程度の額もある。不要論の理屈は理解できるけど、そうは言っても不安という人は、万が一のためのお守りとして加入しておくと良いと思います。不要論への反論のくだりで指摘したように、公的制度改悪への懸念や、将来の健康状態への不安は間違っていないと思うからです。また、子供の学費がかかる間など、「期間限定的に収入を落としたくない」という不安を持っている人もいるでしょう。

支払能力はあるのですから、保険料が安いオーソドックスな保障(1入院60日型・先進医療特約あり)で十分ではないでしょうか。

長期入院に備えたい人には必要

平均在院日数は確かに短くなっていますが、それでも半年以上、病院のお世話になる疾病はあります。

■長期入院になる可能性がある病気とその平均在院日数
病名 平均在院日数(全世代)
統合失調症、統合失調症型障害及び
妄想性障害
546.1日
血管性及び詳細不明の認知 376.5日
アルツハイマー病 266.3日
脳血管疾患 89.5日

※厚生労働省「平成26年(2014)患者調査の概況」より抜粋

こうした長期入院へのリスクに対応できない、また貯蓄を崩したくないという人には必要だと思います。前述したチューリッヒ生命の『終身医療保険プレミアムDX』や楽天生命の『ロング』が合っているでしょう。

どちらも不安を埋めてくれる保険だと思いますが、ロングは先進医療特約を付けられないのが少し心配。終身医療保険プレミアムDXの1入院支払限度日数はロングより少ないものの、先進医療特約はもとより、就業不能年金や退院後通院特約など、特約の選択肢が広いことが特徴です。

このように、自分や家族の価値観、貯蓄額、ライフステージ等によって要・不要は決まります。

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