マンション保険料アップで管理費もアップ? マンションリスク管理のチェックポイント

マンションの管理組合が加入する「マンション総合保険」の保険料が相次いで引き上げられています。建物の老朽化が進み、水漏れなどで保険金の支払いが膨らんでいることが原因です。

マンション保険料上げ、損保各社 入居者に負担転嫁も

《要約》損害保険各社はマンション共用部分の損害に備えて加入する保険の保険料を引き上げている。引き上げ幅は2~6割程度。物件によっては入居者の管理費に数百円以上添加される可能性がある。

マンション購入は購入時の価格に目を奪われがちですが、今後は購入後の管理費や修繕積立金の将来的な上昇など、ランニングコストにも注目した購入計画が必要になってきそうです。

今回は安心して住み続けるために知っておきたいマンションの管理リスクと、その備え方について考えます。

目次

管理組合が加入する「マンション総合保険」とは?

「マンション総合保険」はマンションの共用部分を一括して補償するマンション管理組合のための火災保険です。共用部分とは、マンション建物本体の共用部分と、付属建物や施設等、マンション管理組合の規約等で定められる部分です。

管理組合が加入者(被保険者)となって、管理費から保険料が支払われています。

補償内容は個人で加入する火災保険と同様に、掛捨てまたは積立てで最低限「火災」「落雷」「破裂爆発」等に備える基本補償と、火災後の片づけ費用などに備える「費用保険」があります。また、施設の欠陥や管理の不備による事故に備える「施設賠償責任保険」、専有部分の配管からの水漏れやベランダからの落下物などによる事故に備える「個人賠償責任保険」等も特約で備えることができます。火災保険とのセットで地震保険に加入することも可能です。 

保険金額は個人向けの火災保険と同じく新価額・実損払いで補償されます。新価額とは適切な価格の補償を付けると同等のものを新しく再築、再取得するための保険金が支払われる価格です。1回の支払いで契約額100%の支払いに満たなければ、実際の損害額に応じた保険金を何回でも受け取れます。

保険料はマンションの立地、構造、面積、築年数、戸数、管理状況、入居状況、補償範囲等個々の条件により大きな差があります。2015年から2016年4月にかけて損保各社の保険料改定があり、新築では10%程度保険料が下がる例があるものの、築20年では過去の保険料支払いや管理状況により、2割から6割程度保険料が上昇したマンションもあるようです。また、大都市圏の同程度の物件でも築20年では新築の4倍近い保険料になるなど、保険料の差が広がっています。

なぜ保険料が値上げされたのか

国交省の調査によると、65%のマンションが何らかのトラブルを抱えており、そのうちの約31%が建物の不具合を抱え、建物のトラブルの約半分は水濡れという結果になっています。マンションの約1割は水濡れトラブルがあるということになります。

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出展:国土交通省

水濡れトラブルは給排水管などの劣化が原因で起こる場合が多く、築年数20年以上のマンションが全体の半数を占めるようになり、マンションの老朽化が進んだことが背景の一つとなっています。

スライド1

出展:国土交通省

日経新聞によれば、ある大手損保会社の最近5年間のマンション総合保険の保険金の支払額は1.5倍に増加、各社20億円前後の赤字とのことです。老朽化したマンションに対する保険金の支払いが増えていることで、築年数が古い物件は一部補償を引き受けない保険会社もでてきました。

引き受けしない補償の例

  • 築20年以上の個人賠償責任保険の引き受け
  • 築20年以上、25年以上など築年数の古いマンションの引き受け
  • 水濡れ原因調査補償の引き受け
  • 保険金支払いが多いマンションの引き受け

特に築20年以上のマンションや、過去の保険金支払いが多いマンション、入居者が少なくなり空室が多いマンションなどの引き受けは今後ますます難しくなっていきそうです。

築年数が古いマンションの対策は?

分譲マンションを「住まい」を目的として購入した場合、20年以上住み続ける場合がほとんどです。築20年以上になってもしっかりと共用部分の保険を付けるための対策を考えてみましょう。

  • 建物の不具合による保険金支払いを抑える

修繕積立金をしっかり準備し、定期的な水漏れ点検や修繕、計画に沿った大規模修繕を行うことで大きな損害発生を食い止め、保険金の支払いを抑える。

  • 将来の修繕費や保険料のアップなどに備え、修繕積立金や管理費のアップを修繕計画等に組み入れておく。
  • 建物の維持管理やマンションのコミュニティづくりなど、魅力的な「住まい」であり続けることで、空室を抑える。

「お金と人」この両方が備わったマンションが価値あるマンションとなり、希望の補償を付けられる安心、安全な住まいとなりそうです。リスクを保険会社頼みにするのではなく、住民と管理組合の意識やお金の準備も将来のマンションの価値を左右する時代となりそうです。

参考

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この記事を書いた人

有限会社ヒューマン・マエストロ取締役。大学卒業後、地方銀行にて融資業務担当。結婚、出産後7年間の子育て専業主婦。その後、住宅販売、損保会社、都市銀行の住宅ローン窓口を経て独立。現在は中央線を中心に活動する女性FPグループ「なでしこFPサロン」のメンバーとともに、さまざまな専門分野を持つFP・士業と連携しながら、お客様の悩みをワンストップで解決することを目指している。身近なお金の問題に役立つ講演・執筆多数。

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