禁煙治療の保険適用拡大で喫煙者が減少!? 禁煙によるオトク度はいかに?

一昔前に比べて減ったとはいえ、根強く(!)残っている愛煙家の方々。ただ、なかにはカラダに悪いと分かっていても、なかなか止められない人も少なくありません。禁煙できない原因は、それが「ニコチン依存症」というリッパな病気だからです。

とくに未成年期からの喫煙開始は、喫煙期間の長期化や喫煙量の増加を招き、がんや虚血性心疾患などのリスクを高めることが確認されています。なかでも肺がんでは、20歳未満で喫煙を開始した場合の死亡率は、非喫煙者に比べて5.5倍にものぼるといいます。

今回は、そんな若年層に対する喫煙減少の取り組みに関するニュースに注目してみました。

厚労省、禁煙治療の保険適用拡大を検討 20代の喫煙者減狙う

厚生労働省の中央社会保険医療協議会では、喫煙者の「ニコチン依存症」を対象とした「禁煙治療」の公的医療保険の適用を拡大する方向で検討に入った。同省によると、20代のニコチン依存症患者の約8割は、保険適用の対象外になっているという。喫煙歴など保険適用の条件を緩和し、20代の若年層も、自己負担が軽減できる保険適用による禁煙治療を受けやすくする方向で、若い世代の喫煙を減らし、将来の医療費を抑制する狙いだ。

目次

禁煙治療も公的医療保険が使える?

禁煙の方法は大きく3つあります。

  1. 自分の意思で禁煙する
  2. 薬局・薬店で禁煙補助剤を購入して利用する
  3. 医療機関(禁煙外来など)で医師の指導のもと禁煙補助剤(医療用ニコチンパッチ、ニコチンガム、バレニクリン[チャンピックス]など)を利用する

このうち「3」については、2006年4月から公的医療保険が適用され、費用負担の軽減が図られています。

保険適用の対象患者であると認められる条件は、次の4つです。

  • ニコチン依存症に関わるスクリーニングテストでニコチン依存症と診断された
  • ブリンクマン指数(1日の禁煙本数×喫煙年数)が200以上
  • 直ちに禁煙したいと考えている
  • 治療を受けることを文書により同意している

このうちの「2」の基準については、たとえば、たばこを1日1箱(20本)吸っている人の場合、喫煙年数が10年を経過しなければ、対象にならない計算です。そのため、長年、喫煙しているヘビースモーカーの中高年者に比べ、20代の若年者は喫煙年数などが足らず、対象外になるケースが少なくありません。

そこで、厚生労働省では、200以上という条件の撤廃を検討。実現は早くても来年度以降の見通しのようです。

禁煙することメリットは、病気のリスクを低減させることだけ?

厚生労働省の「最新たばこ統計」によると、現在習慣的に喫煙している者の割合は、19.3%。性別にみると、男性30.3%、女性9.8%であり、男女ともに10年間で減少傾向にあります。

やはり、喫煙による病気のリスクの高さなど、健康に対する意識の高まりなどによるところが大きいのでしょう。

私自身はまったくの非喫煙者なのですが、夫は20代の頃からの典型的なニコチン依存症の喫煙者でした。それが私の乳がん罹患を機に、禁煙外来に通院し、3年以上をかけて、なんとか禁煙することができました。夫曰く、禁煙前後を比較すると、ゴハンが美味しく食べられるようになり、体調が良いのが実感できるのだそう。

さらに別の統計では、1日21本以上喫煙する重度喫煙者の割合は、男性15%、女性5%(2011年)となっています。男性の場合、2003年以降、重度喫煙者が減少し、軽度喫煙者(1日1~10本)が増加傾向にあり、とくにたばこ増税による価格の値上げがあった2010年以降は、重度喫煙者の減少が顕著です。

2014年4月の消費税増税によるさらなる価格の値上げを機に、禁煙を検討した人も多いようですので、禁煙した場合にどれくらい節約できるかを試算してみるのも、禁煙のモチベーション維持に役立つかもしれません。

たとえば、1日1箱460円のタバコを喫煙した場合、かかるお金は、460円×365日=167,900円となります。なんと10年間で約168万円が紫煙とともに消えていったことに…それだけのお金をかけて、病気になる要因を自分で作りだしていると思えば、禁煙しない理由はない?かもしれませんね。

非喫煙割引の適用で民間保険もオトクに加入できる

節約できるのは、タバコ代だけではありません。民間保険のなかには、非喫煙者が保険に加入する場合、保険料に「非喫煙者割引」を適用して、通常よりもおおむね20%~50%程度、保険料が割安になる商品があります。

非喫煙者割引とは、優良体割引の一種で、保険会社が定めた非喫煙に関する一定の基準を満たした場合に、生命保険料が割り引かれるものです。「ノンスモーカー割引」と呼ばれる商品もあります。

基準は、保険会社によって異なりますが、過去の一定期間(1~2年など)喫煙していないなどの条件で、実際には「コチニン検査」で唾液の採取をするキットを使用して判定するのが一般的です。

適用となるのは、おもに「定期保険」や「逓減定期」、「収入保障保険」など。保険会社によって対象商品や内容、条件や割引率などさまざまです。

具体的にどれくらい割安になるか、メットライフ生命「無配当平準定期保険」の月払保険料を比較した場合の例を見てみましょう。

<保険金額1,000万円、35歳・男性、保険期間20年の場合>

クラス月払保険料保険料総額(20年) 差額
標準体保険料(スタンダード)3,700円888,000円最大470,400円!   
喫煙優良体保険料(サード)2,780円667,200円
非喫煙標準体保険料(セカンド)2,510円602,400円
非喫煙優良体保険料(ファースト)1,740円417,600円

同社では、喫煙の有無や血圧、身長、体重などの健康状態によって4つのクラスに分類され、最上位のファーストクラスと認められれば、保険料が最大50%以上割り引かれます。

この例では、標準体保険料に比べ、非喫煙優良体保険料の月額保険料は約52%安くなっています。20年間に支払った保険料総額で比較すると約47万円! なお、割引率は年齢・性別・適用されるクラス(保険料率)など、契約内容により異なります。

また、喫煙している時点で健康体割引がある保険商品にすでに加入しておられる場合、禁煙したからといって自動的に非喫煙割引が適用になるわけではありません(更新型の場合、更新時に再度非喫煙に該当するかを確認する保険会社もある)。

しかし、一定の条件をクリアできるのであれば、非喫煙割引が適用になる保険に加入し直すという方法もあります。

ただし、必ずしも加入できるとは限りませんので、新しい保険に加入できたことを確認してから、前の保険を解約等するようにして、くれぐれも‘保険の空白期間’を作らないようにしてください。

参考

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この記事を書いた人

大学卒業後、大手シンクタンク勤務を経て、FP資格を取得。1998年FPとして独立。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CNJ認定乳がん体験者コーディネーター。消費生活専門相談員資格など。新聞、雑誌、書籍などの執筆、講演のほか、個人向けコンサルティングなどを幅広く行う。「夢をカタチに」がモットー。著書に「50代からのお金の本」(プレジデント社)。

黒田尚子FPオフィス

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