認知症を保障する保険・特約の3商品を比較! どんな違いがある?

急速に高齢化が進む日本で、認知症患者が増加の一途をたどっています。厚生労働省のデータによると、65歳以上の高齢者の認知症患者は2012年は462万人(高齢者の約7人に1人)でしたが、2025年には約700万人になると予想されています。高齢者の約5人に1人は認知症を患っているという、未知の世界がもう目の前です。そんな時代背景を受けて、認知症をピンポイントで保障する保険が2つ、特約が1つ登場しました。

認知症支える保険続々 メットライフなど、診断後すぐに一時金も(日本経済新聞)

《要約》認知症を対象にした商品を保険会社が充実されている。メットライフ生命保険は7月、認知症と診断された時点で一時金を支払う業界初の商品を発売する。

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ここ1年半で認知症を保障する商品が3つ登場

認知症を患うと、介護費用はそうではない人と比べて2倍以上かかるそうです。その介護費用や治療費用に備えられる保険・特約が、ここ1年半で3つ登場しました。

2016年3月に太陽生命が発売した「ひまわり認知症治療保険」、同年4月発売の朝日生命「あんしん介護 認知症保険」、2017年7月発売のメットライフ生命「終身認知症診断一時金特約」です。商品概要は下表の通りです。

■認知症保険・特約の概要
保険会社名太陽生命朝日生命メットライフ生命
商品名ひまわり認知症治療保険あんしん介護 認知症保険終身認知症診断一時金特約
加入形態単独で加入できる単独で加入できるが、保険金・保険料によっては他の保険とセット加入の必要あり新終身医療保険「Flexi S」、または、終身医療保険(引受基準緩和型)「Flexi Gold S」につける
保険料区分引受基準緩和型標準体「Flexi S」は標準体、「Flexi Gold S」は引受基準緩和型
保険期間10年・終身定期・終身終身
給付金の支払われ方一時金年金、一時金一時金
保障される認知症器質性認知症所定の認知症(器質性認知症と診断確定+日常生活自立度判定基準のランクⅢ以上と判定所定の認知症
給付条件器質性認知症になり、かつ、意識障害のない状態において見当識障害があると診断確定され、その状態が180日継続したとき要介護1以上、かつ、所定の認知症(上記)と認定されたとき診断確定
待期期間なしなし180日

太陽生命の「ひまわり認知症治療保険」は、引受基準緩和型医療保険に認知症の保障をつけた形の保険です。認知症(一時金300万円・契約後1年間は半額)の他に、入院一時金、手術給付金、放射線治療給付金、骨折治療給付金の保障がセットされています。

朝日生命の「認知症保険」は、介護保険「あんしん介護」をバージョンアップする形で、介護のなかでも負担の大きい認知症に特化して保障するために開発されたもの。年金タイプと一時金タイプがあり、どちらか一方、または両方を選べます。モデルケースとして、ホームページには介護年金(終身)60万円、介護一時金300万円のプランが掲載されています。この保険は、標準体(健康な人向け)です。

「終身認知症診断一時金特約」は、メットライフ生命の主力商品である終身医療保険「Flexi S」と「Flexi Gold S」につけられる特約として開発されたもので、一時金タイプです。「Flexi S」は標準体で30万円から5万円刻みで300万円まで、「Flexi Gold S」は引受基準緩和型で30万円から5万円刻みで100万円まで設定できます。

3商品の共通点・相違点は?

では、3商品はどこが同じで、どこが違うのでしょうか? 

認知症保険・特約とネーミングされているくらいですから、認知症を保障する商品であることが共通点です。と言っても、すべての認知症を保障するわけではありません。保障するのは、アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性などの器質性認知症です(メットライフ生命の所定の認知症も器質性認知症は含まれると思われる)。朝日生命のみ、さらに、日常生活自立度判定基準のランクⅢ以上と判定された場合を対象としています。ちなみに、器質性認知症は認知症全体の80~85%を占めるそうです。

相違点は下記のようなところです。

  • 太陽生命と朝日生命は単体の保険で、メットライフ生命は医療保険につける特約

(太陽生命と朝日生命に電話で問い合わせたところ、単体でも入れるとのことでしたが、他の保険と抱き合わせで販売されるような気がしました)

  • 保険料区分は太陽生命は緩和型、朝日生命は標準体、メットライフ生命は両方ある
  • 保険期間は太陽生命は10年と終身、朝日生命は定期と終身、メットライフ生命は終身
  • 給付金の支払われ方は、太陽生命とメットライフ生命は一時金、朝日生命は年金と一時金
  • 待期期間は、太陽生命と朝日生命はないが、メットライフ生命は180日
  • 給付条件は、メットライフ生命は診断確定、太陽生命と朝日生命は診断確定だけでは給付されない

これらのうち、注目すべき相違点は給付条件でしょう。メットライフ生命は所定の認知症に診断確定で給付されるのに対して、太陽生命と朝日生命は上表に記載したように診断+αが必要です。メットライフ生命の診断は、原則、長谷川式簡易知能評価スケール・MMSEなどによる「認知機能検査」と、MRI・CTなどの画像診断の2点で行うそうです。

太陽生命と朝日生命は待期期間はありませんが、給付条件は厳しめです。メットライフ生命は180日の待期期間を設けていますが、診断確定で給付されるのは評価できます。認知症は早期発見して治療を行えば進行を抑えられる種類もあり、その費用に使えますから。

なお、保障内容が違いすぎて、安いか高いかの判断のしようがないので、保険料の比較はやめました。ただ、1つだけ言えることは、引受基準緩和型は保険料が割高だということです。

認知症の保障が必要かどうか、必要だと考えるならどの保険・特約の保障内容がしっくりくるかで選ぶといいでしょう。もちろん、認知症を含む介護全般を保障する介護保険を利用する手もあります。

参考

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この記事を書いた人

1994年、ファイナンシャルプランナー資格取得。その後、独立系FPとして、長年にわたって携わってきた一般誌やムック、単行本などの編集・ライターの経験を活かし、マネー系記事の執筆・監修の他、セミナー講師として活動。最近は、終活や生前整理など、人生のしまい方にもフィールドを広げている。

複雑でわかりにくい保険や社会保障制度など、身の周りのお金に関する様々なコトを「わかりやすくひも解く」がモットー。

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