4月から「お薬手帳」持参なら薬代がオトクに!さらに医療情報共有で利便性も向上?

今年は2年に1度の診療報酬改定の年。いつも改定の議論の際には、なにかと話題にのぼる「お薬手帳」ですが、今回の改定によって、薬を処方してもらうときに、薬局に持っていかなければ、損をすることになりそうです。

変わる医療の値段=4月から、負担に影響も-「かかりつけ」促す

《要約》2016年4月以降、公的保険が適用される医療サービスや薬の値段である診療報酬が変わる。

処方薬を記録した「お薬手帳」を持参した場合、薬剤師が患者に服薬指導などを行った場合の診療報酬である管理指導料が120円下がる。

患者が飲む薬の情報を一元管理する「かかりつけ薬局」の普及につなげるのが目的。6カ月以内に同じ薬局を利用することや、大病院の前などにある、いわゆる門前薬局ではなく、地域の薬局を利用することなどが条件。

持参しなかった場合に比べて、自己負担3割なら40円程度安くなる。

目次

お薬手帳の活用で残薬、重複投薬の管理や不適切な多剤投薬を減少

そもそも「お薬手帳」の普及のきっかけとなったのは阪神淡路大震災。災害時に服用している薬が分からず、適切な処方がされなかったという経緯があります。

お薬手帳は、自分が使っている薬の名前・量・日数・使用法などを記録するもの。副作用歴、アレルギーの有無、過去にかかった病気、体調の変化や、市販されている一般用医薬品(OTC医薬品)などについても記入できます。

もちろん、私も活用しています。使い始めたきっかけは、子どもが生まれてからでしょうか。

乳幼児は熱を出したり、湿疹ができたり、何かと複数の病院に行く機会も多く、薬を処方されたときの様子や副作用、体重などを細かく書きこんでいた覚えがあります。

私自身も、乳がんの治療を行っていた頃は、さまざまな副作用が出て、頻繁に通院していましたし、アレルギー性疾患の持病があるので、病院を変わったときや他の症状で、複数の診療科を受診する際など、医師に現在の服薬状況を説明するために、必ず持参しています。

その一方で、薬局にいくたびに、新しく手帳を作ってしまい、服薬管理に役立っていないケースや、単に手帳にシールを貼られるだけで、薬剤師の適切なアドバイスを受けていないケースなども少なくないようです。

今回の改定で、お薬手帳を持参した場合に管理指導料がオトクになったのは、医師や薬剤師に手帳を見せて服薬状況を確認してもらうことで、薬の飲み合わせや、残薬・重複投薬、不適切な多剤投薬、長期投薬を減少させるため。

要するに、余分な薬を減らすことで、医療費の適正化につながる狙いがあります。

‘電子版’お薬手帳も4月から診療報酬の加算対象に

最近では、紙媒体の手帳を補完するものとして、パソコンやスマートフォンの専用アプリなどの「電子版」お薬手帳も登場。導入する調剤薬局も増えているようです。

電子版の場合、もち忘れも少ない上、データをネット上に保管するので、長期間保存できますし、災害や手帳を紛失したときなどに便利です。家族の分の服薬管理や飲み忘れ防止のアラーム機能などがついているのも助かります。

4月からは、電子版に関しても、通常のお薬手帳と同等に診療報酬の加算対象になるそう。これで一層、普及が進むかもしれません。

進む医療情報の共有化―処方箋の電子化も解禁に

今回の診療報酬改定では、情報通信技術(ITC)を活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進についても明記されており、医療情報を活用した動きか益々活発になりそうです。

パナソニックヘルスケア(株)は、電子版お薬手帳の情報を、全国の医師、薬剤師、家族などと共有・閲覧できるポータルサイト「chk4.me™(チェックフォーミー™)」を4月より立ち上げました。閲覧者は、特別な端末やソフトウエアなど不要で、どこでも簡単に服用情報にアクセスできます。

これらの情報が入手できるようになれば、たとえば、急に倒れて救急車で搬送されたときに、医療者側がすぐに患者さんの病歴や服用状況を確認することも可能です。

また4月から、医師が出す処方箋の電子化も認められるようになっています。

電子処方箋は、まず医師が、処方箋のデータを地域の専用サーバーに送り、かかりつけ薬局がそのデータを呼び出して患者に薬を出すしくみです。

電子処方箋は、地域の医療機関が患者の情報を共有している地域医療連携ネットワーク(全国200ヵ所)を活用。実施環境の整った都道府県や市町村単位で始まる見通しです。

将来的に、2020年度以降は全国に広げ、患者さんがマイナンバーカードを提示すれば、薬を受け取れるようになるといいます。

メリットとデメリットを把握して、賢く利用することが大事

利用者側としては、このような医療情報の電子化によって、利便性が向上するのは嬉しい反面、個人情報がきちんと管理されるのかどうか気になるのが正直なところです。

個人の病歴や服用状況など、もっともセンシティブな情報だけに、悪用されたり、本人の知らないところで管理されたりするのは気持ちの良いものではありません。

さらに、医療費の増加の大きな要因である高齢者のうち、これらのアプリの活用やしくみについて、どこまで理解し、スマートフォンやタブレッド端末などで利用できるのかといった点も課題でしょう。

ただ、これまで原則禁止とされていた、医師と患者が距離を隔てたところで インターネットなどの通信技術を用いて診療を行う「遠隔診療」の取り組みも加速化するなど、情報ネットワークを活用した医療のスキームの広がりは、時代の流れといえます。

私たちは、利用上の留意点やメリット・デメリットをきちんと把握したうえで、プラスになるものであれば、積極的に取り入れて行く柔軟性を持つ必要がありそうです。

参考

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この記事を書いた人

大学卒業後、大手シンクタンク勤務を経て、FP資格を取得。1998年FPとして独立。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CNJ認定乳がん体験者コーディネーター。消費生活専門相談員資格など。新聞、雑誌、書籍などの執筆、講演のほか、個人向けコンサルティングなどを幅広く行う。「夢をカタチに」がモットー。著書に「50代からのお金の本」(プレジデント社)。

黒田尚子FPオフィス

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