死亡保障の必要額はいくら?モデルケースでシミュレーション

生命保険(死亡保険)に入るとき、死亡保障をいくらにするかは重要なポイントです。保険金額が高くなればそれだけ保険料も高くなってしまいますが、かといって保障額を下げていざというときに結局足りなくなってしまっては意味がありません。

つまり、「万一の場合、いくらお金があったら足りるのか?」をあらかじめ予測しておくことが重要だということです。

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人が亡くなったらどんなお金が必要?

一家の収入を支えていた人が亡くなった場合、必要になるお金は次のようなものが考えられます。

  • 死亡整理金(葬儀費用など、人が亡くなったこと自体によって発生する費用)
  • 今後、必要になってくるお金(子どもの教育費など)
  • 遺族の生活費、住居費など(亡くなる前の状態を維持するためのお金)

「死亡整理金」についてはこちらの記事で詳しく書いていますが、葬儀費用だけならおおむね200万前後あれば安心できそうです。

「今後、必要になってくるお金」について、いくら必要になるかは家庭によってかなり違ってきます。なんにせよ、このお金は、本人が生きていた場合、これから貯蓄によって準備していくことになっていたものであるはずです。ということは、生前と同水準の収入があればいいのですから、遺族の生活費が確保できていればその一部を回せるということになります。

また、教育費を学資保険で準備しておくのは、貯蓄性はともかく、有効活用できます。学資保険は、親が亡くなった場合、受け取れる学資金はそのままで、以後の保険料の払込は免除される仕組みです。

最後に、遺族の生活費。死亡整理金などは生前に貯蓄によって準備することもできますが、継続して発生する生活費のようなお金を貯蓄しておくのは無理があります(それができるためには、つねに収入の半額のお金を使って生活しなければならないことになります)。つまり、これこそ保険によって準備しておくべきものだということです。

前置きが長くなってしまいましたが、それではいくら程あればいいのか、モデルケースの家族で考えてみます。

遺族のためのお金の必要額はこう考える

考えの基本となるのは、「今現在の生活費」です。これがベースとなりますが、そのままの額が必要だというわけではありません。

なぜなら、まず「本人のぶんの生活費はいらなくなる」ことと、遺族年金など、公的に保障される額があるからです。

一般に、夫婦と子どものいる家庭で、夫が亡くなったとしたら、母子の生活費は夫が生前の約7割程度だと言われています。さらに子どもが独立して妻だけになれば、夫が生前の半分程度でよいようです。

普通、家庭の支出の中で、もっとも多いのは住居費になります。持家で住宅ローンに入っていた場合、夫はローン支払いのための生命保険に入っているはずです。ローン残債についてはここから支払われますのでそのぶんの心配はいりません。

賃貸の住まいであった場合は、家賃も見込んでおかなくてはなりませんが、夫が亡くなったら、もっと家賃の安いところに引っ越すとか、妻の実家に住むなどが現実的でしょう。

以上を踏まえて、実際に例をあげて計算してみましょう。

  • 夫35歳(会社員)、妻31歳(専業主婦)、子ども5歳の家族
  • 現在の生活費は月20万円
  • 住まいは賃貸で家賃が月10万円

このように考えて、夫が亡くなった場合に備えて死亡保障を考えるとしたら、いくらにすればいいでしょうか?

1:死亡整理金

葬儀費用などに200万円がかかるものとします。死亡整理金は必ずしも保険で準備しなくても構いませんが、今回は保障額に含むことにします。

2:生活費

子どもは22歳で大学を卒業し独立するものとします。それまでの17年間は、現在の生活費20万円の7割である14万円が必要と考えます。17年間で2,856万円になります。

その後は、妻が65歳になって自分の年金を受給できるようになるまでの17年間、現在の生活費20万円の半分の10万円が必要と考えます。この総額が2,040万円になります。

3:住居費

今の住まいに住み続けるものと仮定します。妻が65歳になって自分の年金を受給できるようになるまでの34年間、総額で4,080万円が必要です。

4:子どの教育費

教育費用はどんな進路を選ぶかによってかなり幅が出ますが、今回は「子どもの教育費用はいくらかかる?」を参考に、すべて公立の学校に進学したものとして、1,027万7,981円と試算します。

ここまでが支出です。次に公的な死亡保障を見てみましょう。

5:遺族基礎年金

子どもが18歳になるまでの13年間、国民年金から遺族基礎年金が支給されます。この家族の場合、年額101万2,800円が支給され、総額で1,316万6,400円が支払われます。

6:遺族厚生年金

夫が会社員だったので厚生年金からも支給があります。この額は生前の給与額などによってかわってきます。今回はこちらのページなどを参考に、年額48万7,366円が受け取れると考えます。妻が65歳になるまでの34年間の総額で1,657万444円の支給になります。

7:中高齢寡婦加算

このケースでは妻が40歳から65歳までの25年間、中高齢寡婦加算の対象になり、年額58万3,900円の支給があります。総額で1,459万7,500円です。 以上を、集計してみましょう。

支出収入
死亡整理金200万
生活費(子ども独立まで)2,856万
生活費(子ども独立後)2,040万
住居費4,080万
子どもの教育費1,027万7,981
遺族基礎年金1,316万6,400
遺族厚生年金1,657万444
中高齢寡婦加算1,459万7,500
小計1億203万7,9814,433万4,344
差額5,770万3,637

予測される支出と、公的な保障との差額は約5,770万円。そのままだとこれはかなりの赤字ですね。

ですので、このぶんを生命保険で補えばいいということになります。

もっとも、5,000万超の保険金は高いように感じられます。生命保険文化センターの調査でも、男性の生命保険の保険金額の平均は2,000万円程度です。

この例では、まず、夫の生前と同じ住まいに住み続けていますし、妻がずっと働かないままです。この部分は考え直す余地が大きくあるでしょう。住まいはそのままだとしても、仮に、子どもの手がだいたい離れる高校入学以降60歳までの19年間、月収10万円でもパートに出たとしたら、それだけで2280万円の収入になります。これなら必要保障額は一気に3,000万円台になりますね。

以上が、死亡保障を決める際の考え方です。

かなり大雑把な計算になっていますが、この程度でも、試算をしないで、「死亡保障は2,000万くらいの人が多いらしいから、それでいいかな?」と決めてしまうよりはずっと良いはずです。

ここまででわかったかと思いますが、死亡保障の額を的確に予測するためには、「もしもの場合、住まいはどうする?」「子どもの進路は?」といった、家族の将来予測がセットになって欠かせないということなのです。

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