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老後資金の積み立てに個人年金保険は向いている?

現在30代の男ですが、老後の貯蓄として個人年金保険を検討しています。
個人年金保険は老後の積み立て手段としておすすめでしょうか?

また、民間の個人年金保険以外で、老後の積み立て手段として適しているものがあれば教えてください。(35歳 男性)

積極的には推奨しない

若い方の個人年金保険への加入は慎重に。インフレを考慮しましょう。

CFPR、1級ファイナンシャル・プランニング技能士 FPエージェンシー代表 横川由理

個人年金保険の最大の弱点は、超長期固定金利の商品だということ。
たとえ、将来お金の価値が変わっていたとしても、「30歳の男性が60歳になったときから50万円を10年間支払います」という契約では、30年後に支払われる金額は当然50万円となります。

アベノミクスでは、政府と日銀が年2%のインフレにすると断言しています。固定金利の商品では、インフレには太刀打ちすることができない可能性が高いでしょう。アベノミクスが成功して、毎年物価が2%ずつ上がるという状況になったら、いったい年金額はどうなるでしょうか?物価の上昇とは逆に、将来受け取る年金の価値は2%ずつ目減りすることになります。

現在、アベノミクス前よりも円安になっていることから、輸入品の値段が上がっていることに気がついていますか?ガソリンや灯油も高くなりましたね。小麦粉や油などの食料品もどんどん値上がりしています。今や日本は輸入大国。さらに円安が進むと、ますます物価が上昇してしまうでしょう。追い打ちをかけるように消費税もアップしました。

2%で物価が上昇し続けると、30年後の50万円の価値は約28万円。40年後は23万円程度です。このように固定金利の商品には“インフレ”というコワ~い罠が存在するのです。若い人であれば個人年金保険に加入するのは、少々待った方がよさそうですね。

どうしても加入したいのであれば、変額年金や外貨建ての個人年金保険に加入するのも手ではありますが、リスクの高い商品だということ忘れてはなりません。老後資金であっても、何種類かの商品へ分散して運用することを心がけていきましょう。

老後資金の作り方

老後の資金を貯めるというと、“個人年金保険”に加入することを思い浮かべる人が多くいらっしゃると思います。個人年金保険はあらかじめ設定した年齢から、年金を受け取ることを約束した商品。たとえば「50万円を10年間にわたって」というように、年金額や受取期間は選択して契約するしくみになっています。

加入時に気になるのは、もちろん保険料。将来戻ってくる年金だからこそ、戻り率のよい商品を選びたいものです。基本的に個人年金保険は貯蓄型の商品ですから、死亡保障はついていません。もし、死亡保障がセットされている個人年金保険であれば、その分、戻り率が悪くなってしまうので注意が必要です。

毎月、口座から保険料が引き落とされ、保険料を保険会社が運用してくれるので比較的楽に老後資金の準備ができそうです。だからといって、保険料の全額が年金の運用に回るわけではないと意識することも大切です。

個人年金保険を積極的に使った方がよい人

老後資金を効率的に貯めるには、その人の所得や年齢がとても大事になってきます。個人年金保険を積極的に使った方がよい人と、別に方法を選んだほうがよさそうな人に分けて考えてみることにしましょう。

所得の高い人や、年齢の高い人は個人年金保険を積極的に利用できる人だといえます。
まずは税金面でのメリットをお話ししましょう。要件を満たした個人年金保険に加入すると、個人年金保険料控除を適用することができます。新たに加入した場合は、最大4万円の所得控除を受けられます。所得控除とは、所得から差し引けるもの。
つまり、所得が低くなる分、税金が安くなるというメリットがあるわけです。

所得税の税率は、6段階。所得の低い人は5%だし、1番高いカテゴリーの人は40%にも達します。ということは、所得の多い人ほど節税のメリットを受けられるというしくみなのです。最高税率40%の人であれば、年間1万6,000円の節税に。

  • ・4万円×40%=1万6,000円
●所得税の税率
課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円を超え 330万円以下 10%
330万円を超え 695万円以下 20%
695万円を超え 900万円以下 23%
900万円を超え 1,800万円以下 33%
1,800万円超 40%

※なお、住民税は誰でも10%となります

さらに、住民税の所得控除は最大2万8,000円。こちらの税率は10%ですから、2,800円分を節税することが可能です。所得税率が40%の人は、両方の合計で1万8,800円分の税金が還ってくるという計算になるのです。銀行にコツコツ預金をしても、税金は安くなりませんが、保険を活用するとこんな税法上のメリットがあるということを覚えておきましょう。なお、所得税率が5%の場合に還付される所得税は2,000円分となります。

  • ・4万円×5%=2,000円

このように所得控除という制度は、その人の所得によって大きく節税の恩恵が大きく異なるという特徴があるのです。

また、配当金のあるタイプの個人年金保険は、保険会社の運用がうまくいくと配当金を受け取れる分、年金が増えるというしくみとなっていますし、利率変動タイプは世の中の金利が上昇すると積立利率も上昇する商品です。将来のインフレということも考えて、自分に合った商品を選んでいきましょう。

もちろん、保険会社の健全性をしっかりとチェックすることを忘れてはなりません。どうしても「自力で貯蓄することが苦手」という人も、個人年金保険を活用するとよいでしょう。

確定拠出年金の個人年金保険

所得控除という制度はうれしくとも、たった4万円ではあまりメリットは感じられないかもしれません。そんな人は、確定拠出年金へ加入し、個人年金保険をチョイスするという方法もあります。
実は保険会社や銀行、そして証券会社であっても確定拠出年金を取り扱っています。こちらは払った保険料全額が所得控除になるので、さらに節税のメリットは大きくなるでしょう。

とはいえ、確定拠出年金を利用できるのは、自営業者や会社に企業年金のない人、そしてマッチング拠出を導入している企業にお勤め人などに制限があるので注意が必要です。

デメリットとしては、節税効果が高い分、途中で解約を行うことはできないという点が挙げられます。メリットとデメリットをよく比較して考えることが大切です。

CFP®、1級FP技能士 MBA(会計&ファイナンス) FPエージェンシー代表 横川由理

生命保険会社での勤務を通じて、「お金について知らないと損をする!」と強く感じ、ファイナンシャル・プランニングの知識の普及に取り組む。現在は、資格学校や大学での講師をはじめ、マネーセミナー、また執筆活動など精力的に取り組んでいる。

<著書>
「宝島社 生命保険にだまされるな!」
「宝島社 よい保険・悪い保険2014年版」
「宝島社 アベノミクスで変わる! 「暮らしのお金」の○と×」
「宝島社 50歳から役に立つ「お金のマル得術」」
「日本文芸社 最新FP技能士3級 合格完全ガイド」  ほか

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