生命保険信託で保険金を残す人の心配を軽減できる!

生命保険に加入するのは、死亡保険金を遺族(保険金受取人)の生活のために使ってもらうことも、目的の1つです。しかし、受取人が幼児、認知症患者、知的障害者で保険金の管理能力が不安な場合、どんな使い方をされるか心配ですよね。そんな心配を軽減できるのが生命保険信託です。

まだ新しいサービスなので、馴染みはないでしょうけれど、今後、ニーズが高まっていくと思われます。どんな仕組みが知っておきましょう。

ソニー生命のライフプランナーによる 三井住友信託銀行の生命保険信託等の取扱開始について

《要約》ソニー生命保険(株)は、三井住友信託銀行(株)と、業務の代理に関する契約を締結し、平成29年2月20日より、ライフプランナー(営業職員)を通して三井住友信託銀行の生命保険信託・遺言信託・遺産整理業務の3商品について取扱を開始いたします。

目次

生命保険信託は死亡保険金を財産にした信託契約のこと

生命保険信託は、死亡保険金を信託財産とした信託契約です。生命保険信託の先駆けはプルデンシャル生命で、平成22年に三井住友信託銀行と提携してサービスをスタートしました。平成26年には第一生命がみずほ信託銀行と提携してスタート。平成27年にプルデンシャル生命は生命保険信託の普及を目指し、100%子会社のプルデンシャル信託(株)を作ってサービスの提供を開始しました。

今年2月、ソニー生命が三井住友信託銀行と提携して生命保険信託の取扱を開始しました。開始当初は東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県の一都三県に住んでいる人が対象ですが、1年以内には全国に展開する予定だそうです。

生命保険信託の仕組みは、死亡保険金額が一定額以上の生命保険契約(新契約でも既契約でも)の契約者と、保険会社と提携している信託銀行や信託会社の信託業務をできる会社が信託契約を結びます。その際、死亡保険金受取人を信託銀行または信託会社に変更し、第一受取人と保険金の支払い方(毎月10万円・15万円など)、そして、第二受取人を指定します。

第一受取人は、被保険者である契約者が死亡した後、最初に保険金を受け取る人です。第二受取人は、保険金を受け取っている間に第一受取人が死亡した場合、残った保険金を一括で受け取る人です。信託契約を結んだ後、被保険者が死亡すると、保険金を受け取った信託銀行や信託会社は、契約通りに第一受取人に保険金を定期的に支払います。そして、保険金を支払っている間に第一受取人が死亡すると、残った保険金は法定相続によらずに第二受取人に支払います。

このような信託契約は、保険金の受取人が幼児、認知症患者、知的障害者で財産管理能力が心配な場合、それを軽減できます。財産管理能力のない人が保険金を受け取ると、親族(祖父母・親・おじ・おば・兄弟姉妹など)が管理することになるのが一般的です。親族が受取人のために保険金を使ってくれればいいですが、親族自身のために使い込んでしまうことがあり、それを最小限に食い止められます。

なお、生命保険信託の契約を結んでも、生命保険料控除は受けられますし、死亡保険金は相続税の非課税枠が適用されます。つまり、税務面には影響しないということです。

取扱条件や手数料は会社ごとに異なる

生命保険信託の仕組みは、各社ほぼ同じですが、保険種類や最低保険金額、手数料は異なります。ソニー生命の場合、現状では保険種類は終身保険、定期保険、逓減定期保険です。最低死亡保険金額は1,000万円です。第一生命×みずほ信託銀行も1,000万円、プルデンシャル生命×三井住友信託銀行は3,000万円、プルデンシャル生命×プルデンシャル信託は100万円程度です。

手数料は、信託契約締結時と死亡保険金支払い時、信託期間中(保険金支払い期間中)にかかります。信託契約時は5万円+消費税が多く、プルデンシャル生命×プルデンシャル信託のみ5,000円+消費税です。保険金支払い時は、保険金の2%+消費税が多く、プルデンシャル生命×三井住友信託銀行は保険金額によって1%~3%+消費税です。高額なほど手数料は低くなります。

信託期間中は、第一生命×みずほ信託銀行とプルデンシャル生命×プルデンシャル信託は年20,000円+消費税、プルデンシャル生命×三井住友信託銀行は年120,000円~360,000

円+消費税で、保険金の運用益が手数料を上回らない限り徐々に減っていきます。ソニー生命は運用益の一部から手数料を徴収するので、元本となる保険金からは手数料は徴収されません。ソニー生命の生命保険信託の強みは、この運用期間中のコストが最低水準という点と言えそうです。

生命保険信託は、現状では、契約件数は多くはありません。その理由として、「信託」という言葉に馴染みがない、「信託や信託銀行はお金持ちが利用するもの」という意識が根強い、手数料がかかることがあげられます。

しかし、手数料を払っても、保険金を受取人に定期的に届けて欲しい、親族による使い込みを防ぎたいという想いを抱く人はいるでしょう。

今後、離婚増で受取人が幼児、高齢化で受取人は認知症の配偶者・親というケースが増えることが予想されるので、生命保険信託のニーズは高まると思われます。

参考

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この記事を書いた人

1994年、ファイナンシャルプランナー資格取得。その後、独立系FPとして、長年にわたって携わってきた一般誌やムック、単行本などの編集・ライターの経験を活かし、マネー系記事の執筆・監修の他、セミナー講師として活動。最近は、終活や生前整理など、人生のしまい方にもフィールドを広げている。

複雑でわかりにくい保険や社会保障制度など、身の周りのお金に関する様々なコトを「わかりやすくひも解く」がモットー。

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