“自宅駐車場を貸す”“子どもを預かる”“英語を教える”“家事を行う”など、空いている空間やモノの貸し借りや、自分のノウハウを提供し合うスタイルがインターネットで広がりつつあります。スマートフォンやSNSの普及によって、新たな経済を生み出したシェアリングエコノミーが、一億総活躍社会の実現に向けて大きく貢献されると期待されています。
そんなシェアリングエコノミーに関して、2017年6月1日に次のような記事が出ています。
シェア事業に認証制度、1日開始 官民連携時成長後押し
《要約》民泊やカーシェアといった「シェア事業」に関する国内認証制度が6月から始まる。シェア事業を今後の成長分野と位置づけ、官民で協力して事業環境を整える。新制度を土台にし、大手損害保険会社は専用保険の販売に乗り出す。新たな市場の創出と拡大に向けて、海外企業の呼び込みと日本企業の海外展開の双方を目指す。
(日経新聞 2017年6月1日掲載)
より一層シェアリングエコノミーの普及に官民連携が促進されていく展開です。さて、上記記事に専用保険と記載ありますが、どのような内容なのでしょう? シェアリングエコノミーの実態などと併せて見てみましょう。
シェアリングエコノミーの実態は?
総務省の平成27年度情報通信白書によると、世界のシェアリングエコノミーの市場は2013年に約150億ドルでしたが、2025年には約3,350億ドル規模に成長すると予想がされています。以下表は主なシェアリングエコノミー事業の一例ですが、「Airbnb」や「Uber」などはご存知ある方も多いことでしょう。
■世界での主なシェアリングエコノミー事業
日本でも様々なシェアリングエコノミー事業がスタートしています。シェアリングエコノミー協会では、モノや空間、スキルや移動、お金などの5つの分野に分類しています。例えばいらなくなったモノを「mercari(メルカリ)」で売るという発想がここまで浸透するとは予想していませんでしたが、これがインターネット、スマートフォンなどの効果なのでしょうね。
このように、使われていなかった資産を活用される仕組みはメリットである反面、見知らぬ人同士がやり取りするために、抵抗あるという方も多くいるようです。
シェアリングエコノミーを利用したくないNO.1の理由とは?
総務省の平成27年度情報通信白書によると、シェアリングエコノミー型サービスについて「あまり利用したくない」あるいは「利用したくない」と答えた人にその理由を尋ねた結果があります。利用したくない理由は各サービスともに「事故やトラブル時の対応に不安があるから」が5割から6割で最も高い結果が出ています。
そんな中、シェアリングエコノミー協会では6月1日に認証制度を開始し、認証された事業主には安全・安心の仕組みが担保されたサービスとしての差別化や、保険料の割引、スムーズな各自治体との連携、海外展開への寄与をメリットとして掲げています。
さて、そのメリットの一つである保険料割引となる保険とはどのようなものでしょうか?
シェアリングエコノミーの認証事業者向けの専用保険とは!?
保険としては、シェアサービスのプラットフォーム事業者(シェアリングエコノミー協会認定企業)と実際にサービス提供する個人の両方を対象に、サービス提供に伴う対人・対物事故が生じた際に負う法的な賠償責任を補償する保険です。サイバー攻撃によって発生した情報漏えいや他人の業務の阻害に対する賠償責任のほか、事故対応に必要な各種費用まで補償し、シェアリングエコノミー協会認定事業者には最大60%の保険料割引を提供するそうです。
■主な取扱保険会社:東京海上日動火災保険、三井住友海上、損保ジャパン日本興亜、あいおいニッセイ同和損害など
- 2016年7月 東京海上にて専用賠償保険として販売開始
- 2016年8月 三井住友海上では「サイバー保険」として発売
- 2016年10月 損保ジャパン日本興亜の「オール・インワンパッケージ(利用者補償型)」発売
- 2016年11月 あいおいニッセイ同和「シェアビジネス総合補償プラン」発売
- 2017年 6月 損保ジャパン日本興亜でリニューアル「オールインワンパッケージ(認証制度対応型)」販売開始
取扱保険会社の一つである損保ジャパン日本興亜の広報室の方によると、福島県喜多方市と駐車場シェアの実証実験を共同で行い、60%の割引適用に結びついた実績もできたようです。しだれ桜並木で知名度が高い場所で、花見シーズンは全国から訪れる観光客でいっぱいになる駐車場問題を、空いている駐車スペースを来訪者に貸し出すことで問題の解消を試みられました。
花見シーズンの一定期間の実験であるものの、これこそが官民一体となった遊休資産の活用でありますね。その他の割引については現在検討中とのことです。
シェアリングエコノミーの認証事業者向けの今後の方向性は?
今後の方向性としては、従来の空間分野(民泊や駐車場、会議室)・スキル分野(家事や育児代行サービスなど)に加えて、移動手段としてサイクルシェアを引き受け対象に追加するそうです。シェアリングエコノミーについては今後も広がっていくことが予想される上で、モノとお金、他の移動手段などの分野についても引き受け対象の拡大検討や自治体との連携、制度拡大に受けて尽力されていくとのことでした。
シェアリングエコノミー協会の会員となり、認証制度の説明を聞いた空間シェアリング事業の社長に意見をお聞きしてみたところ、
「空間や託児サービスのシェアをする上で、個人間リスクは免責としているケースも多い。いわゆるトラブルがあっても自己責任ですね。ただし事故に結びつくような車などになるとそうは言っていられないので、補償を考えておかないかもしれないと感じましたよ」
とのご意見を頂けました。
リスクカバーの一環として保険効果も下支えに、より安全・安心で新しい価値を生み出すシェアリングエコノミーサービスが増えていって欲しいと期待するとともに、今後の動向もチェックしていきたいと思います。
参考
- シェアリングエコノミー検討会議 中間報告書 内閣官房情報通信時術2016年11月
//www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/shiearingu/chuukanhoukokusho.pdf
- 喜多方市 シェアリングエコノミー
//www.sjnk.co.jp/~/media/SJNK/files/topics/2016/20170314_1.pdf