生命保険契約のトラブルは後を絶たない?!対処法はあるのか

新年度に入り、新たに保険契約を勧められる機会が増えそうな時期です。保険に限らず、契約ごとにはトラブルがつきものですが、生命保険契約についても同じで、毎年、一定件数のトラブルが発生しています。どんなトラブルが多いのかを調べ、どう対処すればいいか考えてみました。

目次

給付金不払、説明不十分、不適切募集行為がワースト3

生命保険契約のトラブルの実態について、生命保険協会・生命保険相談所の「相談所リポート(平成28年度版)」から探ってみました。同協会は、金融ADR法に基づく生命保険業務に関する「指定紛争機関」に指定されており、生命保険相談所に寄せられた生命保険業務に関する苦情解決手続き・紛争手続きを行っています。

平成28年度に受け付けた件数(一般相談と苦情の合計)は9,411件。うち、苦情をトラブルと位置づけると、4,744件でした。平成19年度からの苦情件数の推移は、下降傾向でしたが、平成28年度は前年度より20件増えています。と言っても、微増で下降傾向には変わりない印象です。重要事項の確認や「意向確認書面」で確認することを義務付けたり、生保業界をあげてトラブル防止策を講じているので、その効果が現れているようです。

さて、苦情の多い順にワースト3をあげてみると――。

  1. 入院等給付金不支払決定
  2. 説明不十分
  3. 不適切な募集行為

この順番は、平成27年度と同じです。

苦情の発生原因で最も多いのは「営業職員・代理店」で2,558件(全体の53.9%)、次いで、「制度・事務(取扱いに疎漏はないが、現行の事務・約款・会社の制度そのもの)」が1,921件(同40.5%)」。この2つで、約95%を占めています。

苦情ワースト1の「入院等給付金不支払決定」の原因は「制度・事務」で、告知義務違反による契約解除、約款規定の手術・入院・がんなどに当たらないという理由が多くなっています。ワースト2と3は、「営業職員・代理店」が原因で、無理契約・無断契約に関する申し出が多いそうです。

高齢契約者のトラブルも!

苦情対象となった契約うち、契約者が70歳以上の高齢者のケースは329件ありました。高齢契約者のトラブルは増えている実感がありますし、これからも増えていくでしょう。

高齢契約者の苦情の発生原因は、新契約では、代理店が88件、営業職員が54件でした。具体的な内容は下記のようなものです。

  • 高齢の母が預金の満期手続きの際、生命保険に契約したようだが、契約内容を理解していないので、契約を取り消してほしい。
  • 銀行員から定期預金より金利の良い商品があると勧められ、何度も窓口に呼び出され、内容が理解できないまま契約してしまった。契約を取り消してほしい。
  • 預金が満期を迎え、銀行から呼び出しがあり、店頭に行ったところ、よく分からない説明をされて、署名するよう言われ、署名したが、押印は銀行員が行った。最近がんと診断されたので、解約を申し出たところ、外貨建て保険であり、手数料がかかるといわれたが、聞いていない。

ありそうな話です。生保協会では、「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」を出しており、生保各社や代理店は、そのガイドラインに沿って対応方法を設けています。にもかかわらず、高齢契約者のトラブルは後を絶ちそうもありません。

トラブルを防ぐあの手この手とは?

では、トラブルには、どう対処すればいいのでしょうか? やはり、トラブルに発展させないことが重要です。

トラブル発生の2大原因の1つは「営業職員・代理店」の対面なので、加入する意思がないならキッパリと断りましょう。では、保険や定期預金が満期になったなどで保険を勧められたらどうすればいいでしょう。

生保会社や銀行などの金融機関は、一度、出させたお金は返す気はありません。必ず、違う商品を買わせようとします。この場合は、自分のニーズを伝えるとともに、保険の説明を理解できるまで聞くことです。と言っても、最近は、超複雑な、おそらく、説明している担当者自身が理解しているかギモンに思える商品がけっこうあります。

なので、説明を聞くときは、誰かに同席してもらう、堂々と録音してプレッシャーをかけるなどしてみてはいかがでしょう。そして、どんなにせっつかれても、「今日は時間がない」、「この手の契約は、即決しないことにしている」など、適当な口実を考えてその場で契約しないことです。保障設計書やパンフレットなどを持ち帰って再考を。手前味噌になりますが、この段階で、保険に詳しくて保険を販売していないFPに相談してほしいものです。

契約後に「何か違う」、「しまった」と思ったら、クーリング・オフ制度で契約を撤回しましょう。一般的に8日以内なら可能です。ただし、医師の診査を受けた後ではNGです。

クーリング・オフは、本社または支社宛てに書面を郵送すればいいので、担当者に言う必要はありません。ヘタに言うと、クーリング・オフの妨害をされるかもしれないので。

もう1つのトラブル発生原因は「入院等給付金不支払決定」で、これは、告知義務違反による契約解除が多いので、加入時に告知を正しくすることでトラブル防止ができます。営業職員・代理店から、告知義務違反を犯すようにそそのかされてものってはいけません。そして、どんなときにお金が出て、どんなときは出ないのかを加入時にきちんと確認しておくことも大切です。

離れて暮らす高齢の親には目が届かないので、トラベルを未然に防ぐのは難しそうです。とにかく、保険らしきものを勧められたら連絡をよこすように言い聞かせておきましょう。日ごろから、子どもの言うことを聞いてくれる親子関係を築いておくことが親の財産を守るポイントです。

どの手もダメだったら、生保協会の生命保険相談所に持ち込んでみてください。

参考

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この記事を書いた人

1994年、ファイナンシャルプランナー資格取得。その後、独立系FPとして、長年にわたって携わってきた一般誌やムック、単行本などの編集・ライターの経験を活かし、マネー系記事の執筆・監修の他、セミナー講師として活動。最近は、終活や生前整理など、人生のしまい方にもフィールドを広げている。

複雑でわかりにくい保険や社会保障制度など、身の周りのお金に関する様々なコトを「わかりやすくひも解く」がモットー。

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