日本初の「おくすり保険」が登場! どんな方に向いている?

日本初の「おくすり保険」が今年5月から発売されています。これは一般の医療保険ではカバーできなかった、生活習慣病の薬剤治療(入院・通院問わず)に対応した保険です。最近の医療事情も確認した上で、「おくすり保険」の概要等見てみましょう。

メディケア生命、薬剤治療保険を発売

《要約》メディケア生命保険は17日、がんや糖尿病など9つの疾病の薬剤による治療を保障する保険を5月13日に発売すると発表した。従来型の医療保険は入院や手術を保障するものが多く、入院や手術をせず通院による薬剤治療には対応しきれていなかった。医療技術が進み、入院の短期化や通院治療が主体となってきた実態にあわせる。 入院や手術を伴うことの少ない動脈・静脈疾患、糖尿病などの治療が対象。約1400品目の薬剤に対応する。

目次

入院日数は年々短くなっている

最近の入院や通院事情について、厚生労働省が3年に1回行う「患者調査」の2017年度版を確認してみましょう。全ての病気やケガの平均入院日数は29.3日です。1990年の調査時の44.9日に比べて年々減少し、この27年間で平均入院日数は約15日も短くなっています。

入院が短期化している要因の一つとして、身体へのダメージが少ない内視鏡や腹腔鏡手術など高度な医療技術が多く使われるようになったことが挙げられ、早期退院が可能となっています。

入院日数

出典:厚生労働省「2017年患者調査」を参考に筆者が作成

また疾病別に平均入院日数を比較すると、脳血管疾患は78日と長期に渡る入院となるものの、がんでの入院は平均日数17日と短いことがわかります。心疾患などでは20日以下、糖尿病やほかの疾病入院でも30日前後と、9疾病などの病気でも、平均した入院期間は短くなったことを実感します。

傷病別

出典:厚生労働省の「2017年患者調査」より著者が作成

このように、入院が短期化したことで治療費が安くなると良いものの、高度な治療を取り入れることで逆に高額になりがちです。

入院や手術費用の一部をカバーするために医療保険に加入している方は少なからずいらっしゃるでしょうが、このように年々入院期間が短期化すると給付される金額が少なくなるため、最近では入院時に一時金が付帯できる商品なども増えています。

たった1回の投薬で3,000万円!? 高額治療費の公的保険適用

また、薬剤費用も最近ではかなり高額な商品も開発されているようです。

白血病の治療薬として、1回の投薬で約3,000万円以上もかかる「キムリア」が、公的な医療保険で2019年5月から利用できるよう厚生労働省にて決定しました。高額な治療薬も公的保険適用だと3割(年齢によって1、2割)負担、そして高額療養費制度範囲内と自己負担はかなり少なくすみます。その他にも肺がんに効果のある「オプジーボ」(3,500万円)やC型肝炎に効く「ハーボニー」などが次々と登場し、高額薬剤で治療という傾向も少しずつ出てきているようです。

さて、実際に薬剤治療は経済的にはどのくらいかかるのを見てみましょう。

9疾病に罹患した場合の経済面での負担は?

20歳以上の9疾病(がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病、脂質異常症、動脈・静脈疾患、腎疾患、肝疾患、膵疾患)患者である男女約9,067名を対象としたメディケア生命による「2018年 9疾病患者へのアンケート調査」を参考に見てみましょう。

9疾病の通院による薬剤治療の費用は、以下表が平均自己負担額となります。がんでは月に約6.4万円、糖尿病では月2.2万円と費用の差も大きいですが、経済的負担は大きいです。

出典:株式会社JMDC「レセプトデータ(2017年11月)よりメディケア生命算出 自己負担額は3割、70歳未満、年収370万円~約770万円の場合。実際の負担額はケースにより異なる。

出典:株式会社JMDC「レセプトデータ(2017年11月)よりメディケア生命算出
自己負担額は3割、70歳未満、年収370万円~約770万円の場合。実際の負担額はケースにより異なる。

では薬剤治療期間はどのくらいでしょうか? 症状によっての違いがありますが、メディケア生命の上記アンケート結果によると、治療期間が5年以上かかる割合が34%超える結果が読み取れます。

通院での薬剤治療も短期間であれば経済的負担は少ないものの、糖尿病などは治療期間が長くなるケースも多いようです。高額療養費の範囲内で長期間の負担が続くというケースは、今までの入院や手術を保障する医療保険ではカバーできなかったところです。そんな中に誕生したのがくすり保険だそうです。

出典:メディケア生命HPより「2018年9疾患者へのアンケート調査より」 

9疾病の薬剤治療期間
出典:メディケア生命HPより「2018年9疾患者へのアンケート調査より」

「おくすり保険」の概要とは

9疾病や3疾病の薬剤治療において、入院や手術以外に通院での薬物治療も増加し、9疾病などは長期化する反面、医療保険の場合だと通院特約は入院後での条件がついているなど、従来の医療保険ではカバーしきれない薬剤治療を保障する保険です。

「おくすり保険」はすべての薬に対しての保障されるのではなく、9大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病、脂質異常症、動脈・静脈疾患、腎疾患、肝疾患、すい疾患)、もしくは3大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)の治療を対象とした薬剤が対象となります。

おくすり保険「メディフィットEX」の概要
主契約9疾病または3疾病の所定の薬剤治療を保障。(入院・手術を問わず)
・抗がん剤治療給付金 支払回数無制限 (同一月に1回10万円)
・特定薬剤治療給付金 60回型と120回型 
契約年齢0歳~75歳
支払対象薬剤 Ⅱ型*がん(上皮内がん含む)抗がん剤(ホルモン剤含む)
心疾患、脳血管疾患、 動脈・静脈疾患抗血栓薬
*一部アスピリン等一部薬剤除く
腎疾患免疫抑制薬
肝疾患抗肝炎ウィルス薬
膵疾患蛋白分解酵素阻害薬
糖尿病インスリン・GLP-1受容体作動薬
脂質異常症PCSK9阻害薬
保険料9疾病(支払対象薬剤Ⅱ型) 60回型 終身保障 終身払の場合
抗がん剤治療給付金額:月10万円、特定薬剤治療給付金額:月5万円
20歳:1,760円(男性)1,715円(女性) 
30歳:2,680円(男性)2,550円(女性) 
40歳:4,230円 (男性)3,805円(女性) 
備考支払対象になるかをWEB「医薬品ナビ」で検索して請求できる

*Ⅱ型は9疾病、Ⅰ型は3疾病。支払対象薬剤Ⅱの場合は約1400品目。(2019年3月時点)

「おくすり保険」はどんな方に向いているのか?

既に医療保険に加入している方で、通院治療を重点にカバーしたいと思っている方や、若い方でも生活習慣病を危惧している方に向いているようです。

ただ個人的な見解では、生活習慣病が気になってくる40代の保険料としては安くないため、既に加入している死亡保険や医療保険料とのバランスを考慮すると優先順位は低くなってしまうでしょう。できたら貯蓄を準備していく方が効率的かもしれません。

ただ糖尿病などを危惧して保障を検討したい方は、保障額を半分にすることで保険料も半分にすることが可能です。

私自身はこの「おくすり保険」がたくさんの人に広まって欲しいと思っています。

なぜなら、“糖尿病など生活習慣病になると通院での薬剤治療は長期でお金がかかるかも!”と知ってもらいたいのです。そうすることで、早い段階で食事制限や運動療法などの意識をしていく方がふえて、病気になる方を減らすことに繋がります。

日本には糖尿病の有病者740万人ですが、実は予備軍がまだ880万人もいるのです。予備軍の方は日頃からの食事や運動によっても改善できるので各々で意識していくことが大事なのだと思います。厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトも参考にしてみてください。:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-005.html

「おくすり保険」につきましても、今後は対象疾病なども広げた第2弾、第3弾も変化していくことに期待したいと思います。

参考

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この記事を書いた人

大手損害保険会社を経た後にFPとして独立し、現在は企業研修やマネーセミナー講師、個人相談、執筆等で活躍する。女性がいつまでもキラキラ輝くための「稼ぎ続けられるキャリア形成&一生活用できるマネー知識」の普及を推進中。K’sプランニング

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