定年退職後・老後に向けて検討すべき保険について教えてください。
40代中盤のサラリーマンです。公的年金が期待できないので、退職後に向けて個人年金保険の加入を検討しているのですが、その他の不安(病気や介護)も考えだすとキリがありません。どんな保険をそろえておくのがベストでしょうか?
貯蓄額にもよりますが、年金、医療、介護の3つを押さえておけば問題ないでしょう。
老齢年金が頼りないのはご存知のとおりなので、個人年金保険で補強するお考えには賛成です。病気や介護についてですが、現役世代と老後とでは病院にかかる受療率が違いますし、要介護状態になるといくらお金がかかるか予測がつきにくいので、何らかの対策は打った方がいいですね。
以上から、ここでは年金、医療、介護保障について解説します。
年金保障
年金の受給見込額は、「ねんきん定期便」や「年金ねっと」などで調べることができます。
それまでの生活スタイルや環境にもよりますが、年金収入だけで老後の生活資金をまかなえる人は少ないでしょう。自営業(国民年金加入者)の人は会社員より貰える額が少ないのでなおさらです。
そこで、質問者さんのように、最近は民間の個人年金保険を利用する人が増えてきています。公的年金よりも早く受け取れる商品があるほか、受け取り方も終身型・確定型から選べます。確定型を選んでおくと、自分が死んだ後でも遺族がお金を受け取れるため、残されたパートナーの生活資金になりますよ。また、払い込んだ保険料の一部は所得税の控除になり、節税効果も望めます。
※個人年金に関する詳しい知識は個人年金保険のページで解説しています。
医療保障
厚生労働省の「患者調査」によると、65歳以上の国民1人あたりの医療費は年間約70万円(月額約5万8000円)でした。ただ、これは健康保険が適用される前の額で、実際に窓口で負担する分は以下の表に従って割り引かれます。
年齢 | 負担割合 |
---|---|
64歳未満 | 3割 |
70歳~75歳未満 | 2割 |
75歳以上 | 1割 |
70歳以上の場合、高額療養費制度の上限が低く設定されているため、治療費が高くついても月額4万4400円で済みます。
年齢 | 必要性 | 備考 |
---|---|---|
70歳以上 | 現役なみ所得者 | 外来(個人ごと):44,400円 外来+入院(世帯): 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
一般 | 外来(個人ごと):12,000円 外来+入院(世帯):44,400円 | |
低所得者I(住民税非課税世帯で所得がない) | 外来(個人ごと):8,000円 外来+入院(世帯):15,000円 | |
低所得者II(住民税非課税世帯で「低所得者I」以外) | 外来(個人ごと):8,000円 外来+入院(世帯):24,600円 |
つまり、医療費は思ったよりかからないため、もし医療保険に加入していなくても慌てて探す必要は低いといえます。高齢になってからの加入だと保険料もかなりのものですから。
もっとも、これはあくまで現在の公的制度が持続される前提の話です。今後、70歳以上の自己負担割合が一律2割に引き上げられるかもしれませんし、高額療養費制度の上限が上げられる可能性も十分あります。さらに、健康保険が効かない医療費関連の費用(差額ベッド代、生活用品、家族の通院交通費等の雑費)なども頭に入れると、民間の医療保険があるといろいろ救われそうです。
高齢になってから新規で加入する必要性は低いと思いますが、将来を見越して加入するなら、できるだけ保険料が安い若い間に加入しておくのが賢明です。60歳や65歳までの「有期払い」にすれば、年金収入から保険料を支出する心配もありません。
※このトピックについては、老後の医療保険は必要?でも詳しく解説しています。
介護保障
介護にかかる費用は、生命保険文化センターの調べでは、一時費用(車いすや自宅の改修費など)が平均91万円、継続的にかかる費用が月額7.7万円でした。
介護状態が続く期間が4年9ヵ月ですから、一時費用を合わせた合計はなんと529万8000円。公的介護保険制度や、高額介護サービス費があるおかげで全額を負担するわけではないものの、決して小さな出費ではないため、ある程度の費用を準備できない人は民間の介護保険を検討しておくべきでしょう。最近は公的制度の要介護状態に連動している商品が多く、公的・民間合わせて保険を利用できます。
介護保険全般の知識は介護保険のページで詳しく解説しています。
まとめ
保障 | 必要性 | 内容 |
---|---|---|
年金保障 | 中~高 | 老齢年金の不足分は個人年金保険などで補充する必要あり |
医療保障 | 低~中 | 若いうちに入っていればお得。老後に慌てて加入する必要性は低い |
介護保障 | 中~高 | 莫大な介護費がかかる恐れがあるので備えておきたい |
収入が減るうえ、病気や介護で出て行くお金が増える恐れがあるのが老後です。貯蓄で対応するのが望ましいですが、不足する分は民間の保険を上手く活用するといいでしょう。
ちなみに、死亡保障ですが、子どもが自立した後は必要性が低くなるため、葬儀費をカバーできるくらいのお金があれば十分だと思います。
覚えておきたい:退職後の健康保険
会社員の場合、退職した翌日から健康保険が切れるため、次の保険の加入手続きをする必要がありますが、このときの選択肢は大きく3つあります。
1.国民健康保険に加入する
自営業者と同じく市町村が運営する健康保険に加入する選択です。一般的な選択ですが、国民健康保険は前年の所得や財産などで保険料が決まるため、定年後すぐにこの枠組に移動すると年金収入のわりに高い保険料がかかるデメリットがあります。退職前は必ず市町村の担当窓口に問い合わせ、保険料がいくらになるのか算出してもらいましょう。
2.任意継続被保険者になる
任意継続被保険者とは、退職前に加入していた保険にそのまま在籍することをいいます。在職期間が継続して2ヵ月以上あれば、最大で2年間加入することが可能。既に社員ではなくなっているため、保険料は全額自己負担になりますが、前年の所得によっては国民健康保険より安くなることもあります。その場合、1年間は前職の保険を継続して、翌年以降に国民健康保険に切り替える方法が有効です。
3.被扶養者になる
お子さんが独立している場合や、共働きのパートナーが現役で働いている場合、その健康保険の被扶養者になるという手もあります。年収130万円未満であること、失業保険を受給していないことなど条件はありますが、認められると保険料の負担なしで保険に加入することができます。