民泊ビジネスに関するリスクをカバーする保険商品

 さる10月17日、一般社団法人シェアリングエコノミー協会と損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、当該協会に加盟しているプラットフォーム業者を対象に、プラットフォーム事業者・サービス提供者・サービス利用者が負う賠償責任を総合的に補償する商品を11月から販売すると発表しました。

目次

「シェアリングエコノミー」とは、個人の遊休資産の貸し出しを仲介

 遊休資産には、住宅、自動車などがあります。遊休資産を貸したい人(サービス提供者)、借りたい人(サービス利用者)を仲介する業者が「プラットフォーム事業者」です。

 一般社団法人シェアリングエコノミー協会は、さまざまなプラットフォーム事業者で組織され、さまざまな遊休資産を提供する新しい経済行為に参加できる人を増やし、活性化することを目的として2015年に設立されました。この協会はこの新しい経済行為をけん引するプラットフォーム事業者の健全なビジネス環境を創り、利用者を保護する体制を整備することをうたっています。

民泊はシェアエコノミーの代表格。しかし今のところ制限が多い

 個人が所有する住宅(一戸建て・マンションなど)や別荘で使用されていないものを、観光客などに有料で貸し出すサービスを「民泊」と呼んでいます。一般的には、サービス提供者がプラットフォーム事業者に物件を登録しておき、インターネットを通じて、サービス利用者とマッチングさせています。

 わが国の外国からの観光客が近年大幅に増加しており、2015年は前年の47.1%増の1,974万人となりました。また、2016年は10月までに2,000万人を突破したと報道されました。東京オリンピックでさらに増加することが予想されています。

 民泊は旅館業法の制限を受ける場合があるなど、サービスを提供する場合には留意しなければならない点があります。一方、「特区」により民泊について制限が緩和されている地域があります。さらに現在、民泊に関する法整備が進められており、「民泊新法」の法案が近々国会へ提出される方向で動いている途中です。

 また、保有するマンションを民泊サービスに出す場合、当該マンションの管理規約により貸し出しが禁止されているケースもあります。賃貸物件を転貸して民泊物件とすることについても、契約で禁じられているケースは少なくありません。

民泊を行うサービス提供者のさまざまなリスク

 サービス利用者の失火等により、サービス提供者が保有する住宅・設備・家財に損害を被るリスクが考えられます。また、サービス利用者により家財が盗難にあうリスクもあります。

 これらのリスクは火災保険でカバーすることになりますが、今まで加入していた火災保険が住宅物件のままの契約だと補償されません。事業用の物件として契約する必要があります。

 また、サービス利用者が施設等の不備により施設内でケガ等をした場合に、サービス利用者に対して損害賠償責任を被るリスクがあります。これについては、事業用の施設管理者賠償責任保険でカバーすることができます。

 いずれにせよ、民泊の事業にかかるリスクは、基本的にサービス提供者がしっかりとリスクマネジメントを行う必要があります。

サービス提供者向け保険とは

 プラットフォーム事業者に登録することで加入できる、サービス提供者向け保険商品があります。例えば、民泊プラットフォーム事業者である「ジェーピーモバイル」では、会員であるサービス提供者向けに、民泊専用保険を販売しています。基本補償である室内の設備の補償として保険金額 100万円のほか、特約として、借家を転貸したサービス利用者が失火した場合の建物オーナーへの損害賠償、サービス利用者や第三者に対する損害賠償、サービス利用者が失火して第三者の建物に損害賠償を与えた場合の類焼にかかる損害賠償などを補償するものがあります。

 前述のようにサービス提供者が負うことが予想されるリスクについて、個別に補償する損害保険を個々に契約するのではなく、総合的に補償するものと言えます。必要に応じて適宜特約を付保することにより、補償内容を拡大することができます。

「協会」の会員であるプラットフォーム事業者向けに販売

 前述のシェアリングエコノミー協会で取り扱う予定の保険商品は、協会の会員となっているプラットフォーム事業者を対象としたさらに広いマーケットに対して、事業の実態に応じた各種リスクを補償するカスタマイズ商品です。プラットフォーム業者、サービス業者だけではなく、サービス利用者の第三者に対する損害賠償責任をカバーする保険商品となっています。さらに、旅行者の国内滞在中の病気・ケガによる治療費の補償や、外国人向けの医療アシスタンスサービスなどがあります。

 また、契約の方法として、サービス提供者とサービス利用者のマッチングごとに契約する方法では、手続きが非常に煩雑になります。この協会が提供する保険商品は年間の包括契約となっており、プラットフォーム事業者の賠償リスクを1契約で補償します。

民泊を行う場合

 民泊は個人が比較的簡単に遊休資産を活用することができるスキームです。しかし一方で「事業者」としての各種の責任が発生します。個人が無防備の状態でまかなえる損失規模とならないことも想定されます。サービス提供者としてのリスクマネジメントを、しっかりと行う必要があるのではないでしょうか。

参考

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

1962年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。 生命保険会社を経て、現在、独立系ファイナンシャル・
プランニング会社である株式会社ポラーノ・コンサルティング代表取締役。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 CFP®認定者認定者。十文字学園女子大学非常勤講師。
個人に対するFP相談業務、企業・労働組合における講演やFPの資格取得支援、大学生のキャリアカウンセリングなど、
幅広い活動を展開している。

目次
閉じる