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老後資金の積み立てに個人年金保険は向いている?

現在30代の男ですが、老後の貯蓄として個人年金保険を検討しています。
個人年金保険は老後の積み立て手段としておすすめでしょうか?

また、民間の個人年金保険以外で、老後の積み立て手段として適しているものがあれば教えてください。(35歳 男性)

積極的には推奨しない

30~40代は家計の柔軟性を大切に!
個人年金保険は老後資金作りのための1手段!

AFP小川千尋

30~40代のみなさんは、「老後」に漠然とした不安を抱いているでしょう。不安の正体は後ほど触れることにして、今からできる老後対策は何かを考えてみましょう。
まだ、時間があるうちに、できることから始めましょう。「生きていれば必ず訪れる老後」、意識して備えるにこしたことはありません。

まず、なるべく早く老後資金のための貯蓄をスタートすること。「老後資金作りは1日にしてならず」、時間をかけてコツコツ積み立てるのが基本です。その積み立ての1つが個人年金保険です。
老後資金作り=個人年金保険と考える人もいるかもしれませんが、積み立てができる金融商品は他にもあるので、いきなり飛びつくべきではありません。あくまで、老後資金作りのための選択肢の1つに過ぎないからです。

個人年金保険をあまりおすすめしない理由を、下記に上げてみます。

  • ●中途解約すると不利で、保険料が払い続けられなくなったときに中断しにくい
  • ●保険料は長期にわたって固定費となり、家計の見直しを迫られたときに対応しにくい
  • ●20~30年と長く積み立てている間にインフレになり、価値が下がってしまうかもしれない(投資信託などで運用する変額タイプはこの限りではない)

30~40代は、子どもの教育費や住宅資金(頭金を貯める、借りた住宅ローンの繰り上げ返済をする)という、老後資金より優先度の高い資金を準備する必要のある時期です。
そのような時期に、個人年金保険に入ると、家計の柔軟性を損ねかねません。会社に財形貯蓄制度がある人は財形貯蓄、銀行・郵便局の商品を中心に積み立てし、余裕があれば、投資信託や株式などの運用商品も組み合わせて、貯蓄を積み上げましょう。

個人年金保険は一時払いで入ることもできるので、老後間近になって、金融商品として魅力があれば、その段階で入っても遅くありません。

ただ、通常の積み立てではつい解約してなかなか貯蓄を積み上げられないという人は、中途解約のしにくさを逆手にとって個人年金保険を利用してもいいでしょう。
その場合、20~30年の長期にわたって払い続けられる保険料で入るのがポイント。老後にいくら欲しいかではなく、これから、いくら払って行けるかで年金額を決めてください。くれぐれも、無理は禁物です。

そして、キャリアプランは、65歳でリタイヤして老後生活に入れるとは考えないでください(高齢化に伴って、晩婚・晩産化も進み、定年退職後も子どもにお金がかかる人が増える傾向が見て取れるので、望まなくても働き続けなければならないケースが多くなりそうですが)。現役時代ほどの収入は得られなくても仕方ないので、75歳か80歳まで、あるいは生涯現役で働く覚悟を持ちましょう。
働く期間を延ばすことで、老後資金の目減りを防げることは大きな意義があります。今から、定年後も働けるキャリアプランを練っておきましょう。

また、働かなくても(病気や要介護状態で働けなくても)、収入が得られるマネープランを構築することも有効です。
例えば、起業して誰かに仕事を任せて役員報酬などを得る、不動産の賃料収入を得られるようにする、何らかのインセンティブ報酬を得られるようにするなど。

これから、「少子超高齢社会」の「人口減社会」を生きることになる

では、「老後」の不安の正体は何かを探ってみましょう。そのキーワードは「超高齢社会」と「少子化」、「人口減社会」です。現在の日本は65歳以上の老年人口が21%以上の「超高齢社会」です。この現象は今後も続きそう。と言うのは、日本人の平均寿命は少しずつ延びているからです。

平成25年の人口動態統計推計によると、平均寿命は、女性86.35歳、男性79.56歳でした。今後も平均寿命は延び、みなさんが高齢になるころには、男女とも90歳超えは当たり前で、100歳超のお年寄りも珍しくなくなりそうです。

長生きできるようになったのはいいことですが、困ることが2つあります。老後の時間が長くなること平均寿命と健康寿命に時間差が生じることです。
平均寿命は命が尽きる年齢のこと、健康寿命は誰の手も借りずに自立して生活できる年齢のこと。直近のデータによると、平均寿命と健康寿命の差は、女性12.73年、男性9.14年です。
この差の期間は、程度の高低はともかく、要介護状態になります。今後、要介護の期間が縮まってくれるといいのですが、楽観はしない方がいいようです。

一方、0~14歳の年少人口が減少する「少子化」現象は進行の一途をたどっています。ここ数年、1年間に生まれる赤ちゃんの数より、死亡する人の数が多い状態が続いています。つまり、みなさんは、今後、「人口減社会」で、しかも、「少子超高齢社会」を生きていくということです。

老後不安の正体は、長引く老後と先細る社会保障!?

では、老後が長くなると、どんなことが起きるのでしょうか? 老後は現役引退後とすると、収入が減るのが一般的です。ですから、収入減の時間がどんどん長くなっていき、老後の生活費不足を招きます(潤沢な老後資金を用意できている人は別ですが)。病気1つしないで、自立した元気なお年寄りのまま寿命をまっとうできれば収入が減ってもやりくりできるかもしれません。
でも、高齢になるほど病気にかかる可能性が高くなり、健康をキープするためのお金や病院通いの医療費負担は、若いころに比べると確実に増えます。
しかも、要介護状態になると、その費用もかかります。

老後が長くなっても、その生活を支えてくれる若い世代の層が厚ければ、さほど心配することはないのかもしれません。ところが、「少子化」と「人口減」で、社会保障の支え手がどんどん減っていきます。結果、老後の生活を支える年金・医療・介護の3大社会保障を今のまま維持することは困難な状況です。
今後、特にみなさんが老後を迎えるころは、社会保障の給付はかなり削られることでしょう。

老後は長くなり、お金もかかるのに社会保障は先細り――みなさんの老後不安の正体は、まさにここにあるのです。早めの備えが大切なことがお分かりいただけましたよね。

AFP小川千尋

ファイナンシャル・プランナー、子育て・教育資金アドバイザー、終活カウンセラー。1994年AFP資格取得。独立系ファイナンシャル・プランナーとして、主にマネー誌、一般誌、ウェブサイトなどのマネー記事の編集・執筆・監修・セミナー講師などで活動。「あるじゃん」 「マネージャパン」「マネープラス」などのマネー誌から、 「おはよう奥さん」「すてきな奥さん」「サンキュ!」などの一般誌連載まで幅広くこなす。

<著書>「年金と保険の本」「トクする女のお金の本」

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