病気で必要なのは医療費ばかりではないけれど……医療保険に入院一時金特約は必要?

病気やケガをしたときのお金といえば、誰でもすぐに「医療費」のことを思い浮かべるでしょう。

しかし、実際にかかってくるお金は医療費だけではありません。

入院ともなれば、通院のための本人や家族の交通費・宿泊費、入院時のパジャマやガウン代・日用品などの準備費用、お見舞い返し等々。

さらに、罹患者が、家事や育児・介護などを一手に担っているような場合(多くは妻)、代わりにこれらをする人がいなければ、入院中の家族の外食費や家事代行費用、ベビーシッターやヘルパー費用など、アウトソーシングのためのお金もかかってくることに。

その上、共働き世帯の増加で、親や家族が病気等であっても、病院の付き添いなどが難しいケースも増えているようです。

そこで最近、保険会社では、これら病気やケガをした被保険者や家族の生活をサポートする代行業者等と提携する動きが広まっています。

家事代行業者と提携、保険会社で広がる

《要約》損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、医療保険の新商品発売に合わせて2017年11月からカジー(東京・千代田)と組んだ新商品の提供を開始。同社の保険契約者は、カジーの家事代行サービスを約1割引きで利用できる。 またライフネット生命は、家事代行のベアーズ(東京・中央)と提携。11月から同社のがん保険や就業不能保険の契約者などに対し、ベアーズの家事代行サービスの紹介を始めている。同じく朝日生命でも、介護保険などの契約者に家事代行サービスを紹介。認知症患者の介助などが必要な際に、代行業者を利用することで家族の負担を減らせるという。 働く女性の増加に伴い、家事代行サービスの利用は増加傾向にある。少子高齢化が進み、親が入院した際などに働いている子ども世代が親の身の回りの世話をするのが難しくなったことも背景にある。保険会社が家事代行業者を紹介することで、悩みの解消につなげようというものだ。

治療と仕事の両立だけでなく、家事・育児・介護の両立も大問題

病気やケガで家事代行というと、なんだかピンとこない人もいると思いますが、実は切実な問題なのです。

ライフネット生命が実施したがん経験者向けのアンケート調査(2017年8月)によると、がん罹患後の生活の困りごとについて、男性は「食生活で困った」が最も多く(53%)、女性は「外見ケア」(43%)、「買い物」(39%)、「炊事」(36%)、「掃除」(28%)など、身の回りのことに関する困りごとが上位に挙がりました。

また「家事や育児その他生活全般において、どのようなサポートサービスがあったら利用したいですか?」という質問に対しては、とくに女性患者から、抗がん剤等の副作用で、食事の準備や掃除などが苦痛。重い物が持てない。子どもの預かりや保育園の送迎が難しい等々。買い物や料理の支度などの「家事代行」への強いニーズやがん研修を受けたスタッフを望む声、「子どもの預かり」「通院送迎」「外見ケア」「治療と仕事の両立」への要望も出ています。

そこで同社では、「サバイバーシップ支援サービス」として、前掲のベアーズ以外にも家事代行サービスのダスキン、食材宅配を行うオイシックス、外見ケアのための資生堂ライフクオリティビューティーセンター、通勤・通院・移動等の手段を提供する日本交通などの企業と提携し、がん生活サポートサービスを紹介。今後も提携先を拡大する方向です。

がん治療のほとんどが外来で可能となり、治療を受けながら働く患者も多いなか、これらのサービスを上手に活用できれば、かなりの負担軽減となるはずです。

しかし実際のところ、患者は、「治療でお金を使っているのに、これ以上、余計なお金を使うなんて…・・・」と、これらのサービスを利用することを躊躇したり、罪悪感を持ったりする人も少なくありません。

ちなみに、提携先の一つである日本交通グループが提供するサポートタクシー(介護職員初任者研修、普通救命技能認定(AED)などのスキルと、黒タク乗務員としての高いホスピタリティを兼ね備えた乗務員が対応)にかかる費用は、乗車から最初の1時間を初乗り5,270円(チャージ含む。通常のタクシーの時間制運賃(1時間/4,650~)+サポートチャージ(1時間/620~))、その後30分ごとに2,420円(チャージ含む)が加算されます。もちろん、公的介護保険等は適用されません。

ということで、何より経済的な問題から、利用したくてもできないという患者もいるでしょう。

交通費など間接的な費用は約3割もかかる!

では、病気やケガをした際に、どれくらいお金がかかるのでしょうか?

例えば、多額な費用がかかり、治療期間も長期に渡たる可能性もある「がん」の場合、その額は平均126万円というデータが出ています(*)。

その内訳は以下の通り。このうち、間接費用が約3割も占めているのは驚きです。

直接費用 入院代、手術代、薬代、抗ガン剤費、差額ベッド代、通院費、検査代、その他の費用の合計(高額療養費制度を利用した場合はその自己負担額) 平均86万円
間接費用 家族の交通費・宿泊費、健康食品やサプリメント、公的保険適用外の漢方薬、美容(ウイッグ)費用、快気祝い、その他諸経費の合計 平均40万円
合計 平均126万円

病気になったときにかかるお金の目安はなんとなくわかっていても、その内訳を意識している人はほとんどいらっしゃいません。

筆者は、さまざまながん患者やそのご家族から相談を受けていますが、治療期間が長引く患者ほど、とくに間接費用はかさむ傾向にあり、増えることはあっても、減らすのは難しいのが現状です。

そして、患者ニーズが高い、家事や育児、介護等を代行する費用も間接費用に含まれ、家族構成や個々の事情によって、費用の多寡は異なります。

ちなみに、前掲の調査では、「治療費や収入の減少などを総合的に考えて、いくらあれば安心できたのか」も質問しており、その額は平均364万円。なんと、実際にかかった費用の3倍近くの金額です。

おそらく、これくらいあれば、休職して治療に専念したり、代行サービスなどを利用して休養したりできたのに、ということなのでしょう。

*カーディフ生命「2013年5月アンケート調査」。インターネットで一般公募した「過去3年以内にガンに罹患した方」を対象として、2013年5月に実施した「ガン患者の悩みや負担に関する実態調査(アンケート調査)」のご本人133名による回答を集計したもの。

入院一時金タイプの医療保険が続々登場!

もちろん、がんに限らず、他の病気やケガについても、医療費以外のなんらかの費用がかかる可能性はあります。

多くの場合、預貯金あるいは加入している保険などで、これらの費用をまかなうことになりますが、捻出先が医療保険だと、年々、平均在院日数が減少している影響から、思ったほど給付金が受け取れないケースも考えられます。

そこで最近、医療保険に入院一時金特約を付加あるいは入院一時金タイプの商品が続々登場。短期入院でもまとまった一時金が受け取れる使い勝手の良さをアピールしています。

2017年11月に発売されたネオファースト生命の「ネオdeいちじきん」は、入院した場合、一時金(最高10万円)が支払われる医療保険。

特定生活習慣病や女性疾病、ストレス性疾病に対する特約もあり、主契約も特約もすべて一時金で支払われるしくみです。

同じく11月から、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、所定の医療保険に付加できる特約として、「医療用入院一時金特約」を発売。この特約専用のサービスとして、「入院一時金即日支払サービス」を開始しています。

一時金は1~20万円かつ、主契約の入院給付金日額の40倍以下で設定可。主契約の入院給付金日額が5,000円でも20万円まで一時金で受け取れるしくみです。

そして「入院一時金即日支払サービス」は、入院開始当日に入院一時金が支払われるというもの。入院にかかる費用をすぐに準備できない人には有り難いサービスといえます(当該サービスは、病気を原因とする入院について、契約2年経過後から利用が可)。

このほか、チューリッヒ生命「終身医療保険プレミアムDX」やアフラック「終身医療保険「ちゃんと応える医療保険EVER」なども商品を改定し、それぞれ入院一時金特約が新設されています。

医療保険も一時金が必要!?

このような入院一時金に特化した医療保険の場合、入院期間の長短に関わらず、一定の金額が受け取れることが大きな魅力です。

さらに保険料も、楽天生命の「楽天生命ピンポイント」の場合、1泊2日以上の入院で一律一時金10万円(180日に1回、通算50回まで)が受け取れ、30歳男性1,522円、女性1,522円となっています(先進医療特約を付加した場合)。

同商品を、入院日数に応じた入院給付金や手術給付金付きの通常の医療保険と比較すると、30代などは比較的割安な商品と遜色ないものの、40代、50代と年齢が上がるにつれて、一時金タイプの方が安くなっています。

一時金といえば、がん保険でも主流の給付金。たしかに、がん患者から、「がん診断給付金があって、非常に助かった」という声はよく聞かれます。

ただ、がん保険の一時金が50~100万円なのに対して、商品によって異なりますが、医療保険の一時金の金額は5~10万円程度と、決して多いわけではありません。

保険を選ぶ際は、保険料だけでなく、実際に病気やケガをした場合、どちらの方が役に立つかが肝心。そもそも、入院ともなれば何かと物入りとはいえ、10万円程度の金額を保険で準備すべきなのかという点も熟慮すべきです。

とはいえ、ある保険会社の担当者に伺うと、医療保険の入院一時金特約に対するお客さまの反応はすこぶる良いということ。

今から20年ほど前、日帰り入院を保障する医療保険が発売された当時、「超短期入院まで保障する必要があるのか?」「長期入院に備えてこそ医療保険なのでは?」という議論が出たのを思い出しつつ、改めて、お客さまが求めるニーズとFPの視点にはズレが生じているのだということを痛感しています。

参考

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